変わる大学入学共通テスト 問題数が増え、試験時間が延長…2025年度からの変更点

2023/05/24

■大学受験の基礎知識

国公立大学はもちろん、多くの私立大学の入試でも利用されている大学入学共通テスト。出題教科「情報」の追加など、その内容が2025年1月実施分から大きく変わります。主な変更点をまとめました。また、大学入試センターで審議役を務める森下平さんに対策を聞きしました。(写真=Getty Images)

思考力・判断力・表現力などを育むため

文部科学省では高校で学習する内容(学習指導要領)を、時代の変化に応じておおむね10年ごとに見直し、新しいカリキュラムを組んでいます。直近に改訂された新学習指導要領に則した授業が行われているのは、22年4月に高校に入学した生徒から。大学受験をする25年に、共通テストも新学習指導要領に対応した内容に変更されます。

大学入試センターで審議役を務める森下平さんは、こう話します。

「新学習指導要領では、知識や技能の習得だけではなく、それを実社会で応用するための思考力・判断力・表現力などをバランスよく育むことを目指しています。共通テストの問題作成に当たっては、こうした能力を評価するため、学習の過程を重視し、問題の構成や場面設定を工夫するとともに、多様な受験生が十分に力を発揮できるように出題の構成や内容、分量、表現などに配慮したいと考えています」

「情報」を追加、「地理歴史、公民」で大きな変更

25年の共通テストの出題教科は、現行の「国語」「地理歴史、公民」「数学」「理科」「外国語」に、新教科の「情報」を加えた6教科となります。各教科で次のような変更が行われます。

 

  • 国語

・試験時間が現行80分から90分に延長

・近代以降の文章の問題は、資料から読み取ったことをもとにレポートを書くなど、「言語活動」の過程をより重視し、多様な資質・能力を問う大問が1問追加され、全3問に。配点は3問で110点。

・古典は古文と漢文1問ずつ、配点は各45点に(現行は各50点)。

『国語』試作問題の構成

 

※試作問題の構成であり、毎年度、同じ形で出題されるとは限らない。

(表=大学入試センター提供)

 

  • 地理歴史、公民

学習指導要領の変更に伴って、共通テストの出題科目も『地理総合、地理探究』『歴史総合、日本史探究』『歴史総合、世界史探究』『公共、倫理』『公共、政治・経済』『地理総合、歴史総合、公共』の6科目に再編され、最大2科目を受験することができる。ただし2科目を受験する場合は組み合わせ不可の科目があるので、注意が必要。また、受験する科目の数(1科目か2科目か)は、出願時に申請する。

(参考) 地理歴史、公民で2科目受験する場合のパターン

○は選択可能な組み合わせ、×は選択不可能の組合せ

○『地理総合、地理探究』『歴史総合、日本史探究』『歴史総合、世界史探究』『公共、倫理』『公共、政治・経済』の5科目から計2科目を受験する場合:

→『公共、倫理』と『公共、政治・経済』の組み合わせは不可

○ 『地理総合、歴史総合、公共』と、他の5科目から1科目の計2科目を受験する場合:

→ 『地理総合、歴史総合、公共』 の中で選択解答するものと同じ名称を含む科目は選択不可

(表=大学入試センター提供)

 

  • 数学

数学②は『数学Ⅱ、数学B、数学C』1科目のみの出題。問題数が増え、試験時間が60分から70分に延長される。

 

  • 理科

現行は理科①と②を別々の時間帯で実施しているが、一つの時間帯の中で最大2科目を受験する形に変更。選択できる科目の組み合わせについては従来通り。

 

  • 外国語

出題形式は従来通り。総合的な英語力を評価。

「試験時間や配点、リーディングとリスニングという出題形式(原則として両方を受験)は従来通りですが、文字や音声による試験の特徴を生かしながら、『聞く』『読む』『話す』『書く』を統合した総合的な英語力を評価します。そのための工夫の例として、英文を推敲する場面や、講義の要点を確認して考えを述べ合う場面を扱った試作問題を公表しています」(森下さん)

 

  • 情報

新しい学習指導要領において『情報Ⅰ』が必履修科目となったことを踏まえ、出題教科に『情報』が追加。試験時間は60分、配点は100点。

浪人生向けの経過措置は?

25年の共通テストでは、浪人生など旧学習指導要領で履修した受験生を念頭に、経過措置として、『地理歴史』『公民』『数学①』『数学②』『情報』について、旧学習指導要領による科目が出題されます。

25年の共通テストから初めて出題される『情報』については、旧学習指導要領の選択必修科目『社会と情報』『情報の科学』を範囲とする『旧情報(仮)』を出題します。『旧情報(仮)』は、共通部分に対応した必答問題と、『社会と情報』『情報の科学』それぞれ固有の内容に対応した選択問題から構成されます。

既卒者は、新学習指導要領による出題科目により受験することも、旧学習指導要領による出題科目により受験することも、あるいは新旧両方の出題科目を混ぜて受験することも可能です。ただし『地理歴史、公民』で2科目を受験する際に、新旧科目を組み合わせて選択することはできません。

授業内容の学習で、対応は十分可能

新課程入試では、過去問がない状況で臨むことになりますが、森下さんはこう話します。

「共通テストは、大学教育を受けるために必要な能力を把握するために、高校段階の基礎的な学習の達成の程度を判定するもの。このため、高校の授業でしっかり学習をしていれば十分に成果を出せるような出題を目指しています。また、新しい学習指導要領に対応するとはいえ、これまでに3回実施された共通テストの出題方針を重視して問題の作成を進めていきます。大学入試センターのホームページには、試作問題を公表しているので、参考にしてください」

(文=熊谷わこ)

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