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中学受験 SAPIX 小学部

数値化できない能力が新しい価値を生み出す

髙宮敏郎

SAPIX YOZEMI
GROUP
共同代表
教育学博士

田中雄二郎

東京科学大学
学長
AIの進化で知識を得ることの価値が変わりつつある今、大学の役割とは。子どもたちは中学・高校でどんな力をつけるべきなのか。東京医科歯科大学と東京工業大学の統合で誕生した、東京科学大学の田中雄二郎学長に聞きました。

AI時代における大学の役割とは

髙宮 2つの大学が統合して、学生さんの様子はいかがですか。

田中 大岡山キャンパスでのグループディスカッションは、多様な意見が飛び交い、とても盛り上がっています。新しい知を生むには、医歯学系と理工学系のような異なる価値観の対話が重要です。これまで交流することがなかった多様な学生が、将来の友人になることを期待しています。

髙宮 世界のトップレベルと戦える大学を目指して国が大規模な助成金で支援する、国際卓越研究大学にも認定されました。

田中 医歯学系と理工学系が融合したことで、産学連携やイノベーティブな研究もさらに進むと考えています。すでに宇宙の生活空間での医療をテーマにした整形外科教授の研究が、宇宙戦略基金事業に採択され、話題を呼びました。

髙宮 AIの進歩で社会が大きく変化し、不確実性が増すこれからの時代、大学はどのような役割を果たすべきだとお考えですか。

田中 AIは情報の整理や分析は得意ですが、自ら問いを立て、0から1を生み出すことは苦手です。新しい価値を生み出すうえでは、ひらめきや勘のような数値化できない能力、人間ならではの倫理観や大局観が大事です。これらは長い人類の歴史のなかで培われてきた叡智(えいち)、つまり幅広い教養を学び、社会で数多くの経験をすることで養われます。大学は学生が対話や討論、実習を通して知性を磨く術を身につけ、生涯を通じて学び続けるための土台をつくる場だと考えています。

中学高校時代の経験こそが武器に

写真:髙宮敏郎
写真:田中雄二郎

学びの基礎を築き何ごとにも挑戦を

中学高校では何をするべきか

髙宮 AIは何を聞いてもそれなりの答えを出してくれます。でも経験に基づいた言葉ではないので、人を感動させたり、動かしたりする力が弱い。よってAI時代は、その人ならではの経験が武器になる。そういった意味では、中学高校では勉強はもちろん、部活や行事などに一生懸命取り組み、幅広い経験をしたほうが良いのではないかと思います。

田中 どんなにAIが進化しても、中学高校で学ぶ基礎学力は大事です。ある程度の暗記も必要でしょう。現代人が移動に車を使うようになったからといって、走ることをやめていないのと同じです。車ばかり使っていると足腰が弱るので、みなさんジムで一生懸命走っていますよね。

髙宮 若いうちからAIに頼りすぎると、暗記をしたり、物ごとを考えたりする力が衰えるのではないかと危惧しています。基礎的な勉強を地道に継続した人間と、そうでない人間との差が今後、大きく開いていく気がします。

田中 もう一つ、異なる考えを持つ人との対話が大事だと言っても、大学に入学して急にできるものでもありません。中学高校時代に相手の意見を聞き、人と異なる自分の意見をきちんと相手に伝える力を、できるだけ身につけておいてほしい。そのためには、学校において心理的安全性が確保されている必要があります。

髙宮 名門中高が生徒の自主性を重視し、自由な校風なのはそのためですね。先生が学ばれた麻布中高も自由な校風で有名です。一番良かったのはどんな点ですか。

田中 優秀で個性的な仲間と出会えたことですね。学友が現在、社会の様々な分野で活躍していて、お互い助け合えたりすることはありがたいです。もう一つ良かったのが、素晴らしい先生との出会い。音楽の先生だった芸大教授からは、世間の評価を鵜呑(うの)みにせず、自分の感性を信じることの大切さを教わりました。

髙宮 中学受験に向けて頑張っている子どもたちへ、アドバイスをお願いします。

田中 どんな勉強法なら成績が向上するか、自分なりに試行錯誤することが大切です。私の場合、暗記ものは書きながら声に出して読むことが、一番成績向上につながりました。

髙宮 人間には「視覚優位」「聴覚優位」「言語優位」などの認知特性があります。特性に合わせて、図表にまとめたり、音読したり、教科書を要約したり。自分にあった勉強法で努力することが、合格を勝ち取るうえで重要です。

田中 いずれにしろこれからは、人生100年時代です。生涯勉強を続け、トライアンドエラーすることで人生は開けていきます。中学高校では、大学で学ぶための基礎を築くとともに、様々なことに挑戦してほしいですね。

たかみや・としろう/1997年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年学校法人高宮学園代々木ゼミナールに。米ペンシルべニア大学で大学経営学を学び、教育学博士号を取得。09年から副理事長。現在、SAPIX小学部、SAPIX中学部、Y-SAPIXなどを運営する株式会社日本入試センター代表取締役副社長などを兼務。 たなか・ゆうじろう/東京都出身。東京医科歯科大医学部医学科卒、同大学院医学系研究科内科学博士課程修了。同大学大学院医歯学総合研究科教授、同医学部附属病院長、同大学理事・副学長などを経て、2020年に同大学長に就任。24年10月、東京科学大学初代学長に就任。専門は消化器内科学、医学教育学。
※掲載内容は取材・作成当時のものです。
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