たくさんのスタッフが関わっている
朝日新聞デジタル。

1997年に入社し、出版本部(現・朝日新聞出版)の

『AERA』編集部や
文化事業本部(現・企画事業本部)などを経て、

2016年からコンテンツ編成本部に
在籍している大波綾さん。

主に、各部から送られてくる記事に
見出しをつけて
配信ボタンを押す
最後の仕上げを担っています。

見出しの制限文字数は32文字。

記者と読者をつなぐ役割を担う思いや、

デジタルならではの視点について聞きました。

365日、24時間のシフト制でニュースを配信

新聞に掲載する記事のなかから、朝日新聞デジタルに掲載するものを選び、配信する業務を担っています。その他、新聞に掲載されない速報ニュースも時間を問わず各部からどんどん届くので、同様に配信しています。さらに、LINE公式アカウントで日々配信している記事の編成や、各SNSでの投稿など、記事を拡散するための施策も行います。朝日新聞デジタルは紙面のように休刊日がないので、年末年始を含めて365日、シフト制による24時間業務です。

紙面は見出しの位置や文字の大きさを変えることができますが、デジタルの場合、見出しはどの記事も最大32文字という制約があります。「ここがニュースだ」「ここを読んでほしい」というところをうまく抽出して、32文字以内におさめていくのは、俳句をひねるように難しいところがありますね(笑)。ただ、デジタルは速さ勝負でもあるので、記事1本あたり5分くらいで配信まで持っていきます。

そうした日々の業務とは別に、比較的長い期間をかけてじっくり取り組む連載、特集企画もあります。日々裁判所に通っている司法担当記者が、裁判のリアルな様子を伝える「きょうも傍聴席にいます。」は2013年にスタートした人気連載ですが、身につまされる内容も多く、毎回大きな反響があります。朝日新聞デジタルのなかでもイチオシの短期集中連載は「A-stories」というシリーズ名で掲載しています。深刻な社会問題やセンシティブなテーマを扱うことが多いので、原稿を読み込み、原稿を執筆した部門とやりとりしながら進め、見出しもかなり練って、記者や担当デスクと納得のいく形にしてから配信しています。

AIにはできない、
「読みたい」という気持ちを揺さぶる記事選び

記事の配信タイミングにもこだわっています。朝日新聞デジタルの読まれ方には、朝7時ごろの通勤時間帯、お昼、午後5〜6時の帰宅時間帯、就寝前の午後9時ごろと、1日4回ほど山があります。在宅ワークが進んで通勤時間帯に多少の変化は出てきていますが、依然最も大きな山はお昼。そこにその日いちばん読んでいただきたいニュースを配信しているのですが、内容によって時間をずらして配信することもあります。先ほどの「A-stories」は落ち着いた時間に読んでいただきたいので、夜に配信することが多いですね。

また、記事の下に入れる、6本ほどの関連記事の選定も手作業で行っています。一応、AIも導入していて自動で候補が選ばれるようにはなっていますが、たとえば、テニスの大坂なおみ選手のニュースがあったら、関連記事では、彼女の試合結果やテニスの話題だけでなく、国際問題やジェンダー問題など多様な視点から物語性のある記事を拾ってこそ、一人でも多くの方に関心を持っていただくことができると思うんです。そういう意味では、やはりAIの提案では、読者の「読みたい」という気持ちを揺さぶるところまでは達していません。そこは、日々さまざまなニュースを配信してきた私たちの経験が生きてくる部分だと感じています。

紙面は購読者がある程度決まっていますが、朝日新聞デジタルの記事は他のポータルサイトなどにも配信されているので、会員だけでなくその時々でさまざまな方の目に触れることになります。ただ、ポータルサイトには、他社メディアもいろいろな記事を配信しているため、ネットユーザーにとっては、朝日新聞デジタルの記事はそのうちの一つにすぎません。

そうしたなかで「見出しがすべて」とまでは言いませんが、見出しのつけ方によって、その分野に関心がなかった方にも「読んでみようかな」と思っていただけるかもしれない。だから、見出しで記事の良さを打ち消さないようにしたいですし、逆にあおっていると捉えられるのは避けなければならない。このバランスが難しいところです。記事のなかで伝えたいことを最優先に前に出して、記事のいちばんエモーショナルなところを拾い上げ、32文字で表現します。

読者と書き手をつなぐ役割から、
さまざまな視点があると提案したい

ニュースの多くは同じ事象について伝えるものだから、誰が書いても大して変わらないのではないかと思われるかもしれません。でも、取材の仕方は記者によって個性がありますし、目をつけているところも違うので、そこを見つけて届けていきたいと思っています。記者自身、自分の個性や独自の視点に気づかずに書いていることも少なくありません。

そういった観点から、記者が自分で考えた仮の見出しに対して、「こちらにフォーカスしたほうがいいのでは?」と、違う見出しを提案することもあります。「自分の役割はここまで」と区切ってそれ以上踏み込まないようにするのではなく、コミュニケーションを取りながら、記事のよりよい面を引き出していくのです。読者の感想を直接伺う機会はないですが、アクセス数などのデータやSNSでの反応をこまめにチェックしていると、私自身気づかなかった点を読者のみなさんからご指摘いただくこともあります。反響があると、記者に「続編書いてね」なんて言ったりすることもあるんですよ。

原稿を読むときは、読者が必ずしもそのニュースに関心があったり予備知識があったりするわけではないという一歩引いた目線を持ち、「最初の読者」という気持ちで臨んでいます。記者は取材していくうちにどうしても専門的になってしまい、難しい用語もサラリと書いてしまうところがあるので、そういう場合は「これはわかりにくい」と素直に言いますし、記者が思い入れを持って書くのはいいことですが、独りよがりに捉えられそうなときは「この文章はスッと入ってこないと思う」など、なるべく客観性を持って感想を伝えています。

これまで週刊誌の編集者として他の人が書いた原稿を読む仕事に携わってきましたし、新聞記者として自分が取材して書く仕事もしていたので、双方の経験が役立っていますね。取材して書くには多大なエネルギーが必要です。だから私は記者を尊敬していますし、その思いを尊重したいと考えながら業務にあたっています。

私たちの業務は、読者と書き手の間に立ってつなぐようなもの。朝日新聞デジタルならではの視点はどこだろうと常に考えています。読者の関心は一つの事象にあるかもしれないけれど、見出しのつけ方や写真の見せ方、関連する項目へのリンクのつけ方などによって、記事のなかの他の事象にも光を当て、さまざまな視点があるということを提案したい。そんな思いで配信ボタンを押しています。

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