AIの進化等により社会が大きく変わろうとしている今、子どもにどんな力を身につけさせるべきかが問われている。
日本の教育にも変革が求められ、多様化が進んでいる。そのような状況のなか、名門中高一貫校ではどのような教育が
行われているのか。教育理念や校風、カリキュラムを含めた魅力を、3校の校長に聞いた。
栄光学園中学高等学校
望月伸一郎さん
[校長]
本校は1947年に、カトリックの修道会であるイエズス会によって開校されました。神様が一人ひとりに与えた可能性を最大限伸ばし、他者や社会のために貢献できる人間を育てる。そんなキリスト教的価値観のもと、倫理面や生活指導も重視した全人教育を行っています。教員が生徒一人ひとりと向き合い、きめ細かな指導ができるよう、一学年180人、教員一人あたり生徒12名の少人数教育にこだわっています。
東京ドーム2.4個分の自然豊かな広大な敷地のなか、本校の生徒はのびのびと学校生活を楽しんでいます。木造中心の2階建て校舎は、大きな窓を取り入れた開放的な造りで卒業生の建築家・隈研吾さんが「子どもをコンクリートの箱に閉じ込めてはいけない」との発想で監修したものです。生徒は授業の間の10分休憩にも外へ飛び出し、元気に遊んでいます。
本校は自由な校風で、校則もほとんどありません。生徒の心と体のバランスよい成長を重視しており、毎日、2時間目と3時間目の間には、全校生徒が校庭に出て体操を行います。江の島から小田原城までの32キロを歩く大会も名物行事となっています。これらの行事は生徒同士の絆を深め、卒業後も良き思い出となっています。
本校のカリキュラムは中学高校の6年間を2年ずつ初級、中級、上級に分け、それぞれに学習指導と生活指導の目標を設定しています。そのうえで毎年、生徒の状況に合わせ、具体的なプランを調整しています。
授業は知識の詰め込みではなく、本物に触れ、五感で感じ、自分の頭で考えることを重視しています。例えば理科の授業では中学1年でガスバーナーの付け方を練習し、ビーカーの水を温める実験をします。小学校の教科書では「水は沸騰すると100度になる」と習いますが、現実にはそうなりません。それはなぜなのかを自分なりに考え、さらに実験をしていきます。生物の授業では裏山の植物を自分たちで採集し、顕微鏡で調べ、分類していきます。知識偏重ではないこのような授業によって、子どもたちの考える力は育てられていきます。
英語は文法や講読を主体とした授業と、ネイティブの先生による実践的な英語を習得する授業の二本立てで行っています。イエズス会のネットワークを活用し、フィリピンの学校との交流やアメリカの大学での夏季研修など、海外経験を積めるプログラムも充実しています。
40年以上の歴史がある総合学習「高一ゼミナール」も好評です。スペイン語や中国語、手話、スローフード、演劇、マジック、立体紙工作、文化人類学、ソロキャンプなどバラエティに富んだメニューから興味関心に合わせて選択できます。特に、各界で活躍している卒業生が講演するOBゼミは生徒らの刺激やモチベーションアップにつながっています。
今後、AIやデジタル技術が普及すればするほど、実体験を通じてしか得られない一次情報の価値は高まります。子ども時代に体と五感を使い、自然という想定外の世界を思い切り体験することが大事です。そんな体験をした子どもは好奇心や探究心のおもむくまま、自分から学びに向かいます。大学生になっても大きく成長します。社会に出てからは自ら課題を見つけ、解決できる人間になることでしょう。
そんな子どもの将来を見据えた教育を実践している本校に興味をもった方は一度、説明会や文化祭、体育祭などを見学にきていただきたいと思います。山のうえにある本校の空気を感じ、生徒の表情を見ていただくことが、栄光学園を理解していただく一番の方法だと思っています。