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年明けに新風を期待

2007年12月19日

写真福士さん

 街はクリスマスムードで華やぎ、落ち葉を踏む足音もどこかワクワクとしているように聞こえる。でも、マラソン選手達にクリスマス気分を味わっている余裕はないだろう。

 先日、高橋尚子さんが名古屋国際女子マラソンに出場することを発表した。そしてその翌日、福士加代子さんがいよいよ大阪国際女子マラソンで初マラソンに挑むことが明らかになった。女子マラソン界は風雲急を告げている。高橋さん、福士さんに限らず、事実上あと1枚と言われる北京五輪の切符を狙う選手達は、クリスマスやお正月を返上しての合宿となるのだろう。

 これまでの五輪を振り返ってみると、バルセロナ、アトランタ、シドニー、アテネと、必ずと言っていいほど“新顔”が1人代表になっている。つまり、経験豊富とはいえないが、選考会で見事な切れ味を発揮し、代表を決めた選手だ。

 バルセロナでは初マラソンで大阪を優勝した小鴨由水さん。アトランタは初マラソンで名古屋を制した真木和さん。シドニーはセビリア世界陸上で銀メダルに輝いた市橋有里さん。そしてアテネは3度目のマラソンで大阪を制した坂本直子さん。

 そういう風に考えてみると、3人の有力な“新顔”が私の頭に浮かぶ。まず、大阪国際女子マラソンに出場を決めた福士さん(ワコール、25歳)、マラソンでは新顔だ。岐阜の駅伝では5区(11.6キロ)を走ったが、文句なしの区間賞。格の違いを見せ付ける走りだった。私が福士さんのランニングフォームで注目したのは、腕の振り、脚の動きが前にも増して滑らかになったこと。このフォームなら、心肺機能が持つ限り、いくらでもそのまま走り続けていられると思うほど効率の良い走りだった。それでいて速い。

 関係者の中からは「1万メートルとマラソンは別物だよ」とか、「マラソン練習をする準備期間が足りないのでは」という声も聞こえる。でも私は、福士さんに関してはこれまで日本選手が行ってきたマラソン練習の常識が当てはまらないと思う。30キロを何本走るとか、40キロを走るとか、そんな練習ではなく、ラドクリフさん(女子マラソン世界記録保持者)やシモンさん(シドニー五輪銀メダリスト)と近い、スピード重視の練習方法でマラソンを走ることが出来るのではないか。これから20キロ走のタイムトライアルを2日連続で行うという練習方法も、ワコールの永山監督は考えているようだ。また、福士さんは周りがイメージしている以上に性格は冷静で、コツコツ型である。マラソンに向いていると思う。

 そしてもう1人、岐阜の駅伝で目立ったのが、中村友梨香さん(天満屋、21歳)だ。エースが集う3区で日本人トップ。名古屋で初マラソンに挑むが、上に跳ねず撫でるような大きな走りで、スムーズに進んでいく。監督の武冨さんは「中村は面白いよ」と思わせぶりに話していたが、成長著しく、期待できる。天満屋はチームの特徴として朝練習は全員一緒に集団で走る。後輩は先輩達の後ろに付き、様々なことを吸収している。過去、シドニーに出場した山口衛里さん、アテネの坂本直子さんの応援にチーム全員が現地に向かった。それは「若い時から五輪へ向かう先輩の緊張や興奮を肌で感じて欲しい」と願う武冨さんの指導法なのだ。こうして受け継がれてきた五輪代表に、中村さんはとても近いところにいる。

 最後の1人は大崎千聖さん(三井住友海上、20歳)。大阪世界陸上で銅メダルを獲得した土佐礼子さんの練習パートナーを務めた。「30キロまではどの練習でも土佐の上をいっていたよ」と監督の鈴木さんは話す。彼女の心肺機能は驚異的で、脈拍は33〜34(1分間)。11月初旬の東日本実業団女子駅伝で五区の区間記録(高橋尚子さんが持つ)に迫る快走をみせた時も、「追いこみ切れなかった」と残念そうに話していた。優れた心肺機能に脚が追いつかない状態なのだ。名古屋で初マラソンにチャレンジするが、マラソンでその潜在能力が大いに引き出されることだろう。

 年明け、女子マラソン界に新しい風が吹くか、注目して欲しい。

顔写真

増田 明美(ますだ・あけみ) スポーツジャーナリスト

 1964年、千葉県生まれ。成田高校在学中、長距離種目で次々に日本記録を樹立する。1984年のロス五輪に出場。1992年に引退するまでの13年間に日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残す。現在はスポーツジャーナリストとして多方面で活躍中。2006年にはタイ・プーケットでマラソン大会を開催し、スポーツによる国際交流にも注力。大阪芸術大学教授、文部科学省中央教育審議会委員、新健康フロンティア戦略賢人会議委員なども務める。

公式サイトは「増田明美's Home page」 別ウインドウで開きますhttp://www.akemi-masuda.jp/


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