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徹底討論「ジャーナリズムの復興をめざして」
立花隆氏の基調講演(2)

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立花隆氏

●報道機関の果たすべき機能

 基本的に、報道機関というのは何をやっているのか。きょうは、新聞という報道機関の話をするわけですが、基本的に何をすることを務めとしている組織であるかといえば、まずは、(1)「この世で起きている重要事実を漏れなく伝える」という、それが基本的に報道機関の任務であるわけです。

 それと同時に、第2には、とにかくめったやたらに起きているすべてをただ伝えるということではなく、その起きていること、それを一般にニュースと言っていいわけですが、(2)「ニュースの意味付けを与えて、その価値付けを与える」、これが報道機関が果たすべき、果たしている最も重要な役割です。

 新聞というのはそもそも何なのかということですが、これはワシントン・ポストのベンジャミン・ブラッドリーというアメリカで最も有名な新聞人を取材した時に、彼がこういうことを言ったということで、僕が昔書いた本です(「アメリカジャーナリズム報告」1984年 文春文庫、原題は単行本「ジャーナリズムを考える旅」78年 文藝春秋)。かなり前に書いた本で、カバーが変わってますが今でも売られている本です。これは自分で言うのもあれですが、非常にいい本です(笑)。

 ジャーナリズムというのはどういうもので、日本のジャーナリズムの特徴がどこにあって、どこがおかしいのかということを詳しく書いています。アメリカに行って、ブラッドリーはじめ、そのほかあの時代の有名なジャーナリストを次々に訪問してインタビューをした、そういう記録が全部出ています。

 その中でブラッドリーが言ったのはまさにこのことなんですね。「新聞というのは、毎日、歴史のドラフト(第一稿)を書いている」んだと。毎日、何が、現に起きてきて、その中で何が大事なことであるか、それが新聞の紙面をつくるということなんですね。その新聞の紙面というのが、本当にリアルな歴史を書く時の一つの原資料に必ずなるわけです。それこそまさに歴史の原資料そのものを、新聞というのは毎日つくっている。その作業が報道という仕事なわけです。

 だから、その中に盛られていることは、まさに前述の(1)と(2)なんで、そこが報道機関というものが果たしている役割そのものなのです。

●報道パワーの源泉

 報道がやっている機能をもうちょっと細かく分けて考えてみるとどういうことになるか。民主主義社会を基本的に構成する「第4の権力」として、報道というものがあるわけですね。それはものすごく大きなパワーを持つわけですね、いろんな意味で。その力の源泉をなしているのは何か、つまり、報道機関というのは何をやるがゆえにその力が出てくるのか、そこを幾つかに分けてみると、この五つに分かれると思います。

 1番目が、日本語では取材力といいますが、(1)「ニュースギャザリング力」なんです。ニュースを集める力です。大きな報道機関というのは、これを組織的にやるわけです。その組織としてのニュースを集める能力です。

 2番目は、その集めたものを、(2)「編集する力」なんですね。ニュースを集めて、その中から取捨選択して重み付けを与えて、それをそれぞれ伝えるメディアに載せる。メディアというのは、新聞の場合にはその紙の新聞ですね。それに載せる時に、その取り扱い方を決める。一つの紙面の配分を決めるという、それがまさに編集という作業なんですが、その編集の力です。

 具体的にどういう形で発揮されるかというと、(3)「すぐれた一覧性紙面の制作能力(整理力)」というものを通じて、社会にその制作物を出していくわけです。

 最近、いろんなメディアが次々に現れまして、その中で、新聞というメディアの力はしばしば埋没しつつありまして、それが今の報道の力の危機の一番の背景にあるわけですが、新聞が、結局そういう過程を通じて埋没しそうになりながらも、依然として大きなすぐれた力を持つのは、まさにここにあるわけです。

すぐれた一覧性紙面の制作能力。つまり、新聞をぱっと広げた時に、その中に主要なニュースがちゃんと重み付けを伴ってそこに出ている。その紙面を見ることによって、非常に大きな情報が一瞬にして伝わる。それだけの一覧性紙面の情報伝達力というのは、今いろんな意味ですぐれた情報伝達メディアが世の中にたくさん生まれていますが、それは、今のところ新聞だけが持っている能力です。おそらく、近い将来、電子ペーパーができて、今、電子ペーパーというのが非常にすぐれたものになっていまして、これを併せ持つようになる。そのためには、やはりこの新聞の大きさというものが必要なんですね。

 それだけの大きさを持った電子ペーパーというのは今のところは困難です。今の新聞が与えてくれるあの大きさというのは、非常に意味があるわけです。それと同じものが電子的にできたら、これは非常にすごいことになるし、実は新聞自身がそれをやっちゃうかもしれないわけですね。

 将来的に何が起こるかというのはまだわかりませんが、ただ、その中身として、そのコンテンツとして、すぐれた一覧性紙面になっているということが必要なわけです。

 それは、(2)の編集力と、(3)でいう整理力、こういうことを新聞では整理部というところがやっているんですが、整理部というと普通の人はよくわからないんですが、これは新聞の機能の中で一番大きな役割を果たしている部門です。すぐれた一覧性紙面をつくって、それを日々その社会を構成する人たちに毎日送り届けているという、そこにパワーの源泉があるわけです。

 その中身の問題として、さらに、日々のニュース、プラス、(4)「解説力」というのが、メディアにとって、新聞にとって、特に重要なわけですね。

 かつてはニュースの一報能力が役割として大きく考えられていた時期もありますが、ニュースの一報能力というのはもう既に新聞のものではなくなっているわけです。今、だれでも、新しいニュースをぱっと知ろうと思ったら、テレビのスイッチを入れるか、携帯でどっかのニュースサイトにつなぐわけですね。だから、もう第一報という役割は新聞から離れているんですが、新聞が他の追随を許さないのは、この(3)と(4)なんですね。解説することなんです。

 何かが起きた時に、その背景にあるものをすぐに深く広く解説できる、そういう能力で、それをやるだけの人材と、そういう紙面をすぐにつくり出せる、そういうシステム、その両方を持っているのが、今、基本的には新聞社だけなんです。

 あともう一つは、(5)「論説力(オピニオン形成力)」。これは英語ではエディトリアルという、いわゆる論説あるいは社説のページに書かれることなんですが、それが基本的にやろうとしているのは、社会のオピニオンを形成する、そういうパワーです。

 新聞社の中では、この論説というのは、ほかのページと全く別の組織がやっています。別の組織というのも変ですが、社内に論説委員というチームがいて、そこに社説はじめ論説をつくる人たちがいるわけです。

 例えば、これは今朝の紙面で、このオピニオンというページに「風考計」というコラムがありますが、これは論説。社説以外にこういうところも持っているわけですね。

 そういうものを通じて、大体このページはおそらく全部論説の人たちがつくっているものだと思うわけですが、それを通じて、オピニオン形成のための言論活動を担う部門が働いているわけですね。

 その他の紙面を全部やっているのが、きょうこの後出ていらっしゃる外岡さんというゼネラルエディター。それで、(5)の論説だけは別の人たちがやっていると、そういう独立の関係になっているわけです。この全体が新聞のパワーの源泉です。


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