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中学受験 SAPIX 小学部

SPECIAL TALK 教育対談

「知」はどこへ向かうのかコロナ禍で、
学びの変化は加速していく

髙宮敏郎

SAPIX YOZEMI GROUP
共同代表 教育学博士

柳沢幸雄

北鎌倉女子学園 学園長
前開成中学校・高等学校 校長
新型コロナウイルス感染予防のために行われた長期休校が教育に及ぼす影響について、多くの方が不安な思いを抱いているだろう。
授業の遅れが教育現場にもたらした変化は、子どもたちの未来にどう響くのか。SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮敏郎共同代表と、3月に開成中学・高校の校長を退任し、4月から北鎌倉女子学園の学園長に就任した柳沢幸雄先生が、社会の変化とその中での子どもの育て方を語り合った。

変化に対応する力とは

髙宮 3月からの一斉臨時休校と緊急事態宣言に伴い、子どもたちは約3カ月間学校に通えませんでした。その間の授業について、学校による対応には随分と差があったようです。
柳沢 開成は対面授業を重んじる学校ですが、ICTに詳しい教員ですぐにプロジェクトチームを作り、オンライン授業を実施するための情報をまとめました。そこから先は、生徒の成長段階を一番よく知っている担当教員の判断で、学年ごとにリモート教育の内容が決まりました。北鎌倉女子学園は、以前から生徒全員にタブレットPCを配布し、環境的にもICTが進んでいる学校だったので、オンライン授業への切り替えはスムーズでした。6月以降は、生徒が半数ずつ登校し、自宅にいる生徒はオンラインで、教室にいる生徒と一緒に授業を受ける、という「ハイブリッド」なやり方にしています。
髙宮 私たちサピックスでも、会社として設備や機器を揃えましたが、授業の進め方そのものは日頃生徒を指導している先生にお任せしました。もともと教えるのが上手な先生は、オンラインになってもうまくアジャストでき、あらためて、先生の教える力が明らかになる機会にもなりました。どうしたら子どもが関心を持って学べるか、その興味を維持できるか、一生懸命、工夫してくれました。
柳沢 そう、対面でないから劣る、とは限りません。PC上だからこその課題や指導もある。Web上には、教材として利用できる公的機関のサイトもありますし、生徒の知的好奇心を刺激する動画もあります。リモート会議システムを使えば、普段教室では発言しないシャイな子が、チャット機能を使って教員に向けて発言してくれることがあり、意外な発見があります。この状況だから「できない」ではなく、「何ができるか」を考えられる人が、今後生き残っていけるのだと思います。
髙宮 今年、開成の名物行事の運動会が中止となりましたが、恒例となっているチームごとのパンフレットは制作するとうかがいました。
柳沢 困難な環境の中で生徒たちは柔軟に、ネットなどの使える手段を駆使して活動したと聞いています。パンフレットは高3生が中心になって、内容について議論を重ねて編集したようです。私も前任校長として、連綿と続いてきたことが一旦途切れた、しかしそこから新しいものが生まれるだろうというメッセージを寄稿しました。
髙宮 これまで脈々と受け継がれてきた伝統を中止で途絶えさせることなく、自分たちにできる形でまた下に伝えていく。それだけ開成生の成長過程において、運動会が持つ意味合いは大きいんですね。卒業後の大学入学についてはどうですか。今回のことで、海外の大学でもリモート授業のクオリティーが担保されるようになると、留学の意味合いが変わると思いますが……。
柳沢 国際化は一気に進むでしょうね。教育には学問的知識とそれを伝える技術という二つの要素がありますが、コロナ禍のもとで、教育手法が進歩するでしょうから、今後、日本の大学はグローバルな競争力を維持・向上するために一層の努力が求められると思います。

世界のどこでも力を発揮できる人に

写真:髙宮敏郎
写真:柳沢紀子

子どもの得意を伸ばす家庭教育を

先の見えない時こそ
好きなことを追求

髙宮 日本の経済が先行き不透明なことから、一部には、子どもに海外でよりよい教育を受けさせて、世界のどこでも働けるように、と考えている人もいます。
柳沢 今までの予定調和が成り立たない時代です。いわゆるいい大学を出て、大企業の社員や官僚になれば安定というコースが絶対というわけではない。国際的なジョブマーケットで売れる力を身につけ、今後円安になった場合には、ドルで給料を稼げるか。そういう観点からも海外の教育に目を向ける選択肢はあると思います。また、40歳の時点で自分は雇用する側にいるのか、雇用される側にいるのかどちらの立場にいたいかを想定して20代、30代を積み重ねることが重要だと思います。
髙宮 今の若い優秀な人は、起業してこれまでにないものを作ろう、という人が多いですね。一つの組織にとらわれず、面白いものを求めて自分で動いていくというような。技術系のスタートアップ企業の代表者の出身高校を調べたデータを見てみると、開成、灘、慶應卒が多かったんですね。ロールモデルとなる先輩がいて、情報が得やすいというのも強みとなっているのではないでしょうか。
柳沢 共同で起業している人は、高校の同級生が多いですよね。それも「ボスと参謀」のコンビで。考えてみれば昔からイノベーティブな企業は性質の違う二人が組むことが多いですね。ホンダもソニーも皆そうでした。
髙宮 開成の卒業生でもそうした40歳以下の二人組が成功していますね。しかし、起業にしても雇用にしても、このコロナ禍で、いっそう先行きが見えない不安があります。親としては、この先どのように子育てをしていけばよいでしょうか。
柳沢 好きな事、得意な事で飯を食えるようにすることが大切だと考えています。だから、その子が得意なこと、ほかよりとがっていることを親が「ちょい足し」でレベルアップしてあげるのがいいと思います。例えばアートが好きな子なら、かけ算を教えるより、美術館に連れていってあげるほうが、その子の将来につながるかもしれない。何が起こるかわからない時こそ、この子は何に向いているかをよく見ることが大事です。
髙宮 何かの専門家になる道も開けますね。我々のグループもこれからの社会の動きに対応し、学びに悔いが残らないよう子どもたちをサポートしていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

たかみや・としろう/1997年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年学校法人高宮学園に。米ペンシルベニア大学で大学経営学を学び、教育学博士号を取得。09年から副理事長。現在、SAPIX小学部、SAPIX中学部、Y-SAPIXなどを運営する株式会社日本入試センター代表取締役副社長などを兼務。 やなぎさわ・ゆきお/東京大学名誉教授、北鎌倉女子学園学園長。1947年生まれ。開成中・高、東京大学工学部を卒業。企業勤務、東京大学大学院博士課程を経て、ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、同併任教授(在任中ベストティーチャーに選出)、東京大学大学院環境システム学専攻教授を歴任。2011年から開成中学校・高等学校の校長を務め、20年4月から現職。
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