髙宮敏郎
SAPIX YOZEMI野水勉
開成中学校・高等学校
髙宮 近年、教育や金融、法律などとITを融合させた分野で起業し、活躍している卒業生が多いですね。
野水 アメリカの大学に直接進学して現地で自動運転の会社を立ち上げたり、スーパーコンピュータやAI開発の最先端で活躍していたりする者もいます。
髙宮 御校OBの起業家は出資やM&Aなどで、互いに支え合っているケースも多いようです。
野水 同じ学園で6年間学んだことが、信頼関係につながっているようですね。
髙宮 名門中高一貫校の最大の魅力は、そんな風に卒業後も続くコミュニティーにこそあると思います。中学高校は大学より人数が少ない分、OBとの絆も濃厚です。
野水 各界で活躍している卒業生に来校してもらい、業界や仕事の最前線の話をしてもらう機会もたくさん設けています。
髙宮 中学高校時代に身近なロールモデルから刺激を得ることはとても大事ですね。
野水 本校には、卒業生全員を対象にした同窓会の他に会社や職種、地域で自主的に立ち上げられた会が200〜300もあります。海外にもニューヨークやロンドンなど地域ごとの同窓会があり、卒業生が留学の相談にのってくれたりしています。
髙宮 それは心強いですね。開成の卒業生にはピアニストの角野隼斗さんをはじめ、ギタリスト、ダンサーなど芸術分野で活躍している方も多いですよね。
野水 勉強だけでなく、一芸に秀でる者を尊重する文化が本校にはあります。受験に関係ない音楽や美術の授業にも力を入れています。
自由な学園生活の経験が
起業家精神を培う
自分の興味関心を
とことん追求してほしい
髙宮 欧米のエリートを育成するボーディングスクールでも、芸術分野の授業を重視しています。その理由の一つは、子どもはどんな才能をもっているかわからないから早い段階で色々なことにチャレンジさせるべきとの考えから。もう一つは、リーダーには人を動かすための表現力が必要だとの考えからのようです。
野水 よくわかります。本校では運動会や文化祭、学年旅行なども生徒に企画や運営を任せています。そのような行事を通して、企画力や多様な意見をまとめる調整力などのソーシャルスキルが培われていくのです。
髙宮 その経験が卒業後、社会でのリーダーシップにつながっていくわけですね。今や多くの学校で廃止されている運動会での「棒倒し」が存続しているのも、開成らしいと思います。
野水 かつてけが人が出て教員側は中止を決めたのですが、これに反発した生徒が生徒会を発足させ、生徒会主催で運動会が開催されることになったんです。その後も大きな怪我が起こる度に廃止の声があがりましたが、生徒たちが対策を考え、ルールを改正しながら、いまだに伝統として続いているのです。
髙宮 自由な校風の中、課題があっても自分たちで解決していく。そのような経験が起業家精神につながっているのだと思います。開成ではサッカーや野球、水泳などスポーツ部で活躍する生徒も多いし、文化系の部活も盛んです。物理や生物、数学などの国際オリンピックで活躍する生徒も多いですね。
野水 最近では自動運転ロボコンの世界大会で本校のチームが3位を獲得しました。本校の折り紙研究部はとても有名ですが、開成の生徒が主体となって日本中高生折り紙連盟まで発足させました。
髙宮 自分の興味をとことん突き詰め、周りを巻き込んでいくところが開成の生徒らしいです。
野水 既存の知識を扱うことが得意なAIの時代にこそ、卒業生には従来の枠組みを超える新しい挑戦をしてほしい。今の世界にはないものを創造し、未来の社会を自分たちでつくりあげていってほしいと願っています。
髙宮 私は多感な中高時代に、多くの生徒に海外体験をしてほしいと思っています。でも先日、ある名門男子校の保護者が「うちの子は学校生活が楽しすぎるようで留学したがらない」と嘆いていました(笑)。開成ではいかがですか。
野水 本校の生徒も学園生活を思い切り楽しんでいますが、留学には意欲的です。海外大学や高校等に1か月近く短期留学する「海外サマースクール」には、2025年は80人が参加しました。参加者の大半は中3と高1です。この年代で留学すると勉強への意欲や向上心が高まり、その後の成長が違うんです。海外大学への直接入学を希望する生徒には、ネイティブの留学アドバイザーが奨学金のことも含めて丁寧にサポートしています。
髙宮 すばらしい環境ですね。英語の授業はどのような感じで行っているのですか。
野水 各先生が工夫をこらし、クイズ形式で生徒を当てるなど、インタラクティブ性を重視しています。中2の3学期に、生徒が一人ひとり3分間、自由課題を原稿なしで英語のスピーチをし、それを他の生徒が評価する授業を行った例もあります。中3では希望者を対象に1日英語で講義を聞いたり、ディスカッションをしたりする英語学校を実施します。ネイティブの先生は8名在籍しています。
髙宮 先生は開成中学への進学を目指すお子さんには、どんな小学生時代を過ごしてほしいですか。
野水 子どもは自分が興味をもち、突き詰めたいと思えば自ら学ぶものです。教育とは本来、そんな子どもの主体的な学びをサポートするものです。ですから小学生時代は自然のなかで思い切り遊んだり、博物館や美術館などに出かけたりして、好奇心や探究心を育んでほしいですね。
髙宮 開成にはそのような子ども時代を過ごした生徒が多いと思います。ちなみに私の父は英文学者だったので、神田の古本屋によく連れて行ってくれました。博物館に連れて行ってもらった記憶はないので、父は単に自分が好きな場所に私を連れて行っていただけなのだと思いますが……。
野水 それでいいと思います(笑)。
髙宮 もし父が科学館に連れて行ってくれていたら、私は宇宙物理学者になっていた可能性もあるのですが……(笑)。それほど子どもの頃の体験というものは重要だと思います。
野水 私も小学校低学年の時に親に化学の実験セットを買ってもらい、夢中で遊んでいたことが、化学の道に進むことにつながりました。先日、本校で講演していただいた、大学で生物学の研究をしているある卒業生は、子どもの頃の虫好きが今の研究につながっていると言います。本校の教員は、自分の興味関心をとことん追求する研究者タイプが多いですね。
髙宮 そんな先生からも影響を受け、自分の興味関心を伸ばし、社会で新しい道を切り開く人材に育っていくのですね。これからも御校の卒業生の活躍を楽しみにしています。