関西屈指の名門中高一貫校、甲陽・四天王寺・洛星。
最難関大学への進学率もトップクラスの3校では、実際どのような授業が展開されているのか?
先生たちはどのような工夫をしているのか?
名門校の授業・先生のインタビューから、中学受験後の学びの本質を探った。
甲陽学院中学校
大川貴史先生
[副校長]理科担当
授業をうのみにするのではなく、教わったことから「面白いな」「不思議だな」と感じ、自ら学ぶ。それが本質的な学びだと本校では考えています。演習を繰り返す勉強には答えが一つしかありませんが、社会に出れば答えが一つということはまずありません。ですから若いうちに、自ら学び、様々な可能性を探る習慣を身につけることが大切なのです。
特別な入試対策などはしていません。テストで点数がとれる人間よりも、世の中のあらゆる事象に疑問を持ち、自分で学べる人間を育てたいからです。
理科に関していえば、中学に入った段階から授業を物理・化学・生物に分けて、それぞれの教師が各自で教材を作ります。独自のカリキュラムなので他校とは進み具合が違いますが、本質的な学びから得るものは、大学受験にも、その先の人生にも生かされるはずです。
例をあげると、本校では中学1年で元素や原子について教えますが、その際に「人類はいつ頃このような考えを持つようになったのか」という話を織り交ぜます。入試には関係ない話ですが、そこから科学の面白さを感じ取り、学びの機会を得る生徒もいます。

「学び」という言葉は「まねび」とも読みます。つまりまねをすることが学びの根底にあるのだと思います。経験することで得られる知識を経験知といいますが、人のまねから始まって経験をどんどん蓄えることが学びの出発点だと私は考えます。
また、子どものときに失敗を経験しないと、大人になって失敗したときに立ち直れません。今のうちに、興味を持ったことにはどんどん挑戦して、ときには失敗を重ねて経験知を増やし、本質的な学びの機会を得てほしいですね。
受験生の皆さんは、自分の考えをきちんと伝える表現力を伸ばすために、「まず書いてみる」ことを大切にしてください。また、勉強においては答えに至るまでの過程を大切にしてください。
保護者の方は、受験が子どものプレッシャーにならないよう、心にゆとりを持ち、健康に過ごせる環境を整えてください。また、スポーツでも習い事でも、一緒に楽しんでください。親が一緒に楽しみ対話することで、自己表現の豊かさが育まれます。この点で、親の責任は重大なのです。
甲陽学院中学校の特徴として、教科ごとの特別教室が充実していることが挙げられる。理科の実験室だけでも、高校とは別に生物・化学・物理と三つの特別教室があり、ほかにも社会の教室が二つ、音楽の教室が二つ、さらには大学の教室のようにすり鉢状になった階段教室も備えている。
大川副校長はこの日、階段教室で2年生の化学の授業を行っていた。化学反応の説明の合間に試験管を手に取り、薬品を入れて振る。すると薬品の色がたちまち変わる。授業を受ける生徒が試験管に向ける視線は真剣そのものだ。教わった事象がすぐ目の前で起こる面白さは、生徒たちの好奇心をつかんで離さない。
また、生物実験室では1年生がカエルの解剖を行っていたが、「気持ちわる!」「わあ、動いた!」と、素直に驚きの声をあげる生徒たちの明るい表情がとても印象的だった。生徒たちが授業中に見せるあのまなざしと表情こそ、五感から得る学びの本質なのだろう。
「生徒の疑問に対し、安易に答えは教えないが、自分で考えられるように真剣に応える。本校の先生はそのための努力を惜しみません」と話す大川副校長の言葉からは、学ぶ楽しさを伝える甲陽学院の教師も、生徒の疑問と向き合うことに心から喜びを感じていることがにじみ出ていた。