2010年10月7日8時8分
5年前に自分で撮影した劉暁波氏の写真を手に思いを語る劉霞さん=北京、峯村写す
【北京=峯村健司】8日に発表されるノーベル平和賞の有力候補に挙げられている中国の民主派作家、劉暁波氏(54)=国家政権転覆扇動罪で服役中=の妻、劉霞さん(49)が6日、北京市内でインタビューに応じた。受賞の可能性は高くないとの見通しを示したうえで「一番の願いは、賞よりも一日も早く家に帰ってきてくれることだ」と早期の釈放を訴えた。
劉霞さんは「国際社会が夫に高い関心を持ってくれていることに感動しており、深く感謝したい」と述べた。ただ、「当局に拘束中の人間が受賞したのは、ミャンマー(ビルマ)の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんらだけ。受賞は難しいと思う」と語った。
人権活動家の劉暁波氏は、インターネット上で中国共産党の一党独裁の廃止と民主化を呼びかけた「08憲章」を起草したとして、今年2月に懲役11年と政治的権利剥奪(はくだつ)2年の実刑判決が確定。現在は遼寧省錦州市の刑務所に収監されている。
面会が許されるのは月に1度、1時間のみ。2人の当局者が傍らで監視し、すべてビデオで撮影する。内外の政治や社会問題に関する話は一切、許されない。最後に面会したのは9月7日。少しやせていたが、最近は毎日1時間、屋外でジョギングできるようになり、日焼けして元気そうだった。「拘束後もずっと気持ちも体もいい状態を保っており、とても意思と気力が強い人」と話した。
劉霞さん自身にも監視の目が光る。当局者が自宅前で24時間体制で監視し、電話やメールはすべて盗聴されているという。少しでも敏感な内容を電話で話すと、北京市当局者から事情聴取される。この日の取材も、自宅から少し離れた喫茶店で話を聞いた。
劉暁波氏の受賞を有力視する声が高まるにつれ、中国当局は反発を強めている。姜瑜・外務省副報道局長は9月末の会見で、「中国の法律を犯し、刑罰を科された人物」と不快感を表明。中国外務省高官が、選考委員会関係者に圧力をかけた可能性も指摘されている。
こうした中国当局の対応を劉霞さんは語気を強めて批判した。「自らの利権を失いたくないからこそ、夫のたった1本のペンを怖がっているのだろう」