北京で行われたサッカー・アジアカップ決勝戦の日本対中国で一部の中国人サポーターが暴れた事件は、サッカーが国技とされる韓国でも大きく報道された。ただ、関心はむしろ後日談に集まっており、中国に抗議した日本側に北京市公安局が謝罪したことについて「日本の外交攻勢は効果があった」(朝鮮日報)と、日本の外交力を評価する見方が目立っている。
韓国では今、紀元前後の高句麗を中国が自国史に組み入れ、朝鮮半島の歴史から抹殺しようとしているとして、中国政府に抗議する騒ぎに発展している。徐々に増す中国への反感と、2年前のワールドカップ共催以来の日本への親近感が手伝って、日本を見習って盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権も中国に対して強い態度に出るべきだ、という思いも垣間見える。
東亜日報は決勝戦を振り返った記者のコラムで「ソウルの団地や食堂では、日本が点を入れるたびに歓声が上がり、知らぬ間に日本を応援している自分に驚いた人も少なくなかった」と対日感情の変化を指摘する一方、「中国はこんな調子で五輪を開けるのだろうか」と騒ぎを抑えられなかった中国を批判した。
中央日報は、騒ぎを伝えた記事の中で、日本人サポーターが当局に用意されたバスで競技場を脱出したことに触れ、「中国の相手がもし韓国だったら、どうなっていただろうか」と、騒動に備えた日本政府を暗に評価しつつ、韓国政府に自覚を促した。
韓国では最近、「冬のソナタ」の主演男優ペ・ヨンジュンが日本で人気を博するなど、「韓流」のニュースが韓国内に逆流し、対日感情は落ち着いている。他方で中国に対しては、中国公安当局が北朝鮮からの脱出住民を送還したり、不法滞在住民が目立ったりとイメージが良くない。日本の外交力評価の背景には、こうした中国への反感に加え、世論に影響力を持つ野党ハンナラ党や保守系大手紙が、盧政権の外交の力量を問題視していることもある。
とはいえ、韓国にとって、日本の植民地支配から解放された日である光復節(終戦記念日)の8月15日を控え、複雑な対日感情も残る。聯合ニュースは10日、小泉首相が来年も靖国神社に参拝すると発言したことを批判的に速報しつつ「サッカーでの中国の露骨な反日感情にもかかわらず」と強調。日中間の摩擦が韓国にどう跳ね返ってくるかを見定めようとしているかのようだった。
(04/08/11)
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