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新幹線のカオを金づちでつくり出す 職人の技を見た

2008年12月1日

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 歴代の新幹線からリニアモーターカーをはじめ最新鋭の車両まで、従業員35人の会社が生み出し続けている。経験に裏打ちされた職人技が、先頭車両の複雑な曲面を形にする。その技を見せてもらおうと2月初旬、山口県下松市にある山下工業所を訪ねた。

 瀬戸内海を臨む工業団地の一角にある工場では、韓国の特急車両の組み立てが最盛期を迎えていた。山下竜登専務が見せてくれた工程表には、ドバイに輸出されるモノレールなどの工期がびっしり書かれている。4、5人が、オデコと呼ばれる先頭車両の骨組みに張り付いて作業している。空気抵抗を抑えたオデコの形は、複雑な曲面の固まり、まさに科学技術の結晶だ。そんな最先端の部品製造を職人たちが担っている。

 オデコの骨組みに合わせてアルミ板を微妙に曲げ、つなぎ合わせていく。板の切断や曲げには機械が導入されたが、最終的に微妙な流線形曲面を作り出すのは職人が振り下ろす金づちだ。その手法「打ち出し板金」は、0系新幹線の頃から変わっていない。

 なぜ、ここまで手作業が残っているのか。鉄道車両は、多品種少量生産品の典型。なかでも、先頭車両は前後2両しかないため、作る数が限られる。このため、高額な金型を必要とするプレス成型や、厚い板からの切削成形では、採算が合わない。結局、手作業で曲げて溶接する打ち出し板金が、最も効率的なやり方になるのだという。

 「偉そうなことを言うつもりじゃないんですが。できて当たり前というか」。照れくさそうに話す坪島敬志さん(34)は、前照灯や運転室の窓枠に使う金属の「特殊曲げ加工」を担当している。先頭車両の流線形外板曲面に合わせ3次元に曲げるため、高度な技術が必要とされる。だが、駅で新幹線を見ても「特別、感慨に浸ることはないですよ」と坪島さん。山下専務が「職人気質なもので。話下手なんです。仕事に自信をもっている現れでもあるんですが」と苦笑する。

 大学卒業後、金融業界にいた山下専務は、父親の山下清登社長が一代で築いた会社を継ぐため、06年に帰省した。戦後、乗用車の部品修理をしていた山下社長。その腕を見込まれ、地元の日立製作所笠戸事業所で、車両作りに携わるようになった。その後、独立し、売り上げ約3億5000万円の会社に育てた。

 日立製作所笠戸事業所の協力会社としては中規模だが、鉄道車両のオデコの部品製造に関する相談は何でも持ち込まれるという。0系の試験車両から、日立が出荷してきた新幹線すべてにかかわってきた。

 「試験車両を手掛けた縁で、オデコはうちに一任、ということになったようです」と山下専務。今も、細かい部品の組み立て方などは職人が長年の経験に基づき、現場で日立の社員と相談しながらその都度、決めていく。今までにモノレールから台湾新幹線、リニアモーターカーも手掛けてきた。

 目下の課題は後継者の育成だ。昨年、見学に訪れた隣町の高専生9人のほとんどが、下松市で新幹線を作っていることを知らなかったという。山下専務は「下松市は日本有数の鉄道車両生産の街。それを知ってもらうことから始めなければ」と話す。

 職人の高齢化が進むなか、山下専務は「意欲のある若者はいつでも募集しています」と呼びかけている。(2008年3月25日 奥山晶二郎)

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