偶然の連鎖から生まれた唯一のゴールが、日本の船出を救った。
4分と表示された後半のロスタイムは、3分近くが過ぎていた。右からクロスを送った小笠原は「青い色が見えたので、だいたいの感覚で中に入れた」。不正確な球は相手DFに渡ったが、頭でのクリアは中村の正面へ。「すねに当たった。久保の所へ行ったのはたまたま」と中村。久保のシュートはGKのタイミングを外したように見えたが、シューズが芝にひっかかったせいだった。
それまでの93分間、日本はオマーンの抵抗にたじたじだった。
序盤こそ相手陣内で球を奪いにいく積極的な守備が功を奏した。中村は失敗したが、高原の単独突破からPKを得た。左右のDFだけでなく、ボランチの二人も敵陣深く侵入した。だがその出足は前半の途中まで。鋭い逆襲を浴びて慎重になったこともある。その後は、自陣を固める相手におあつらえ向きの、単純な縦パスばかりが目立った。体を張るFWを助ける動きも少なかった。
「今に始まったことじゃないけど」。くちびるをかんだ後、中村は言った。「足元へつなぐパスばかりで、連動する動きがない。ボランチからFWへ縦パスを入れる間に、サイドが上がるような連係が欲しい」
洗練された組織力で世界と渡り合った02年W杯から1年半。ジーコ監督は、選手個々の能力に頼って、連係の細部に磨きをかける作業をないがしろにしてきた。失ったものは大きい。そこに目を向けない限り、苦戦は繰り返される。(忠鉢信一)
(04/02/18)
|