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男子の比率が高い傾向にある大学の理工系学部ですが、近年は入試に女子枠を導入する動きが広がるなど、新しい動きが見られます。理工系学部の女子の状況は、この先どのように変化していくのでしょうか。(写真=Getty Images)

東工大では1学年の募集人員の14%が「女子枠」

理系の女子を増やしたいということから、各大学で入試に女子枠を設けるなどの動きが広がっています。

私立大学では、芝浦工業大学が2018年度入試から、女子が少ない工学部機械電気系4学科で公募制推薦に女子枠を設けました。22年度入試からは工学部の全学科に拡大し、さらに23年度入試ではシステム理工学部、デザイン工学部、建築学部の全学部へ拡充しました。

国立大学では、東京医科歯科大学と統合する東京工業大学が、24年度入試から総合型選抜と学校推薦型選抜で物質理工学院など4学院を対象として58人の女子枠を初めて設けます。25年度入試では工学院など残りの2学院で85人の女子枠を導入し、合計で143人になります。これは1学年の募集人員の14%に相当する規模になります。

また23年度入試では、名古屋大学が工学部の2学科の学校推薦型選抜に計9人の女子枠を設け、富山大学が工学部の学校推薦型選抜に8人の「女子特別推薦」枠を設けました。島根大学は、材料エネルギー学部の学校推薦型選抜Ⅱで、6人の女子枠を設けました。

理工系女子の比率はOECD加盟国で最低

文部科学省の学校基本調査によると、理工系学部の女子学生はこの10年で増加しています。女子比率を見ると、12年度は理学部が約26%、工学部が約12%でしたが、22年度は理学部が約28%、工学部が約16%となっています。

しかし、女子が増えているといっても、理工系学部全体で見るとまだまだ少なく、日本の大学の理工系女子の比率はOECD(経済協力開発機構)加盟国で最低水準というデータもあります

 

OECD加盟国の高等教育機関の入学者に占める女性割合

(出典)OECD Education at a Glance 2021 TableB4.3. Distribution of new entrants into tertiary education by field of study (2019)より内閣府において作成

 多様性の確保は研究にもプラス

理工系学部の女子枠の増加について、進路指導アドバイザーとして高校生の進路指導に関わり、追手門学院大学で客員教授を務める倉部史記さんは、次のように指摘します。

「確かに理工系学部の女子の志願者数が増えているという調査もありますが、女子の進学者が増えたため、結果的に理工系学部を含めた女子比率が高くなっている一面もあります。それでも、理工系学部の女子比率は他学部と比べるとまだまだ低い。18歳人口が減少するなか、大学側から見ると、受験生の残された伸びしろは理工系学部の女子となっているのが現状なのでしょう。『女子枠の増加』は大学の経営的施策の一つだと言ってもいいかもしれません。

加えて国際的に見て低い理工系の女子比率を高めなければという格差是正も、大学側は意識しているはずです。多様性の確保は、教育や研究にとってプラスになるという認識は強いようです

倉部さんは理工系女子は今後、増加すると予測しています。中学や高校での探究学習や、地球温暖化など地球規模での課題解決を目指す「SDGs(持続可能な開発目標)」、あるいは科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術・リベラルアーツ(Arts)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした「STEAM教育」に触れることによって、「理工系は男子の学び」といったジェンダーステレオタイプの影響が薄まっていくと見ています。

「女子枠の設置に加えて、国立の2つの女子大学が工学部を新設することも、女子の理工系増加を後押しするのではないでしょうか。奈良女子大学は22年度に日本の女子大で史上初となる工学部を新設し、お茶の水女子大学は24年度に共創工学部(仮称)を開設する予定です。こうした動きは、受験生を取り巻く大人たちの意識も変えるでしょう」(倉部さん)

理工系学部は就職に強く、特に女子は企業から求められていることも、女子の理工系の志願者増加を後押しする要素になります。今後、理工系学部へ進学する女子が増えていくことが期待されています。

(文=菅野浩二)

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