社会の変化や複雑化にともない、中学・高校での学びのスタイルも多様化しています。
名門中高一貫校では建学の理念を大切にしながら、時代に即した学びも柔軟に取り入れています。
ここでは名門中高一貫校が6年の学びでどんなことを重視しているのか、3校の校長に聞きました。
フェリス女学院中学校・高等学校
阿部素子さん
[校長]
本校は1870年、米国人宣教師のメアリ‣E‣キダーによって創立されました。まだキリスト教が禁じられており、西洋人が好奇の目で見られていた時代に、「教育機会に恵まれない女子のために」との使命感で彼女は女子教育に身を投じました。
そんな本校では「For Others(他人のために)」を教育モットーに掲げています。神様からいただいた自分の能力を磨き、他者のために用いる。そんな生き方の土台となる力を、この学校で育んでいきたいと思っています。
生徒たちが、「自分は社会でどう生きていくか」を自らに問いかける場を多く用意しています。毎朝の礼拝、聖書の授業、奉仕活動、2泊3日で「友達」や「生きる」をテーマに語り合う修養会などです。高2の春休みには進路や将来の生き方を議論する、「卒業準備の会」も行います。
本校は自由な校風で、生徒の主体性を尊重しています。数年前に導入したスラックスも、ある生徒の問題提起がきっかけでした。生徒たちから意見が寄せられ、学校でも検討を進めて実現にいたりました。
本校には自分の意見を持ち、躊躇せず皆の前で話せる生徒が多いと感じます。異なる意見が尊重される風土があります。先日参加した修養会でも、最終日の全体会では180人の前で手を挙げて自分の考えを自由に話す生徒が後を絶ちませんでした。また、6歳離れた生徒が部活や学校行事をともにするなかで、年少者に配慮し、全体を見渡して運営する習慣が身につきます。このようなコミュニケーション能力やリーダーシップは、多様な価値観を持つ人と協力し、物事を進めていくこれからの時代に大切な力です。
生徒に幅広い教養を身につけさせたいと考えています。自分の個性や才能を他者のために役立てるには、学ぶ範囲や深さに限界をもうけてはいけません。
授業では実験、観察、研究レポート、小論文、プレゼンやディスカッションを多く取り入れています。「戦争と平和」をテーマにした高2の選択科目「社会特別講座」では、大学のゼミのように自分で問いを立て、調べ、発表し、1万2千字の論文を書きます。この講座を通して進路決定にいたる生徒も多く、「原点は社特」という卒業生が何人もいます。また、新設した「教養科」の授業では、地元の企業と共同で新商品を開発するというプロジェクト型学習を実施しました。プロジェクトを進める過程で、失敗を恐れず前に踏み出す力、疑問を持ち粘り強く考え抜く力、異なる考えを持つ多様な人と目標に向けて協力する力などが養われます。
一方で、自由な思考の世界に羽ばたくためには土台を築く地道な学習が必要です。英語や数学のような積み上げが大切な教科では、日々のトレーニングを大切にしています。英語は、音声を伴う学習を重視し、発音・単語・文法を習得するためにICTも効果的に活用しています。今年度の中1ではELSA Speakを導入しました。家庭学習を含めた「学び方」から教え、「自律した学習者」の育成をめざしています。
社会の様々な他者に目を向け、思考し続け、自分ができることを見つけて取り組める、そのような生徒を育てたいです。中学・高校時代には、失敗や挫折を経験しながら成長していきます。安心して居心地のいい場所で、多くの経験をしてほしい。同時に、私たち大人も学び続け、成長し続けることが大切だと感じています。