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中学受験 SAPIX 小学部

新春特別教育鼎談日本の未来を
つくる教育は、
社会のみんなで担うもの

髙宮信乃

SAPIX YOZEMI
GROUP
国際教育事業本部長
高宮学園
代々木ゼミナール評議員

伊藤公平

慶應義塾長

髙宮敏郎

SAPIX YOZEMI
GROUP
共同代表
教育学博士
少子化により18歳人口が大幅に減り、グローバル競争が激化するなか、日本の大学、教育に大きな改革が迫られています。とりわけ日本の高等教育は、これからどうあるべきなのか。大胆な提言をされている慶應義塾長の伊藤公平さんと、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮夫妻が語りあいました。

大学院での学びを高等教育の標準に

髙宮(敏) 伊藤塾長は高等教育のあり方について、抜本的な改革を提案されています。なかでも大学院の強化、重要性を訴えられています。

伊藤  私が大学に入学した40年前の大学進学率は25%ほど。4人に 1人しか大学に行かなかったからこそ、大学が高等教育と言えたのです。ところが今や、4年制大学への進学率は57%。もはや大学は義務教育の延長になりつつあります。世界的に見ても高等教育は、大学院で行うものとの考えが今では一般的です。海外での大卒者は、日本の高卒者に近い感覚です。

髙宮(信) アメリカの大学では、一般教養を中心に学びます。専門性を高める高等教育は、ビジネススクールやロースクールなどの大学院が担っていますね。

髙宮(敏) ヨーロッパの大学生は学部に3年、大学院に2年在籍し、5年間で修士号を取るのが標準です。

伊藤  それに対して日本の大学生の多くは3年生から就職活動を始めるため、文系の場合は2年間しかまともに勉強していません。これだけ大学生の勉強量に世界と差があれば、日本の国力が落ちて当然です。日本はこれから高等教育のカリキュラムを抜本的に改革し、修士号や博士号の取得を標準にしなくてはなりません。

髙宮(敏) 修士や博士への待遇改善をはじめ、大卒採用における日本企業の意識改革も必要ですね。

伊藤  学問とは新しい価値を生み出し、社会をより良くするための営みであり、イノベーションの源です。それにも関わらず、日本で就職活動をした留学生が「大学で何を学んだかを面接でほとんど聞かれなかった」と驚いていました。

髙宮(信) 面接で「ガクチカ(学生時代に最も力を入れたこと)は何か?」を聞かれることは、海外の学生にはものすごい違和感があると思います。大学時代に一番力を入れることは、勉強に決まっているからです(笑)。

髙宮(敏) いずれにしろ大学進学がいい会社に入るための手段だった時代は、もはや終わりつつあります。

伊藤  今は転職が当たり前です。新卒でいい会社に入ることより、自分が生涯かけて学ぶ専門性の土台を大学で培うことのほうが大事です。

写真:伊藤公平 いとう・こうへい / 1965年生まれ。慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業。カリフォルニア大学バークレー校 M.S.in Engineering-Materials Science and Engineering修了。同校 Ph.D. 取得。慶應義塾大学理工学部長などを経て、2021年から現職。専門は固体物理、量子コンピュータ、電子材料。

友との切磋琢磨で人間性が磨かれる

髙宮(敏) 今後、AIの普及によって社会の効率化が進むほど、志や人間性といったものが大事になってくると思います。伊藤塾長が以前におっしゃっていた「祝福された勝者」という言葉の重要性を痛感します。

伊藤  「義塾」には英国のパブリックスクールの意味もあり、公共の発展に尽くす志の高い若者が集まる場です。自分の幸せだけを追求するのではなく、困難にひるまず新しいことに挑戦し、より良い社会へ先導していくことが塾生の使命です。社会は一人では変えられません。「この人と一緒に社会を良くしていきたい」「この人なら応援したい」と思ってもらえる人間性が何より大事です。

髙宮(敏) 今、敵を徹底的に叩き、自分たちさえ良ければいいといった風潮が世界的に蔓延しています。慶應の体育会でも重視している「インテグリティ(誠実、真摯、高潔)」がますます大事なのではないでしょうか。

伊藤  慶應は伝統的にスポーツに力を入れていますが、1962年に小泉信三元塾長が「スポーツが与える三つの宝」という有名な講演を行っています。三つの宝とは「練習によって不可能を可能にする体験」「フェアプレーの精神」「生涯の友を得ること」です。ちなみに早稲田と慶應は早慶戦では激しく戦いますが、学校同士の仲はとても良いんです。大隈重信と福澤諭吉はもともと盟友ですからね。

髙宮(敏) ライバルがいるからこそ成長できるという点は、勉強や仕事などすべてに言えることですね。

髙宮(信) SAPIX YOZEMI GROUPでは海外名門ボーディングスクール(寄宿学校)への進学支援も行っていますが、最近は希望者がとても増えています。その魅力も、寄宿生活をしながら良き学友と切磋琢磨し、人間的に大きく成長できる点にあります。

写真:髙宮敏郎 たかみや・としろう / 1974年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て2000年4月、学校法人高宮学園代々木ゼミナールに入職。同年9月から米国ペンシルベニア大学に留学、教育学博士号(大学経営)取得。2009年より現職。

より良い社会を次世代に残すために

伊藤  慶應の一貫教育校からも、名門ボーディングスクールに生徒を派遣しています。若いうちに世界を知り、海外の子どもたちと交流する体験はとても貴重です。

髙宮(信) 名門ボーディングスクールというと、経済的に恵まれた方しか行けない印象があるかもしれません。でも実は多くの学校や財団が充実した奨学金を用意しています。ただ、そのことがあまり一般に伝わっていないんです。

伊藤  日本はまだまだ欧米より中間層の厚い社会です。よって社会を支えるボリュームゾーンの底上げが重要です。福澤諭吉先生も「社会を変え、イノベーションを起こせるのは既得権益をもつ上流階級ではなく、中産階級だ」と言っています。そういった意味でも親の経済状況に関わらず、誰もが高度な教育を受けられる助成制度、アクセス保障が大事です。

髙宮(敏) 伊藤塾長はマイナンバーを利用することで、経済状況に応じて「あなたのお子さんの大学進学のために30万円補助します」などと国から通知するプッシュ型助成制度を提案されていますね。

髙宮(信) 私自身の経験からも、日本社会は子育てや教育を個々の親に任せすぎている気がします。欧米のように「未来を担う子どもは社会全体で育てるもの」との認識が定着すれば、子どもも親もみんなもっと幸せになれるのではないでしょうか。

伊藤  人は社会的な生き物です。人が生きる意味は、より良い社会を次世代に残すこと。そう考えると、教育ほど大事なものはありません。教育と無関係な人はいません。教育について考えることは、私たちの未来を考えること。教育関係者や親だけでなく、すべての人に、日本の教育のこれからをぜひ考えていただきたいですね。

写真:髙宮信乃 たかみや・しの/1978年生まれ。幼少期をイスラマバード、香港、ジャカルタ、ワシントンDC、ハルツーム(スーダン)、キャンベラなどで過ごし、ニューヨークの高校・大学を卒業。外資系金融機関での勤務などを経て現職。グループの国際教育部門を統括する。三児の母。

●海外の高校・大学への進学をサポートするY-SAPIX Global Campus(YGC)のサイトはこちら
https://ygc.y-sapix.com/

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