文化くらし報道部、国際報道部を経て、

現在はオピニオン編集部で著名人や専門家への
インタビュー取材を担当し、

政治経済から国際情勢、文化など、
幅広い分野の記事を書いている高久潤記者。

いろいろな立場の人たちの多様な意見を
紹介するオピニオン面を通して、

「さまざまな視点」があることに
気づいてもらいたいといいます。

「正解」を伝えるのではなく、
議論を深める場としてのオピニオン面

今日は、午前中にジェンダーに関する記事を書き、午後はデジタル課税についてのインタビューの準備、週明けにはクラウドファンディングや仮面ライダーについての取材もあります。

やっていることがバラバラだと言われることもありますが、自分なりに軸としているテーマは「グローバル化と消費社会」。今あげた記事や取材もすべてこれに関わっています。オピニオン面は、正解や解説を載せるところではないんです。さまざまな人の話、インタビューを通して、「今」を掘り下げ、議論を深めようという場だと思っています。

記事作りのために、私は日頃からとにかく街を歩き回っています。書店や図書館に行ったり、展覧会に足を運んでみたり。何かが起きる時、社会には予感のようなものがある。街を歩いていると、そうした予感や予兆をキャッチしやすくなるんですよね。記者は「一番早く現場に行け」とよく言われるのですが、私は、「一番遅くまで現場にいる」ということも心がけています。みんなの関心が他に移り、その場所から去ってしまったあともそこに居続けることで、物事をストーリーとしてより理解できるのです。

実際に人に話を聞くことでしかわからないこともたくさんあります。たとえば、田中みな実さんの写真集が非常に売れて、女性に絶大な支持を得ていることが話題になった時は、書店に行って実際に写真集を購入した方に声をかけて話を聞きました。私の目線だけではわからない彼女の魅力を知ることで、他人の視点、他人の脳を借りてインタビューに挑めるので、多様な視点で話ができ、自分に見えることや想像できることを超えた記事が書けるようになると考えています。

真の多様性のために、表に出しにくい
「違和感」にも触れる。

また、オピニオン面では、「批判」もとても大事なことです。インタビューをする時に、「私はあなたの意見に反対です」とはっきり伝えることもあります。こちらの意見や主張をはっきりと示すことでその人の本音を引き出しやすくなるんですよね。聞きたいのは、本気の言葉。そっちのほうが取材も盛り上がりますからね。

自分と意見が違う人がいれば批判するのはむしろ健全なこと。批判し、意見をぶつけ合うことで視野が広がることはたくさんあります。ただし、批判と罵倒は違う。強い言葉は話題性も高い一方で、誰かを傷つけてしまうリスクを孕(はら)んでいます。自分が記事を書く時はもちろん、他人の記事を編集する時も、健全な批判精神と罵倒の境界線には気をつけるようにしています。

さまざまな意見があったり、相手とは違ったりすることが尊重される社会になるべきだし、「多様性」は重要です。ただ、「多様性っていいよね」というムードの中で、どこか「そんなに簡単なものなのか?」と違和感を持つ人もいると思うんです。オピニオン面では、そんな「感じているけど表には出しにくい」ことについてもちゃんと触れていきたい。

私自身、たとえばミソジニー(女性嫌悪)についての取材をした時に、「自分がミソジニーだなんてありえない」と思っていたのですが、いざインタビューで話を聞いて、「そう言われると自分にも心当たりがあるかもしれない……」と気づいたことがありました。レイシズム(人種差別)やメリトクラシー(能力・成果主義)の問題もそうです。取材をするたびに自分がいかに多面的にものごとを見られていないのかを思い知ります。

ただ、私はそこで単純に反省するだけじゃなく、「じゃあどうすれば、この内面化した差別をなくすことができるのか、その方法を教えてください」とさらに質問をぶつけます。きっと本当にみんなが知りたいと思っているのはそこだと思うんです。もちろん差別はダメに決まっているけど、人間は、自分とは「違う」ということに対してネガティブな思いを抱いてしまうことがある。そういう時にどうしたらいいのか、その助けになるような記事を書いていきたいと思うんです。「多様性っていいよね」で終わる記事って、じつはまったく多様性がない。今は、みんながなんとなく「多様性っていいよね」という空気になっているけれど、「そんなに簡単にはいかないぞ」という違和感を伝えることも、オピニオン面の役割であり、本当の意味で多様性を考えるということだと思っています。

日々の雑談が多様性につながっている

オピニオン面の記事が、読んだ人にとって「視野が広がったな」「こんな視点もあるんだ」という発見につながったらいいなと思っています。そして、日頃もやもやしているものを、ちょっとスッキリさせてもらえたら嬉しいです。だから、気になった記事については、ぜひ雑談のテーマにしてほしい。人と話すことでちょっと楽になれたり、自分の考えがまとまったりすることもありますよね。私も、人と話をすればするほど、自分はこんなことも知らなかったんだなぁと痛感します。

他の人の意見という意味では、朝日新聞デジタルには、記事に対する多彩なコメンテーターの意見が読めるコメントプラスというサービスもあります。移動時間には、朝日新聞ポッドキャストを聴くのもおすすめです。記事を読んでそこまでピンとこなかった出来事でも、取材した記者の話を実際に聞くと「なるほど」と思うことがあって面白いですよ。

どんな人であっても、誰かを全く傷つけずに生きていくことはできません。個人が自由に生きていくことと、人を傷つけることというのは表裏一体なので、そのバランスをとるために、私たちは多様な視点を知る必要がある。そういう想いを届けたくてオピニオン面を作っているつもりです。とくに朝日新聞デジタルでは、せっかく有料会員になっていただいている読者のためにも、他では読めない情報や人の話を届けることを大事にしたいと思っています。

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