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2012年12月7日
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ペダルまかせ 〜自転車のある生活〜

川治から平家落人の湯西川(奥鬼怒 前編)

文と写真:三浦 壮介

写真:湯西川の川沿いには平家の集落がひっそりと残っている拡大湯西川の川沿いには平家の集落がひっそりと残っている

写真:12階から川治温泉を見下ろす展望風呂は気持ちよかった拡大12階から川治温泉を見下ろす展望風呂は気持ちよかった

写真:雲が浮かぶ真っ青な空。都会ではこんな美しい空は見られない拡大雲が浮かぶ真っ青な空。都会ではこんな美しい空は見られない

写真:資料館などと共に復元された湯西川の平家の里拡大資料館などと共に復元された湯西川の平家の里

写真:平家の里の隣には永住を決意し武具甲冑をうめたという平家塚が苔むしている拡大平家の里の隣には永住を決意し武具甲冑をうめたという平家塚が苔むしている

写真:この日のチョモ君はいま一つ調子が出ないようだった拡大この日のチョモ君はいま一つ調子が出ないようだった

写真:橋から女夫淵温泉の露天風呂が小さく見える(中央)。遠くて入っている人の性別は分からない拡大橋から女夫淵温泉の露天風呂が小さく見える(中央)。遠くて入っている人の性別は分からない

 今回は奥鬼怒の「秘湯・八丁湯」へチョモランマ君と2泊3日の輪行。1日目は那須塩原駅スタート、奥鬼怒の日塩もみじラインの峠を越えて川治泊まり。2日目は平家落人の湯西川の山を越え、お目当ての八丁の湯へ。3日目は山王峠を越えて日光へ抜けようという、厳しく盛りだくさんなコース。

チョモランマ君と2人連れ

 10月中旬の某日午前8時52分、東北新幹線やまびこ205号は那須塩原駅に到着した。暑くなく寒くなくの絶好の気候。朝日を受けながら自転車を組みたてる。10分ほど後の普通電車でチョモランマ君が到着した。

 私は6時に家を出てきたが、チョモ君は午前4時にスタートして途中の駅まで70kmほど自走してウオーミングアップしてきたという。チョモランマ登山隊のカメラマンの経験のある同君の体力には何があっても最近は驚かなくなった。ついこの間もアンパンをかじりながら300kmを走りぬくレースを完走したという驚異の50代なのだ。

 湯の香ラインと名付けられた那須高原の道は、空気は乾いて気持ちよく、空は青く、刈り入れの終わった田んぼのほとりにはところどころコスモスが咲いている。何とも快適なサイクリングだ。快調に進む。

日塩もみじラインは手ごわい

 午前10時34分、全長320mというもみじ谷大吊り橋を見物して一休み。渡り賃300円。大きな旅館が点在する塩原温泉郷も過ぎ、走り出して27kmほどを左折して日塩もみじラインに突入する。左折せずに直進すれば西会津街道に出る。地図を見て計画しているときからもみじラインを避けたい気持ちもあったが、チョモ君の予定にはそんな選択肢はなかったようだ。

 もみじラインは名前の通り、もみじの名所として知られる標高1260m余の峠で普通車600円、自転車50円の有料道路。那須塩原駅が280mほどの標高だから、それなりの上りだ。車と違い自転車の場合は、距離よりも高低差のほうが気にかかる。平地なら100kmや150km走れても、激しい上り坂ならたとえ50kmでもこたえる。

秘湯あら湯で昼食

 予想通りきつい上りだ。ギアは一番ゆるくし時速8kmくらいで、はうように上る。なぜか私が先頭を行く。いつもならスイッと前へ行くチョモ君が後ろをついてくる。このところ仕事が忙しくあまり走っていないとかで調子が出ないらしい。このぶんなら、今回のツァーは結構互角に行けるかもしれないと、心中ほくそ笑んだ。まあ、これは翌日すぐに間違っていたことに気がつく。いつものことだ。

 午後12時20分、山中に出現するあら湯温泉に到着。むじなが傷を治したという「むじなの湯」や「寺湯」などという共同浴場のある秘湯っぽい温泉だ。立ち寄り湯をしたいところだが、今回は先が長いので目をつむる。バイクのにいさんやハイカーが昼下がりの入浴を楽しんでいた。

