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篠原ともえ アイデアのありか
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モードなシルバニアファミリー。幼き日の“ものづくり”の記憶

みなさん意外に思われるかもしれませんが、実は私、幼い頃は内気な性格で、お絵描きやぬり絵など、遊びといえば家で楽しめるものばかりでした。中でも好きだったのが、お人形さんと遊ぶこと。当時はシルバニアファミリーをはじめ、リカちゃん人形などがとても人気で、自由に物語を思い描いては、夢中で遊んでいたことを思い出します。

そして、いつしかその興味は人形たちの洋服へ。初めは家にあったお気に入りの布をぐるりと巻くなど試していたのですが、既製品のような、でもオリジナリティーのある洋服を着せたいと、幼いながらに手芸を覚え、手作りするようになりました。どんなに手を動かしてもイメージ通りにいかず、悲しくなったこともありましたが、それでも工夫しながら、形になればうれしくて、満足してはまた作る。ものづくりの楽しさを知ったかなり初期の体験だったと思います。

話は2年前にさかのぼりますが、2019年にシルバニアファミリーの展示に参加させていただく機会に恵まれました。翌2020年に35周年を迎える記念すべき大展覧会ということで、キャラクターたちの衣装をデザインしてほしいというご依頼でした。

シルバニアファミリーをモードスタイルに
シルバニアファミリーをモードスタイルに

衣装をつくるにあたり、子供の頃から親しみ、いろんなインスピレーションを与えてくれたこの小さなお友だちに、今の私がどんなアイデアを還元できるか、また、周年展ということと、末永く愛されてきたキャラクターたちへの敬意を込めて、“時間”をひとつのテーマに導き出しました。

その普遍性を、ファッションにおける揺るぎないスタイル「モード」に落とし込み、かつて夢中で遊んだ私を含め、大人世代にもあらためて楽しんでいただけるような、これまでにない衣装や演出ができたらと思い描きました。

コートをまとうペルシャネコ
コートをまとうペルシャネコ

ハイエンドなモノトーンの装いは、私にとっても憧れのスタイルです。年齢を重ねたからこそ湧き出たイメージでもあり、その普遍的な世界観がシルバニアファミリーにも通じるように感じました。シンプルに、可愛らしさとクールさが共存するそのギャップを演出してみたいと思ったのも、このスタイルを提案した理由の一つです。

60年代の高級感漂うクラシックな装いに合わせ、アクセサリーやバッグ、靴など細部のクオリティーにもこだわり、素材やパーツもベルベットやエナメルといったラグジュアリーなものを探し求め、生地屋さんを巡りました。ドレスはとても小さいのでデザインのディテールや洋服のシルエットの出し方が非常に難しく、人形の服のデザインには、様々なアイデアや工夫が施されているんだなと、あらためて学ぶところが多かったです。

洋服の制作は、シルバニアファミリーの衣装縫製スタッフさんにお願いし、デザイン画での指示やサンプル作製などを経て、丁寧に形にしてゆきました。実際に制作に取りかかると、パーツのサイズがないことや変更しなければならない点も多くあったのですが、チームのみなさんが熱心に向き合ってくださり、試行錯誤の末、当初のイメージより高度なものができるなど、作品が進化していく実感がありました。

完成に向けた衣装デザインのスケッチ
完成に向けた衣装デザインのスケッチ

デザイン画はメモも含め30枚ほどになったでしょうか。時間がない時などは、即座に指示を描き上げて遠隔でやりとりすることも。協同で作り上げていく中で、縫製スタッフさんが「細部にこだわるほど、どんどんと素敵になる、こんな高揚感は初めてです……!」という言葉をかけてくださいました。私も完成まで同じ気持ちで胸の高鳴りが続いていたことを覚えています。

今回は展示ということもあり、お洋服だけの制作にとどまらず、演出のディレクションもさせていただきました。衣装と演出で一貫したストーリーを設定し、さらにそれをよりリアルにするため、スチール撮影もしました。

小さな舞台のセットには、時間の象徴「時計」を置いて。モードな衣装をまとったキャラクターたちは、モデルさながらさまざまな表情を浮かべ、次から次へとシチュエーションのアイデアを引き出してくれました。撮影中はすっかり童心に返ってしまったのですが、時が経ってもこうして楽しませてくれるキャラクターたちの存在に、普遍性を再認識したのでした。

セッティングの撮影現場
セッティングの撮影現場

撮影を引き受けてくださったのは、フォトグラファーの堀内麻千子さん。広告やモノクロ写真のポートレートなどを多く手掛けていらっしゃる堀内さんですが、今回の現場ではモデル撮影さながらの本格的なスタジオセッティングで、ライティングにも徹底的にこだわって仕上げてくださいました。

フォトグラファーの堀内麻千子さんとの撮影現場
フォトグラファーの堀内麻千子さんとの撮影現場

実はこの制作では他に、ポップなマリンスタイルの衣装・演出も手掛けました。メインキャラクターのドレスに使ったテキスタイルは、オリジナルでデザインしたこだわりのもの。制作してみて気づいたのですが、お人形のサイズに合うような柄ものの生地、特に印象的に映る大胆な柄というのが、既製の生地ではほとんど見つかりませんでした。

ないなら作るしかない!ということで、手描きのスケッチを元にイラストレーターというソフトで仕上げ、幾度も出力しながらベストな柄のサイズを割り出して、その模様を光沢のあるサテン素材にプリントしました。ふわりと揺れるようなロングドレスにすると、不思議なことに、撮影ではキャラクターが風を感じて誇らしくポーズをとってくれました。

クルーズを楽しむマリンモードな世界
クルーズを楽しむマリンモードな世界

幼少期、なかなかうまく作れず悔しい思いもしたお人形の洋服ですが、今ではこだわり抜いて、ここまで作り上げることができ、子どもの時とはまた違った満足感とよろこびを味わうことができました。やはり、幼い頃に得た体験というのは、いつまでも大事なアイデアのありかなんだと思います。

手作り衣装を着せたお人形たちとおもちゃのミシン
手作り衣装を着せたお人形たちとおもちゃのミシン

当時の人形たちは、私の手作り、ものづくりの原点として今も大切にしています。買ってもらった人形たちを喜ばせようと、どんな服が着たいのか問いかけ、他にはない洋服を作ってあげたい一心で、手芸の本を手に取ったあの日。縫い方やステッチを覚え、もともと着ていた洋服をひっくり返して仕組みを研究するなど、その時間と熱意は今の私のクリエーティビティーに確実に根付いています。

この作品たちは、現在も全国を巡回中の特別展「シルバニアファミリー展」でご覧いただけます。なかなか足を運ぶのもむずかしい時ではありますが、この作品が、なにかみなさんの懐かしい思い出や忘れかけていた感覚を呼び起こすきっかけになれば幸いです。

フォトギャラリーへ(写真をクリックすると、ほかの作品もご覧いただけます)

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