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中学受験 SAPIX 小学部

変化が激しいグローバル時代
中学・高校で何を学ぶべきなのか

髙宮敏郎

SAPIX YOZEMI GROUP
共同代表・教育学博士

伊藤公平

慶應義塾長
グローバル化が進み、変化の激しい今の時代、中学・高校で何を学ぶべきなのか。どんな力を身につけるべきなのか。そもそもいい学校とはどんな学校なのか。慶應義塾長の伊藤公平さんに聞きました。

通った学校の良さは
卒業後にこそわかる

写真:髙宮敏郎
写真:伊藤公平

「何のための学びか」
今こそ考えてほしい

変化の時代こそ普遍的な学力を

髙宮  昨年夏、 甲子園で慶應義塾高校野球部を応援する卒業生の姿を見て、いい学校とはそこで学んだ者の愛校心が強い学校ではないかと思いました。

伊藤  確かに慶應の卒業生は愛校心や絆が強く、社会に出てからもみんなで支えあっています。学校を評価する基準は様々ありますが、結局は卒業して時間が経つほど「あの学校に行って良かった」と思える学校が、その人にとって一番いい学校だと思います。

髙宮  私の経験からも、通った学校の良さは卒業後にこそわかるものだと思います。また通った学校がいい学校だったかどうかは主観的な要素もあり、共通の物差しで計れるものではありません。昨今の学校を指標化、ランキング化する風潮により、学校が均質化することを危惧しています。

伊藤  よくわかります。ですから慶應は、目先の指標の向上だけを闇雲に追うことはしません。それより日本や世界の未来といった長期的な展望のもと、自分たちは教育・研究機関として何をすべきかを自らに問い、我々にしかできない価値を社会に提供することを考え、行動しています。それは福澤諭吉先生が慶應義塾を創設した時代から変わらぬ、私どもの信念です。

髙宮  中学・高校時代の学びも、卒業後の長い人生を充実させるうえで必要な力をいかに育むかといった、長期的な視点で考える必要がありますね。

伊藤  今のお子さんが社会に出る頃は転職が当たり前になり、企業が組織的に新入社員をトレーニングすることは難しくなるでしょう。世の中の変化や技術の進化はさらに激しくなり、生涯を通じて自分で勉強し、新しいことをキャッチアップしていかなくてはなりません。そのための基礎学力や考え抜く力を、中学から大学で養う必要があります。

髙宮  今の子どもが活躍する時代は、AIの普及で仕事や職種も現在とは大きく変わっている可能性があります。中学・高校では、時代に左右されない普遍的な力を身につけさせることが、ますます大事になるのではないでしょうか。

伊藤  私も中学・高校で学ぶべきこと、身につけるべき力は、昔も今もほとんど変わっていないと思います。ただ、今の若者は活字よりSNSや動画による情報収集が中心となっていて、長い文章を読み切る力が弱まっています。それではものごとを断片的にしか把握できず、短絡的な思考しかできません。これからの時代、複雑なものごとを俯瞰(ふかん)し、トータルでとらえ、考え抜く力が不可欠です。よって、今の若者には長い文章を読み、自分の考えをまとめ、ある程度の量の文章にする力をぜひ身につけてほしいですね。

AI時代こそ人間力が大事に

髙宮  今の子どもが長い文章を読めないのは、効率を重視し、正解をすぐに求めたがる社会の風潮も影響しているのではないでしょうか。

伊藤  そうですね。でも教育や研究の世界は、効率を追求すればパフォーマンスが上がるものでもありません。効率だけ考えれば授業はすべてオンラインで良いのですが、対面授業でしか伝わらないものは確実にあります。一見、無駄に思える授業中の脱線や放課後の雑談が、生徒の知的好奇心やモチベーションに火をつけることも多いのです。

髙宮  コロナ禍を経て改めて、学校というリアルな空間に生徒や先生が集まることの価値が見直されました。

伊藤  AIや科学技術が発達すればするほど、リーダーシップやコミュニケーション能力などの人間力が重要になります。中学・高校時代に先輩後輩、先生との人間関係でもまれる体験がますます大事になるでしょう。

髙宮  各界にリーダーを送り出している名門校ほど、勉強だけでなく部活や学校行事に力を入れていますよね。また自由な校風のもと、学校生活はどうあるべきか、自分は何をすべきかを生徒が主体的に考える風土が根づいています。

伊藤  それこそが「独立自尊」の精神ですね。日本の若者の学力は国際的に低くないものの、「自分の行動で国や社会が変えられる」「国や社会に役立つことをしたい」という意識が極めて低いとの調査結果があります。学問は本来、国や社会を良くするためのものです。福澤先生も学問は立身出世のためでなく、社会の発展のために役立ててこそ意味があると『学問のすゝめ』に書かれています。第二の開国期ともいえるグローバル社会を生き抜く日本の若者には、今こそ「自分は何のために学ぶのか」を考えてほしいですね。

いとう・こうへい/1965年生まれ。慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業。カリフォルニア大学バークレー校M.S. in Engineering-Materials Science and Engineering修了。同校Ph.D.取得。慶應義塾大学理工学部長などを経て、2021年から現職。専門は固体物理、量子コンピュータ、電子材料、ナノテクノロジー、半導体同位体工学。 たかみや・としろう/1974年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年4月、学校法人高宮学園代々木ゼミナールに入職。同年9月から米国ペンシルベニア大学に留学、教育学博士号(大学経営)取得。同学園の財務統括責任者を経て、09年から現職。代々木ゼミナール副理事を兼務。
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