関西屈指の名門中高一貫校、甲陽・四天王寺・洛星。
最難関大学への進学率もトップクラスの3校では、実際どのような授業が展開されているのか?
先生たちはどのような工夫をしているのか?
名門校の授業・先生のインタビューから、中学受験後の学びの本質を探った。
四天王寺中学校・高等学校
綱 瑞恵先生
[中学3年学年主任]国語担当
知らないことを見つけたら調べる、ということを徹底しているので、敏感に反応したのかもしれません。疑問点を放っておくと、どんどんわからなくなっていきますから。生徒全員に「知らないことを調べる」のを習慣づけてもらうために、定期テストの問題にも工夫をしていて、コツコツ勉強している生徒が「ちゃんと勉強していてよかったな」と思えるようにしています。
参加型にしないと授業が面白くないし、当てられることを前提にすると生徒もよく勉強してきます。なるべく楽しく学んでほしいので、例文をあげる際には必ず出典や物語の背景をセットで教えています。授業をきっかけに古典に興味を持つ生徒もいますね。
この前の授業では『大鏡』を取り上げました。菅原道真が左遷され、最後は御霊になる箇所です。読み解くのは難しいのですが、ストーリー性があるので生徒も楽しんでいました。

そうですね。古文の場合は外国語のように感じてつまずく生徒もいるので、まずは中学3年から原文をノートに書き写し、現代語訳させる宿題を出します。これはなかなか大変な作業ですが、ある程度内容がわかるレベルに達すると、面白くなって読みたくなる。だから、まず慣れることが大切です。
実際、生徒は「難しい、難しい」といいながら宿題をやっていますが、本人たちも気づかないうちに、実はすごく高いレベルに達しています。『大鏡』なんて、本来は高校2年生のレベルですから。
ありますね。生徒には常に「絶対できるから」といい聞かせていますが、みんなそれを素直に受け止めてコツコツ取り組んでくれる。そうして「読める・わかる・できる」が実績になると、今度は「面白い」につながります。このサイクルを築くためには、お互いの信頼関係が欠かせません。
理系でも文系でも、勉強は文章の読み取りから始まります。ですから語彙(ごい)力を磨いてください。そのためには美しい文章を読んでください。具体的には戦前、つまり1945年より前に生まれた作家の作品に触れてみてください。
勉強には体力も必要なので、運動もして、よく寝て、機嫌よく過ごしてくださいね。
綱先生の授業にはスピード感がある。この日行われたのは古文の文法の授業だが、先生が板書した文章の単語に線を引き、次々に生徒を当てると、生徒たちはすらすらと答えを書いていく。先生が「伊勢物語の主人公は誰ですか?」と問いかければ、全員が「在原業平」と声をそろえて答える。
特筆すべきは、ハイレベルな内容の授業が、終始和やかに行われていたことだ。先生の口から「たぬきのけつ」と連用形接続の語呂合わせが出ると、教室内にはクスクスと笑い声が漏れる。疑問があれば挙手するでもなく先生に問いかける。自発的に、ノートに古文の現代語訳を書いている生徒もいる。とてもオープンな雰囲気で、そこには競争型の勉強にありがちな殺伐とした空気が一切ない。
同校の医学部合格者数は全国トップクラス。医志コースも設けられているが、全員に医学部進学を推奨しているわけではない。むしろ稲葉良一校長をはじめ教師全員が、生徒がジェンダーにとらわれることなく、なりたい自分になることを応援しているという。90年以上の歴史のなかで培われた「先輩におのずと学ぶ」という校風からか、生徒たちは誰にいわれるでもなく、自然と自主性を重んじることを身につけて学校生活を送っている。のびのび学び、はじける笑顔で遊ぶ彼女たちは自由そのものだった。