 一軒だけあった下藤屋という食堂に入る。壁には種々のメニューが書いてあったが、蕎麦しかできないというので山菜蕎麦を食す。ちょっと、いや、かなり伸び気味の蕎麦であった。すぐ近くには上藤屋という立派な旅館があった。昔はどんな関係だったのか想像力をくすぐられる。

バイキングで飲み放題の宿

 「もうすぐ頂上だよ」というおばちゃんの言葉を信じ再び坂を上りだしたが、なかなか上りが終わらない。少し平らになり「もう頂上か」と下りに備えてウインドブレーカーを着こむと、まだまだ上りが続いてびっしょりの汗。たまらずウインドブレーカーを脱いだ。そんな繰り返しを2度ほどしてやっと標高1265mという峠に達した。「高原大根」というのぼりを掲げた店が何軒もあった。よく見る青首大根だった。

 頂上を過ぎれば後は下るだけ。一気に下って龍王峡を横目に、午後4時前に川治温泉に到着した。予約してあった宿は一柳閣本館という所。ひときわ目立つ巨大なホテルで食事はバイキング、ビールや酒は飲み放題で7800円。徹底して人件費を節約した仕組みだが、12階の展望大浴場は豪勢だった。この日の走行は60km、獲得標高は約1300m。

智恵子の空

 二日目の午前8時、川治の宿を出発。西会津街道を20分〜30分北上すれば五十里湖が見えて来る。湖畔を左折して平家の落人の集落と知られる湯西川に向かう。緩やかな上り。前方の山々の上には真っ青な空と白い雲。都会では見られない美しいものだった。

 智恵子が本当の空だといったのは安達太良山のそれだが、きっとこんな空だったのだろう。栃木は福島の隣県だもの。午前9時50分、湯西川水の郷という道の駅のようなところで休憩。近くにネズコの大木があった。

平家落人の湯西川

 午前10時8分、湯西川平家の集落に到着。

 「隠れ忍んで八百年 今日この里に甦る」

 石碑とともに平家の里が復元されている。近くの木立の中には落人がここを安住の地と心定め、武具甲冑を埋めたという「平家塚」が苔むしていた。源平の時代は文字通り人も通わぬ深い山中だったのだろう。

 それにしても平氏追討。日本史上これほどまでに徹底的な大規模壊滅戦を展開したのは空前絶後だろう。同じ人種として現代に生きる我々としては信じられない感覚に襲われる。もっとも70〜80年前の日本民族の有り様も今ではちょっと別民族のようでもある。人間というものは時代の熱病を患うと、思いもかけずに変異するものなのかもしれない。

 西洋でも巨大帝国を作った勤勉で合理的なローマ人と、現在のイタリア人の対比が不思議だが、これはどうもローマ人自体が混血だったうえ、時代とともにさらに混血が進んだので同じ民族とは言えないようだ。

鬼怒川源流の八丁の湯へ

 湯西川を過ぎ、標高約1200mの峠を越えると鬼怒川に突き当たる。右折して鬼怒川源流を目指してひたすら上る。鬼怒川最奥の集落川俣を過ぎ、午後2時半に標高1106mの女夫渕温泉の市営駐車場に到着した。

 ここから先8kmほどの砂利道は一般車は入れない。道路からは女夫渕温泉の露天風呂が見える。数人が気持ちよさそうに入っていたが、遠くて性別などはわからなかった。迎えのマイクロバスは午後3時。

 自転車2台をマイクロに積んでもらい、数人のハイキング客とともに宿へ向かった。手つかずの原生林の中にひっそりとあるはずの八丁の湯。数カ月来訪ねたいと願っていた温泉はもうすぐだ。この日の走行は約60km、獲得標高は約1600m。(次回は12月14日掲載予定)

プロフィール

三浦 壮介(みうら そうすけ)
 50歳に手が届くころから始めた自転車遊び。居住する湘南をふらりと流したり古い街道を走ったりして楽しんでいるが、このところ輪行で秘湯や味わい深い温泉を訪ねることがマイブーム。でも向かい風とのぼり坂はあまり好きでない。
 「自分の一生で今が一番若い。今できることを今やろう」、が最近の信条。自転車は敷居は低いが奥行きは深い。気ままに楽しんで気分転換。元マスコミ勤務の176cm、1946年生まれ。目指すは“定年の達人”。

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