Beauty
2023.07.20

齋藤薫の美しい歳の重ね方
自分の家のゴミにはすぐ目が慣れる。訪ねた家のゴミは何倍にも大きく見える。

妙な問いかけだけれども、あなたは自分の家で小さなゴミを見つけたら、反射的に拾うだろうか。当たり前でしょ?と思う人もいれば、お掃除する時でいいよねと思う人もいる。そして、いつもの景色だからとやり過ごしてしまう人も……そこは様々なのだろう。

もちろん反射的に拾えるに越したことは無い。今や最も尊敬される日本人と言ってもいい野球選手が、自分の職場であるグラウンドで、小さなゴミを見つけた瞬間拾える反射神経を身に付けていることに心動かされ、それを新たなテーマとして取り組んでいる人が少なくないとも聞くから。

ただ、最低でも見慣れていなければいいのだ。問題は、いつもの景色として見慣れてしまうこと。そうするうちに、自分の家のゴミは、自分には見えなくなっていくからである。

不思議なもので、他者の家のゴミは驚くほど大きく見える。特に初めて訪問した知らない家のゴミは、もっと大きく見える。さらに言うなら、ゴミがあってはいけないホテルや旅館などではほんの小さなチリ一つまでが目に飛び込んでくるはずで、場所により場面によりゴミは見え方が激しく変わってくるのだ。

だから、自分の家やオフィスでは日ごろから反射的に拾うクセをつけておくべき。コロナ禍が落ち着くほどに、訪ねてくる人も増えるはず。髪の毛の一本も見逃してはいけない。家に訪ねてきた人には、それがびっくりするほど長い一本に見えてしまうのだから。

人間の目はすぐ慣れる。匂いも慣れると匂わなくなるように。日常生活において目が慣れることには、くれぐれも気をつけて。逆にチリ一つ落ちていない状況を目に焼き付けること。

齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。最新刊『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。