新しい教育のカタチを考える

「興味開発」で学ぶ意欲に火をつける 家庭で子どもの探究心を伸ばす3つの方法

2019.12.30

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ゆきどっぐ
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小学校は2020年度、中学校は21年度、高校は22年度に新学習指導要領が実施されます。高校では、19年度から21年度が新学習指導要領への移行期間とされており、新設された「総合的な探究の時間」の授業をすでに始めている学校もあります。なぜ、今の子どもには探究が必要なのでしょうか。「探究学舎」の宝槻泰伸さんに聞きました。

話を伺った人

宝槻 泰伸さん

探究学舎講師・株式会社ワイズポケット代表取締役社長

(ほうつき・やすのぶ)
1981年生まれ。高校を中退し、京都大学経済学部に進学。2011年に子どもの知的好奇心を
刺激する授業を行う塾「探究学舎」を東京都三鷹市に設立。18年は年間約3000人の子どもが授業に参加した。19年度にはインターネットで学ぶ「オンライン探究」も開始。著作に「探究学舎のスゴイ授業 元素編」「強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話」などがある。

探究心とは、好きなことに捧ぐ情熱

「驚きと感動の種をまく。」をコンセプトに、子どもの興味開発を行う塾「探究学舎」を営む宝槻泰伸さん。その授業の人気ぶりは北海道や沖縄、時にはアメリカやヨーロッパから訪れる親子がいるほどです。

いま注目される「探究」とは、そもそもどんなものなのでしょうか。宝槻さんは「20世紀モデル教育」と「21世紀モデル教育」を例に解説しました。

「興味開発」で学ぶ意欲に火をつける 家庭で子どもの探究心を伸ばす3つの方法

「探究は読んで字のごとく、対象となるものごとを探し、理解を深め、究めていくことです。その根底には、『好きなことをどこまでも追い続ける情熱』があると僕は思います。近い将来、ルーチンワークはテクノロジーに任せてクリエーティブな仕事を人が担う社会が訪れます。僕は情熱こそがクリエーティブの源泉に違いないと考えています。だからこそ、20世紀モデルの能力開発とは違う、21世紀モデル教育で、情熱を注げるテーマを探す『興味開発』を子どもたちに行っているのです」

●20世紀モデル教育

国家あるいは企業主導のもとに事業が進められた時代。社会において、労働文化や雇用文化の影響が強く、「国立大学出身」「英語堪能」など、多くの付加価値がある人ほど、給料や評価が高い。このころの教育は、「学習習慣の定着」「勉強の仕方を身につける」「繰り返し学び、できることを増やす」という方針で実施。有名大学を出て、大手企業に就職するための能力開発に重きが置かれ、偏差値が重視された。

●21世紀モデル教育

YouTuberなどの新しい職業が生まれ、フリーランスや個人事業主、パラレルキャリアなど、人の働き方が大きく変わった。20世紀モデルとの大きな違いは、自分の生涯の仕事を「自分で」決めることにある。「仕事は情熱を注げるもの」という認識から、自ら探究心を持って学ぶ教育へと変化した。そこで、まずは子どもの探究心に火をつける興味開発が必要となる。

子どもに興味の種をまく 探究学舎の学び

「子どもを畑に例えると、保護者が最初に戸惑うのは、『我が子の畑に何の種が合うのか』でしょう。さかなクンにとっての“魚”は、我が子にとっては何なのか。探究学舎では、まずたくさんの種をまくことを提案しています。10個でも20個でも種をまけば、きっといつの日か、興味の芽が出てきます」

探究学舎の特徴は、教科ではなくテーマごとに授業を実施すること。そして、公式をそのまま覚えさせるのではなく、「これはどうして起こるのか?」と考えさせ、当時の科学者や歴史的な偉人の思考をたどる“ストーリー”を体験することにあります。

新しい教育のカタチを考える

子どもに驚きと感動を与える授業として代表的なものは、「元素編」。エメラルドの成分であるベリリウムなどの元素サンプルが並ぶ周期表テーブルや簡易分光器、形が美しいビスマスといった元素の実物などを使用。学校の授業ではただの記号として覚える元素を、五感を通して個性豊かに感じさせることで、子どもたちの興味・関心を引き出しています。

「元素の面白さに気付いた子どもは、周期表をすべて暗記したり、人間の体が何の元素からできているのかを調べたり、自発的に探究していくんですよ。これが僕たちの言う『興味開発』。子どもの学ぶ意欲に火がつけば、おのずと学ぶための努力を重ねていきます」

