グローバル化やテクノロジーの進歩など、社会の変化にともない教育のあり方が問われている。
カリキュラムの改革が進むいっぽう、中学高校で大切にすべき教育の本質はいつの時代も変わらないとも言われる。
長い伝統をもち、各界に優秀な人材を送り出してきた関西の名門中高一貫校では今、どのような授業を行っているのか。
灘中学校・灘高等学校を取材した。
灘中学校・灘高等学校
ジェイソン・トムズ教諭
中学の英語の授業はオーソドックスなものですが、授業のやり方や副教材は各先生が工夫されています。ペースはかなり早く、中学2年の5月くらいまでには中学の内容を終えます。基礎学力をつけた後は、英語によるプレゼンやディスカッションにも力をいれています。また本校は各教科の教員7〜8名で担任団をつくり、中学1年から高校3年までの6年間を持ち上がりで担当するのが大きな特色です。英語教育においても6年間をトータルで考え、生徒の成長や学力に応じた指導をすることができるのが強みです。
中学では通常の英語授業に加えて、EC(イングリッシュコミュニケーション)というネイティブ教員による双方向型授業があります。ポエムの暗唱動画や俳句をつくったり、写真を見せてそれについてフリートークをしてもらったり。さまざまな体験を通し、英語をコミュニケーションツールとして使いこなす力を養っています。英語圏では手書きで文章を書くことはほとんどないので、タイピングやITツールの活用にも力を入れています。
英語によるコミュニケーションでは、相手の言葉が完全に聞き取れなくても、わからない単語があっても、相手が何を伝えようとしているのかをつかむことが大事です。ですから私もあえて、生徒が理解できるかどうかは気にせず、ネイティブに話すような自然な英語を遠慮なく使うようにしています。そのうえで必要なときは、日本語で説明を加えています。

スピーキングは失敗を恐れず話すことに尽きます。話そうとして出てこなかった単語を後で調べ、自分のものにすることも大切です。人は失敗したり間違えたりしたことからこそ、多くを学びます。テストでも間違えた箇所を復習する習慣がついている生徒は伸びますね。また英語そのものを学ぶというより、海外の文化やスポーツについて調べるなど、好きなことを追求するために英語を使うといった発想のほうが英語は上達します。
今の時代、英語は外国語というより、二つ目の母国語として使いこなせるくらいになってほしいですね。どんなに翻訳ソフトが発達しても、英語で直接情報を入手できる利点は大きいです。何より海外の映画やテレビを直接楽しめ、世界中の友人と会話できることは、人生を確実に豊かにしてくれます。

「If you can keep your head when……」。6角形の机にグループごとに生徒が座る教室のモニターに、生徒が詩を暗唱する映像が流される。トムズ先生による中学1年生を対象にした「EC」の授業は、そんな風に始まった。この詩はイギリスの詩人、ラドヤード・キプリングの「If」という作品。この授業では英語を通じて海外の文化に触れることを重視しており、この映像はトムズ先生による発音の指導を受けた上で撮影されたものだ。
続いてアメリカの学校でよく実施されている「show&tell」の時間。自分のもちものを一つ選び、どうやって手に入れたのか、その重要性などをエッセーで説明するというものだ。前回、生徒がプリントに手書きで書いたエッセーを、今日はグーグルドキュメントで入力する。まずはトムズ先生が模範例として、4つも持っているというキンドルについて英語で紹介。その後、生徒たちはパソコンを広げ、グループごとに作業を始めた。
ウェブの辞書で文章をブラッシュアップする生徒がいれば、単語の意味に関して議論を始めるグループもある。入力が終わった生徒はタイピングの練習に取り組んでいる。今後は提出された課題をもとに動画を撮影し、パワーポイントのスライドを完成させるという。英語とITツールを使いこなす非常に実践的な授業だ。
