残り20分くらいから、スタンドの圧迫は弱まってきた。「また裏切られた」という観衆の怒りが、中国代表に向けられ始めたのだろう。日本への敵意だけを受けていた重慶などの試合より、むしろ楽な雰囲気の中の逃げ切り劇だった。
両サイドMFの能力が高い中国。軽い守備をすると、やはりえぐられる。前半、右サイドで加地が1対1を抜かれ、失点。ただ、それ以外は左右に展開されても、中央で相手をDFと両ボランチが確実に捕まえた。終盤、中国の攻めの核となる邵佳一のドリブルから危ない場面があったが、大ざっぱなラストパスに助けられた。
それに比べ、日本の攻めは精度が高い。今回のメンバーは確かに破壊力は欠ける。だが、数多くはない好機を着実に生かした。中村からのセットプレーで2得点。ロスタイムには、中村から玉田へ、球のスピードといいコースといい申し分ないスルーパス。玉田がとどめを刺した。
試合運びも一日の長を見せた。特に、逃げ切りの時間帯。自陣に引きながらも、玉田、三都主らが機を見て裏に走り込み、むしろ疲弊し切った相手に圧力をかけることで戦い抜いた。
「W杯を経験しているから、冷静に試合に臨めた」と中田浩。そのW杯組とともに、ジーコ監督就任後に代表入りした選手らが苦しい大会を勝ち抜く貴重な経験を積み、日本の力はさらに底上げされた。
(04/08/08)
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