元素編のほかにも、宇宙編や経済金融編、戦国英雄編など、19の講座を開講(2019年11月現在)。生徒の中には、小学1年生で「宇宙すごろく」を企画して販売したり、小学4年生でYouTubeチャンネルをつくって歴史クイズ動画を配信したりする子もいます。

「授業を通して『将来、こういう人になりたい』という明確な目標を持つ生徒は多いですよ。ただ、探究学舎に来ればすぐに探究心に火がつくかというと、全員がそうではありません。すぐにやりたいことが見つかる子もいれば、3年間通ってもなかなか見つからない子もいます」

それだけ子どもの個性は千差万別。それぞれの子どもの成長を見守る必要があるのです。

「興味開発」で学ぶ意欲に火をつける 家庭で子どもの探究心を伸ばす3つの方法

家庭で探究心を伸ばす三つの方法

「家庭でたくさんの興味の種を子どもにまこうとするのはハードルが高すぎます。例えば、元素の単元を知らない親が、元素で驚きと感動を子どもに与えようとするのは難しいですよね。探究学舎は、一つのテーマを『子どもが理解しつつ、五感で体験できる学習体験』として開発しています。それをそのまま家庭に落とし込むのではなく、親自身ができることから一つずつ着手していくのがいいと思います」

宝槻さんは「家庭でできる子どもの探究心を育てる方法」について三つのポイントを挙げました。

⑴ 親の得意なことを子どもとシェアする

「子どもに驚きと感動の種をまくのは、シンプルに言うとシェアすること。映画を見た後、友だちに勧めるのと同じように、親が好きなこと・得意なことを子どもと共有すればよいのです。例えば、カメラ好きなら、写真を撮るときに感じる驚きと感動を子どもに伝えることができます。親が楽しそうに話せば、子どもも興味を持つでしょう」

さらに、子どもが興味を持ったらその知識を深めてあげる必要がある、と宝槻さんは話します。そのためには、テレビ番組やネット動画などの「ムービー」、博物館や美術館などの「ミュージアム」、図鑑などの「ブック」といった資料を与えることが有効だそうです。

⑵ 子どもが話すことを親が興味を持って受け止める

「感動する出来事があると、子どもは目を輝かせて誰かに伝えようとします。親子で同じ刺激を受けて共感することが最善ですが、子どもが外で体験してきた感動についての話を自宅で聞いてあげるのでも十分です。このとき、『すごいね! それでそれで?』と興味を持ってシェアを受け止めるようにしましょう。そうすることで、子どもの自尊心が高まり、子どもはどんどん話すようになります」

最も効果的なのは、子どもに、興味を持ったテーマの知識を深め、振り返る習慣をつけさせること。子どもが自発的に考え、アウトプットすることで、知識の定着につながります。

⑶ 人生の師となる人への橋渡しをする

「専門家やプロではない親が驚きと感動を子どもに与え続けるのは限界があります。子ども自身にある程度の知識が定着したら、そこから先は、より学びを高めてくれる人生の師を見つけることが大切です。専門家というだけでなく、我が子のよさを引き出してくれる師を見つけましょう。その師と子どもの橋渡しをするのが、親にできる最後のことですね」

例えば探究学舎では、学ぶ意欲に火がついた子どもの親同士が情報交換するLINEコミュニティーがあります。その一つが「宇宙物理クラブ」。ブラックホールの写真を撮影した研究チームの日本代表を務める本間希樹さんの講演会を自主開催したり、子どもを連れて天文宇宙検定を受けに行ったりと、親同士で、子どもの探究心を伸ばす工夫をしています。

「興味開発」で学ぶ意欲に火をつける 家庭で子どもの探究心を伸ばす3つの方法

「やりたいことを見つけ、それに向けて努力できることが、子どもにとっても親にとってもベストな状況ですよね。だとしたら、興味開発をして探究心を刺激された子どもが、将来の夢に向かって能力開発をするのがいいと思うんです。探究学舎では、この両方を提供できる教育サービスを目指していきたいと思っています。でも、まずは社会で少数派である興味開発に注力して、20世紀モデル教育から、21世紀モデルへ進むための舵取りをしたい。そうやって少しずつ教育のあり方が変化していけば、もっと大きな社会の変化にもつながっていくと思うんです」

子どもたちが情熱を捧げられることを見つけて、自らどんどん探究を始めることが本望だと言う宝槻さん。

「小学校時代の興味は、スポーツから音楽へ、音楽から科学へと、好きな分野を自由に行き来して構いません。いろいろなことを味わった経験は、子どもが将来自分のキャリアを切り開くための力になると思います。まずはたくさんのことに触れ、面白さを感じること。そこから学ぶ意欲につながっていくのです」

(撮影:辰根東醐 編集:阿部綾奈/ノオト)

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