
手足の痛みから脳卒中まで 重症化する前に治療を
久保 亨 先生
くぼ・とおる/高知大学医学部老年病・循環器内科病院准教授。聖路加国際病院、London大学St. George’s Hospital Medical Schoolなどを経て現職。
先天性の代謝異常症
成人期からの発症も
私たちの体内では日々、生命を維持するために、色々な物質が作られたり分解されたりしています。こうした反応や調節機能を「代謝」といい、代謝には「酵素」を必要とします。
この酵素の一つ、体の中で不要になった物質を分解するα-ガラクトシダーゼという酵素の働きが弱い、あるいは作られないために発症する病気が「ファブリー病」です。
ファブリー病は、先天性の代謝異常症の一つで、男性の患者さんは「古典型」と「遅発型」、女性の患者さんは「ヘテロ接合体」というように、性別や症状によってタイプが分かれています。
「古典型」は、小児期から手足の痛みや汗をかきにくいなどの症状が現れます。その後、30代頃に腎機能が低下し、40代以降に心肥大や不整脈、腎不全、さらに脳血管障害を起こす場合もあります(下図)。
「遅発型」は、主に成人になってから心臓や腎臓などの一部の臓器にのみ症状が現れます。また、「ヘテロ接合体」の患者さんは、無症状のこともあれば男性と同様の症状が出ることもあります。

点滴による治療で、
症状の進行を緩やかに
ファブリー病の患者数は、国内の新生児スクリーニングで約7千人に1人の割合と報告されており(※1)、従来の約4万人に1人の割合という報告よりも多いと指摘されています。
またわが国においては、「肥大型心筋症」の患者の3%は、ファブリー病に罹患(りかん)していると報告されており(※2)、未診断患者が存在する可能性があります。そのため、原因不明の心肥大の患者さんについては、特に注意深い診断が必要だと考えています。
治療法は、主に二つあります。一つは、すべてのファブリー病患者さんに行うことができる「酵素補充療法」です。不足している酵素を2週間に一度、点滴で補充する治療で、症状の改善や病気の進行を抑える効果があります。
また6年前からは、「シャペロン療法」という内服薬による治療も始まりました。これは、この治療法に適応する遺伝子の変化がある場合にのみ行える治療です。
(※1)Inoue T et al. J Hum Genet. 2013; 58(8): 548-552.
(※2)Nakao S et al. N Engl J Med. 1995; 333: 288-293.
気になる症状や家族歴
医師に気軽に相談を
気になる症状がある方は、ささいなことでも医師に伝えてください。「この程度なら我慢しよう」などと思う必要はありません。また、家族や親戚にファブリー病の方がいる場合、必ずしもご自身も罹患するとは限りませんが、医師に相談してみることをお勧めします。
ファブリー病と診断された場合は、患者会などに参加して、情報や悩みごとを共有するのもよい方法だと思います。







