不確実なことが多く、激変する社会情勢の中、自ら考え、行動することで未来を切り開いていく。
そのような若者を育てるべく、教育現場は多様化しており、様々な変革が進められている。
そんな時代に、伝統ある中学・中高一貫校では、どのような教育を行っているのか。名門3校の校長・部長に話を聞いた。
慶應義塾中等部
井上 逸兵先生
[部長]
慶應義塾は「独立自尊」の理念のもと、新しい時代を担うリーダーの育成を目指しています。その一貫教育校である中等部では、何事も自分の頭で考え、決断し、行動できる自立した人間となってもらうことを、教育における最大の目標にしています。
例えば、本校には校則がありません。とはいえ、何でもやりたい放題というわけではありません。何事もルールで一方的に縛るのではなく、どうすべきかは自分で考え、判断し、行動してほしいのです。
勉強でも学校生活でも、教員は最初から答えを示すようなことはせず、生徒に主体的に考え、自発的に動いてもらえるよう心がけています。そのためには、教員が常に生徒を見守り、適切なフォローをする必要もあります。そのようなことを手厚く行っていることが、本校の一番の特色です。
本校の教室に教壇はありません。生徒は先生を「~さん」と呼び、非常にフランクな関係です。試験期間以外は教員室に自由に出入りでき、いつも生徒と教員が和気あいあいと話をしています。本校の卒業生はみなさん、「中等部は自由で楽しかった」と、担任の先生との思い出をうれしそうに語ってくれます。
本校の生徒は受験の心配がないこともあり、みんなのびのびと学校生活を楽しんでいます。教育の柱は、学業、校友会活動(クラブ活動)、学校行事の三つです。学業だけでなく、社会性や人間力を養うことを何より重視しています。
英語は、生徒の希望や習熟度を考慮した少人数クラスでの授業を行っています。夏休みにはイギリスやハワイに滞在し、現地の教育プログラムに参加する研修も人気があります。海外の生徒と同じ部屋に寝泊まりし、野外活動やワークショップ、ディスカッションをする。そのような経験は、国際的な視野を磨き、生涯の思い出となる貴重な機会となっています。
独自のカリキュラムとしては、3年時に週2時間の選択授業があります。英会話やフランス語入門、TOEFLを目指す語学系から、落語、小説の創作、アンサンブルや造形ワークショップなど、教員が専門や特技を生かした、教科に捉われない授業を行っています。この時間は、教員や異なるクラスの生徒との良き交流の場にもなっています。
校友会は運動部が17、学芸部が21あり、両方を兼部する生徒も多くいます。運動部ではOBや大学の体育会の方にも、コーチとして指導していただいています。
学校行事は、4月の新入生歓迎会から早慶戦の応援、林間学校、運動会、文化系クラブの発表の場である展覧会、自分たちで作詞作曲した曲を合唱する音楽会など、非常に盛んです。行事を通して生徒に最高の経験をさせてあげたい。そのような思いで、教員も毎年、一生懸命プランを練っています。
昨今は、先が誰にも読めない不確実な時代です。そのような時代のリーダーに必要なのは、自分の頭で考え、決断し、行動する力、また多くの人を引きつけ、協力して何かを成し遂げるための人間力です。
そのような力は、教員をはじめ、先輩後輩、同級生などとの濃密な人間関係の中で磨かれ、培われていくものです。本校には、そのための最高の環境があります。
ある意味、本校はとてもアナログな学校です。人と人のリアルな触れ合いによる触発といった、数値化できないものを何より大切にしています。そのような環境で自分を磨き、成長したいお子さんには、ぜひ本校を目指していただきたいですね。