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中学受験 SAPIX 小学部

早慶スペシャル鼎談 明日の教育正解がない時代に
未来を切り開く
大学の役割、
求められる教育とは

伊藤公平

慶應義塾長

田中愛治

早稲田大学 総長

髙宮敏郎

SAPIX YOZEMI
GROUP
共同代表
教育学博士
国内外に数多くの難題が山積し、先行きの見えない今の時代。新しい未来を切り開くために、大学や教育への期待がますます高まっています。そこで今の時代に求められる教育や大学の役割とはどのようなものなのか。さまざまな分野に優秀な人材を送り出してきた私学の雄、慶應義塾大学と早稲田大学のトップに、SAPIX YOZEMI GROUPの髙宮敏郎共同代表が聞きました。

大学は多様な意見をぶつけ合い
新しいことに挑戦する場所

写真:伊藤公平 いとう・こうへい/1989年慶應義塾大学理工学部計測工学科卒業。94年カリフォルニア大学バークレー校工学研究科・博士号取得。95年慶應義塾大学理工学部助手、助教授を経て2007年より教授、21年5月に慶應義塾長に就任。専門は固体物理、量子コンピュータ、電子材料、ナノテクノロジー、半導体同位体工学。大学時代は体育会庭球部に所属。

幅広い基礎知識を体系的に学ぶべき

髙宮  お二人はともにアメリカの大学で博士号を取得されていますね。

田中  私はやりたかった政治学の計量分析を専攻できる大学院が日本になかったので、留学するしかなかったんです。当時、政治学の博士号を取るためにアメリカに行く人なんて珍しかったと思います。

伊藤  私が留学していた頃はバブル経済の絶頂期で、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われていました。観光で訪れた日本人から「日本がアメリカから学ぶことなんてありますか?」とよく言われたものです。

田中  当時、アメリカより日本製のテレビや自動車のほうが、世界でもてはやされていましたからね。でもそれはアメリカというお手本のもと、答えがある問題を早く解くことが日本は得意だっただけ。アメリカに追いつき、模範とするモデルがなくなってから、日本はずっと停滞しています。

髙宮  アメリカは逆にGAFAなどイノベーティブな企業を次々と生み出し、経済成長を続けています。その差の背景には、教育の違いの影響もあったのではないかと思います。

田中  アメリカの大学で感心したのが、幅広い基礎知識を体系立てて学ばせる仕組みをしっかり築いていたことです。昔の日本は追いつけ追い越せだったので、教育も研究も効率よく専門分野だけを追求する、たこつぼ的な傾向がありました。

伊藤  アメリカの大学院では研究や応用を重視していると思っている人もいるようですが、修士課程では体系的なカリキュラムに沿った勉強が中心です。

田中  課せられる学習量もはんぱじゃないですよね。アメリカの大学院は文系理系もわかれていません。政治学の博士号取得が目的でも、それ以外の分野を幅広く学ばなくてはなりません。

髙宮  ダブルメジャーも当たり前ですしね。そんな異なる知のかけあわせからイノベーションが生まれるのだと思います。日本は、特定の分野を極めるのは得意ですが、幅広い視野で物ごとを捉えるのが苦手かも知れません。例えば今は理工系学部がもてはやされ、人文系や社会系学部を軽視する風潮が強すぎる気がします。

伊藤  私は慶應の7割が人文社会科学系学部であることは、今の時代にはものすごいアドバンテージだと思っています。それだけ多様な意見やアイデアをぶつけ合うことができるわけですから。さまざまな可能性、多様性を確保することは、未来をつくりだす大学の重要な使命だと思っています。

田中  お手本や正解がない時代に未来を切り開いていくには、総合知が重要です。総合知を育むには、中学から大学にかけて文理を超えた幅広い基礎学力を身につけるべきです。それなのに早い段階で理系文系を分け、受験に必要な科目しか勉強しない。大学でも専門分野しか学ばない。そんなことでは総合知が育たなくて当然です。

今こそ幅広い基礎学力をつけ
総合知を磨くことが重要

写真:田中愛治 たなか・あいじ/1975年早稲田大学政治経済学部卒業。85年オハイオ州立大学大学院政治学研究科博士課程を修了し、政治学博士号を取得。東洋英和女学院大学助教授、青山学院大学教授、早稲田大学政治経済学術院教授を務め、International Political Science Associationの会長などを歴任。18年11月より現職。大学時代は体育会空手部に所属。

切磋琢磨(せっさたくま)しながら最高の教育環境へ

髙宮  慶應の湘南藤沢キャンパス(SFC)や早稲田の学部学科再編は、そんな日本のたこつぼ型教育を改革する取り組みでしたね。

伊藤  慶應義塾はもともと日本の近代化に向けて新しいことを試す場でした。それが年月とともに巨大化し、硬直していた面があります。そこで原点に戻り、失敗を恐れず新しいことにどんどん挑戦しようとの発想で生まれたのがSFCです。

田中  早稲田も国際教養学部ができた頃から大きく変わり始めました。政治経済学部の国際政治経済学科でも、体系的に教えることを重視し、必修科目を大幅に増やしました。学生は負担が一気に増えて大変だったようですけどね。

髙宮  ところでお二人とも体育会出身者です。大学における体育会の意義をどのように考えていますか。

田中  競技や試合にセオリーはあっても正解はありません。相手や自分の状態、気象などさまざまな条件のなかで勝つにはどうすればいいのか。知恵を絞り、仮説を立て、検証を続ける。その経験は、社会のどんな分野に進んでも新しい道を切り開く力となるでしょう。

伊藤  スポーツは極限的な緊張感のなかで瞬時の判断力が問われ、磨かれます。その力は社会に出てから大きな武器になるはずです。

髙宮  早慶戦ではお互いがライバル心むき出しで戦います。でも両校の体育会メンバーは、卒業後もすごく仲がいいですよね。

伊藤  実は職員や教員の関係もいいんです。学生に最高の教育環境を提供するために情報交換したり、協力しあったりしています。

田中  そもそも大隈重信は福澤諭吉に教わって早稲田大学を作ったわけですからね。そういった意味では慶應は私どもの先輩校です。

伊藤  いえいえ(笑)。いずれにしろ志を同じくする政治家と学者がタッグを組んで学校をつくり、切磋琢磨しながら新しい未来を切り開いたわけですよね。

髙宮  そんな良きライバルにして同志である私学の雄を、共通点の多いお二人が今、率いているわけですね。両校がこれからどんな人材を世に送り出すのか、ますます楽しみです。

良きライバルにして同志である
私学の雄のこれからが楽しみ

写真:髙宮敏郎 たかみや・としろう/1997年慶應義塾大学経済学部卒業。三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)を経て、2000年学校法人高宮学園代々木ゼミナールに。米ペンシルバニア大学で大学経営学を学び、教育学博士号を取得。09年から副理事長。現在、SAPIX小学部、SAPIX中学部、Y-SAPIXなどを運営する株式会社日本入試センター代表取締役副社長などを兼務。
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