学びの選択 2025
神戸女学院中学部・高等学部
森谷 典史部長
各界で活躍する卒業生を送り出している中高一貫名門校では、どのような教育を行っているのか。生徒たちはどのような学校生活を過ごしているのか。 関西を代表する名門女子校、神戸女学院中学部・高等学部の森谷典史部長に話を聞きました。
真面目で何ごとにも一生懸命な生徒が多いですね。本校には、一生懸命頑張っている人をみんなで応援する文化があります。そんな環境にいると、最初は引っ込み思案だったり、恥ずかしがり屋だったりする生徒も、どんどん積極的になっていきます。
「愛神愛隣」をモットーに、キリスト教に基づく全人教育に力を入れています。社会や他の人のために何ができるか、次世代にどんなことを残せるかを考え、行動できる人間を育てたいと考えています。「自分ファースト」「自国ファースト」の考え方だけではない本校の教育理念は、ますます重要性を増していると思います。
毎朝、教師や牧師、先輩らの話を聞き、自分は人生で何をしたいのか、何をするべきなのかと生徒は自らに問いかけ、考えます。そのうえで学校行事や部活など様々な場面で多様な人と関わるなかで、自分は何が得意で何がしたいのかといったアイデンティティが確立されていきます。そうやって自分なりのミッションをもった子は、教員が放っておいても勉強を頑張ります。社会に出て困難に直面しても、諦めずに道を切り開いていける大人に育っていくのです。
人間というものは一人ひとり、神様から与えられたすばらしい才能や特質をもっています。それを存分に伸ばせるよう、触発の場をつくることこそが教員の役割です。とくに本校は優秀な先輩やOGなど、身近に優れたロールモデルがたくさんいます。本校の生徒は部活や行事、講演会などでの先輩やOGとの交流を通し、「自分もあの人のようになりたい」といった強い思いをもつようになります。それが勉強や部活、行事に一生懸命取り組む最大のモチベーションになるのです。
「自治と自由」を重んじる本校では、体育祭や文化祭、讃美歌コンクール、J1デイキャンプ(入学式前に新入生を対象に行うオリエンテーション)などの行事は、企画から運営まですべて生徒が主体となって行います。一般的に進学校では行事のリーダーは高2が担いますが、本校では高3がリーダーを務めます。はるかに年の離れた先輩と活動するなかで中学生、とくに1年生が大きく成長していきます。
現代社会が抱える複雑な課題は、多様な人が協力しなくては解決できません。何でも自分でやろうとせず、他人と協力したり、他人を信じてまかせたりすることも大事です。本校では年の離れた先輩と学校行事などに取り組むなか、生徒は時に自分の無力さを知り、先輩に頼ること、人の力を借りることの大切さを体得します。
本校は難関大学に合格することを教育目標に掲げていないため、進学先は公表していません。ただここ2年間の生徒の進路は理系3割、医学部4割、文科系と芸術系、海外大を合わせたその他が3割です。薬学や歯学、看護を含めた医療系が45%を占めています。医療関係者が多いのは、人の命を守り、直接人を助けられる仕事にやりがいを感じること、女性が活躍しやすいといった面が大きいのでしょう。最近は医師から宇宙飛行士になったり、東大で宇宙の研究に取り組んだり、宇宙建築開発の研究をしたり、本格的な理系分野で活躍している卒業生も多くいます。
本校では、宣教師であり英語教員であったアンジー・クルー先生が、オーラルメソッドをきめ細かに発展させたクルーメソッドという、赤ん坊が母語を覚える過程を再現するような英語教育を行なっています。まずは発音を徹底的に指導し、中学の授業は原則として日本語を使いません。歌やゲーム、劇や暗唱などの参加型の授業により、臆せず英語を話す姿勢と能力を育みます。中学3年間で高校卒業までに学習すべき文法を習得したうえで、日本語に置き換えずに英語で考え、コミュニケーションできる力を養います。高校卒業時には英語で議論できるレベルを目指しています。本校の多くの卒業生が世界で活躍しているのも、6年間で英語を道具として使いこなす力を身につけているからだと思います。最近は海外の大学に直接進学したり、日本の大学に進学したうえで交換留学制度で海外の大学で学んだりする卒業生も増えています。海外の大学を目指す生徒への指導も手厚く行なっています。
理科の授業は実験、観察が中心です。授業内容は各先生におまかせし、生徒の知的好奇心を引き出す工夫を行なっています。最近は地学同好会が盛り上がっており、地学オリンピックのアジア大会に生徒が参加しています。探究学習は中1では本を中心にした調べ学習をし、基本的な研究のスタイルを習得します。中2ではSDGsなどの与えられたテーマで、高1では自分が選んだ自由なテーマで研究し、研究成果を発表します。生徒らの研究内容は年々、レベルアップしているのを感じます。
文化遺産に指定されている本校のキャンパスは「真に芸術的な建築、学習空間は優れた人格を形成する」との理念のもと、ウィリアム・メレル・ヴォーリズが設計したものです。本校を訪れた方からはよく「ここだけゆったりした時間が流れていますね」と言われます。でも実は本校の勉強の速度はむしろ早いんです。数学などは高1で高校の全カリキュラムを終了します。その速度に早く慣れてもらい、つまずかないためにも、中学では各教科、丁寧なフォローを行なっています。
単なる知識ではなく、自分の頭で考える力を見ているため、問題はかなり高度です。ただ考える力も結局は、基礎学力の積み重ねの上にあります。入試ではある意味、努力を継続できる力を見ています。受験を勝ち抜いて本校に入学してきた子どもは、みんなそのような力をもっています。またこれからのリーダーには未知なこと、みんなが躊躇することにも「私がやります」と一歩踏み出せる勇気や決断力も大事です。
大学受験のため、医学部進学率が高いからとの理由だけで本校を選ぶことはやめていただいたほうが良いと思います。大学は人生における通過点に過ぎません。とくにこれからの社会は変化が激しいため、どんな状況になっても未来を切り開いていける基礎的な人間性を、中学・高校時代に磨いておくことが大事です。本校の6年間は同級生や先輩後輩とともに色んなことに挑戦し、自分が人生をかけてやりたいことを見つけるための時間です。学校見学会や文化祭を訪れ、お子さんが本校を気にいってくれたなら、ぜひ挑戦してほしいと思います。