グローバル化やテクノロジーの進歩など、社会の変化にともない教育のあり方が問われている。
カリキュラムの改革が進むいっぽう、中学高校で大切にすべき教育の本質はいつの時代も変わらないとも言われる。
長い伝統をもち、各界に優秀な人材を送り出してきた関西の名門中高一貫校では今、どのような授業を行っているのか。
高槻中学校・高槻高等学校を取材した。
高槻中学校・高槻高等学校
神田宮壱教諭
本校は中学設立を求める地元の人々の思いに応え、大阪高等医学専門学校(現大阪医科薬科大学医学部)の協力のもとで設立されました。もともと大阪医科薬科大学とは縁が深かったのですが、2014年に法人合併し、本校がスーパーサイエンススクールに認可されたことをきっかけに、大学と連携した教育にさらに力を入れることにしました。現在は大学ならではの設備や知見を生かし、科学や医療の最先端を学べる多彩なプログラムを用意しています。
2年生全員が受講する最先端医学教室は、大学医学部の教員や現役の医師から最先端の医学研究について学べる貴重な機会です。大阪医科大学と大阪薬科大学の合併を受け、2018年から中学2年生以上を対象に始めた基礎薬学講座も好評です。その他にも、大学の医療統計室教員が指導するデータサイエンス講座、産婦人科の医師や看護師らによる思春期教室といったものがあります。
最先端医学教室では医師としてのプロ意識や倫理観にも触れ、医師を目指すとはどういうことなのかといったキャリア観の醸成につながっています。基礎薬学講座を受講した生徒からは「これからは薬の成分表示をよく見るようにします」「講義をきっかけに化学や生物学に興味がわきました」などの感想をもらっています。講義後に生徒から募る質問には、大学の先生から丁寧なフィードバックをいただいています。この講座を始めてから、薬学部を目指す生徒が着実に増えています。

日本のこれからの医療や薬学を担う生徒との触れあいは、大学の先生にとっても大きな刺激とやりがいになっているようです。みなさんとても熱心に取り組んでくださっています。とくに中学生向けのプログラムでは、生徒がわかりやすいよう図表や言葉づかいを工夫してくださっていて、ありがたいですね。
まずは大学の医学部や薬学部を目指す動機づけになることを期待しています。医学部や薬学部に進まない生徒にとっても、これらのプログラムは大きな意義があります。例えば基礎薬学講座では、分子式や中学生が初めて聞く専門用語もたくさん登場します。それが生徒の知的好奇心を刺激し、理科系科目を一生懸命学ぶモチベーションになるなら何よりうれしいですね。

「基礎薬学講座」の第3回目、大阪医科薬科大学薬剤学研究室の竹林裕美子先生による「薬の効き目と体内動態〜薬剤師のしごと〜」と題した講義を参観した。階段状の大教室でパワポのスライドを使って行われる70分の授業は、ほとんど大学の講義といった雰囲気。参加者は中学2年、3年が中心で、女子生徒が多い。
まずは自己紹介を兼ねて、竹林先生が自身の経歴を紹介。その後、「薬剤学とは薬物の効果が適切に発揮されるよう投与形態や投与方法を考える薬学部特有の学問です」と語り、講義が始まった。医薬品の様々な形状について解説した後、小腸の細胞膜を通過しにくい薬物の吸収をよくするプロドラッグ化について説明。薬の効き目と血中濃度の関係、一緒に摂取すると薬が効かなくなる飲みあわせの問題、さらに薬を病気の場所に届け、効果を発揮するための「ドラッグデリバリーシステム(DDS)」について解説した。
DDSはコロナのmRNAワクチンにも応用されているとのことで、ワクチン開発への貢献でノーベル賞を受賞したカタリン・カリコさんの経歴や研究も紹介。薬剤学が関わるホットな話題に、生徒も興味津々の様子だ。最後に薬学部メンバーの写真を見せながら研究室の様子を紹介し、「薬学を学んだ人は活躍の場が広く、人のために働けます」と締めくくった。
