未完の最長政権

第3部 功と罪 安倍外交の深層

2012年に返り咲いた安倍晋三首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げて、世界を飛び回った。7年8カ月の在任中の訪問国は80カ国を数え、長期安定政権を強みに外交課題に取り組んできた。その果実はなんだったのか。「安倍外交」の功罪に迫る。

第3部功と罪 安倍外交の深層

2012年に返り咲いた安倍晋三首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げて、世界を飛び回った。7年8カ月の在任中の訪問国は80カ国を数え、長期安定政権を強みに外交課題に取り組んできた。その果実はなんだったのか。「安倍外交」の功罪に迫る。(全回)

第2部友と敵 分断する政治手法

敵と味方を峻別(しゅん・べつ)する――それは安倍政権の特徴の一つだった。敵と見なせば、ためらいなく批判を加える一方、身内への甘さがたびたび指摘された。社会に生まれた溝は深まり、いまも修復されずにいる。(全回)

第1部政と官 強すぎる官邸

平成の政治改革がめざした「官邸主導」の完成形とも言える第2次安倍政権は、史上最長政権となった。しかし、強すぎる官邸は霞が関に暗い影を落とす。そして、その先にあるのが菅政権である。(全回)

なぜ高支持率が続いたのか

第2次安倍政権の流れ

(敬称略)
2012年
9月

総裁選

安倍復帰

自民1強ゆりかご期

12月

衆院選

大勝
政権奪還

石破
  • 参院は与党少数で、ねじれ国会

2013年
7月

参院選

自民圧勝

自民1強完成期―安倍1強ゆりかご期

  • 衆参のねじれ解消

  • 集団的自衛権の解釈変更(14年7月)

  • 自民に従うしかない公明党の限界

2014年
9月
谷垣
  • 石破人気への警戒感から、石破が幹事長続投を訴えるも谷垣へ交代

12月

衆院選

大勝

  • 勝てるリーダーとして安倍の力が強まる

2015年
9月

総裁選

無投票2選

安倍1強完成期=絶対的1強

2016年
7月

参院選

自民圧勝

  • 平成最後の参院選で単独過半数を回復

  • 自民の単独過半数で公明の影響力低下

  • 改憲勢力3分の2を確保

8月
二階
2017年
3月

総裁選3選可能に=1強の継続可に

10月

衆院選

大勝

  • モリカケ問題で支持率低落も衆院選大勝、安倍政権不死身神話

2018年
9月

総裁選

石破破り3選

安倍1強溶解=相対的1強

  • 総裁選で派閥に頼ったことで、派閥に配慮した人事をせざるを得なくなる

  • 1強体制への批判が表出し、求心力が落ちる

2019年
7月

参院選

自民単独
過半数を失う

  • 改憲勢力3分の2に届かず、目標に掲げた20年改憲が難しくなる 

2020年
1月

コロナ禍

安倍1強崩壊

  • 通常国会で桜を見る会、黒川検事長の定年延長が批判される中、コロナが広がる

  • 自民党、公明党が、一斉休校などで政権方針を批判、現金給付は変更余儀なく

  • 検察庁法改正案に批判が噴出し、成立断念

8月

首相、辞任を表明

安倍政権が残した三つの課題

7年8カ月続いた第2次安倍政権。「1強」と呼ばれた政権が残した課題とは。

画像

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動画

【動画】安倍政権から菅政権へと継承された権力の源泉が、人事権を活用した官僚の統治。「適材適所」という言葉は、こうした人事のレトリックとして使われてきた。最長政権の場面を振り返った。

【動画】安倍政権から菅政権へと継承された権力の源泉が、人事権をフル活用した官僚の統治でした。「適材適所」という言葉は、こうした人事のレトリックとして使われてきました。森友問題をめぐる佐川宣寿・財務省理財局長(当時)、集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更を行った横畠裕介・内閣法制局長官(当時)、そして黒川弘務・東京高検検事長(当時)の異例の定年延長を図った閣議決定――。7年8カ月にわたる「最長政権」の内幕をひもときます。

動画

【動画】安倍政権は、敵か味方かを峻別した。社会に生まれた溝は深まり、いまも修復されずにいる。

最長政権の土台 二つのライバル不在による高支持率

 第2次安倍政権が史上最長になった土台は「二つのライバル不在」だった。

 一つは自民党政権を脅かす強い野党の不在だ。2009年に民主党政権を生んだのは、第1次安倍政権以来、首相が1年ごとに代わった自民党政権の迷走を受けた「政権交代」への期待の風だった。しかし、同じように首相がコロコロ変わり、「決められない政治」と批判を受ける。支持率は低迷し、消費増税をめぐって党は分裂し、3年3カ月で政権を失った。

 政権を奪還した安倍首相は「決められない政治」を反面教師に、経済政策「アベノミクス」など新政策を次々と打ち出した。民主党政権の失敗による有権者の失望は根強く残り、野党は支持率低迷を続けた。

 もう一つは党内のライバルの不在だ。「麻生降ろし」などの党内抗争で政権を失った反省から、政権復帰後、党内の首相批判はなく、「安倍1強」状態を作った。石破茂元幹事長が批判の声を上げるようになったが、共感が広がる土壌は党内から消え失せていた。

 弱い野党を相手に国政選挙で、安倍自民党は6連勝した。特定秘密保護法や安全保障法制など有権者に不人気の政策は選挙がない時期に推し進める一方、選挙前には、アベノミクスなどの経済政策を前面に出し、党は大勝した。

 森友、加計学園問題など安倍首相を直撃する疑惑が発生すれば内閣支持率は一時的に下がったが、しばらくすれば元に戻った。ただ、内閣を支持する理由は、政権後半になると「他よりよさそう」という消極的支持が多くを占めた。

内閣支持率の推移

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