来年度から始まる新しい大学入試や新学習指導要領は、
日本の教育が大きく変わりつつあることを示している。関西を代表する名門中高一貫校、
高槻中学校・高等学校では、今どんな授業が行われているのか。
生徒たちに何を与え、どんな力を身につけさせているのか。取材して探った。
鈴木 できるだけ私が「教えない」ことを重視しています。本校の生徒たちは受験勉強を頑張ってきた生徒たちなので、与えられた課題に答えることは得意ですし真面目に取り組みます。しかしこれからの入試、あるいは社会で求められるのは自分で課題を解決する力です。彼らには、教えられずに学ぶ力を身につけさせたいと思っています。
滝藤 まだ手探りしながら、いろいろな可能性を追求している段階です。授業の目的をかなえるために有効だと分かったものは、スピード感を持って取り入れています。
鈴木 以前はノートを集めてチェックするのにかなり時間を要していましたが、その点はずいぶん省力化できました。反対に、音読課題を自宅で発音しタブレットで撮影した動画を提出する、といったこれまで難しかった学びも可能になっています。
滝藤 中学生は毎週8時間で、うち5時間は日本人教員による授業という点は共通していますが、中1はその他にネイティブによる会話授業が2時間と紙の本による多読、中2は会話授業が3時間、中3はオンラインの英会話2時間と多読1時間を課しています。

滝藤 本校では中3からGL、GA、GSという三つのコースに分かれますが、GAコースは中学から、他のコースは高校から英語での講演を聴きリポートを書いたりする機会が少なくありません。また、海外フィールドワークや海外研修へと出かけたりもします。現地の大学教授を相手に英語でプレゼンをするような場面では、時には手厳しい批判も受けますが、それも貴重な経験です。
滝藤 英語は話せればいいのではなく、それを「使って」何ができるかが重要です。私たちは英語をツールとして使いこなし、社会のリーダーとなれる人を育てたいと思っています。そのために大切なのは、積極的に学ぶ姿勢です。それが身についていれば、特別な準備は不要です。
鈴木 大学入試でも、先に大きな夢や目標があれば、入試はそこに至る通過儀礼として超えなければならないことが理解できるはずです。言葉を使って伝えること、理解することに楽しさを見いだせる生徒たちと、教室で会えることを願っています。
この日、中学3年生の英語授業の教材は、「屋久島のエコツアー」について現地ガイドが語る内容。教科書は高校1年生のものを使用している。
冒頭、生徒たちは手持ちのタブレット端末にイヤホンをつなぎ、3分ほどの英文を静かに聴きながら、マッピング(主題の下にサブ的トピックや関連ワードを配置するなど、視覚的に内容を整理していく方法)に取り組む。その後、それぞれが聴き取った内容についてグループ内で話し合い、理解を共有する。ここまで、文章を文字で読む場面は一度もなく、会話も英語のみ。その後、ようやく鈴木先生の合図で生徒たちは教科書を開き、文字で内容を確認し、情報を補っていく。
英語を耳で聴き、英語でメモを取り、話し合い、要約を書く。脳のあらゆる部分をフル活用させるような刺激的な授業だ。生徒たちにはぼんやりする暇さえもなく、文字通り「全員参加」の授業は熱気にあふれている。かと思えば、級友の発表を聴き誰かが思わず発した「え、そうなん?」という日本語のつぶやきに周囲で笑いが広がるなど、雰囲気はとても明るい。
この教材学習は、最終的に中学1年生にも理解できる内容にリライトすることを目的としている。深い内容を簡潔に。高度な表現を平易に。その力は、日頃の授業の中で培われている。