齋藤薫の美しい歳の重ね方
会議中に居眠りをするのは日本人だけ⁉︎
この由々しき事態を、回避するための方法を考えた。
会議中に居眠りをするのは日本人だけ。日本人だけ⁈ ちょっと耳を疑いたくなるが、確かに電車の中で居眠りをするのは日本人だけと言われるし、クラシックのコンサートなどで寝息を立てる人がいたりするのも日本の特殊事情とか。でもなぜ日本人は寝るのか? 理由の一つは安全だから。物騒な国なら電車で居眠りなどありえない。
ちなみに海外の居眠り研究者によれば、日本人は子どもの頃に親と一緒に就寝する慣習があるからこそ、大人になっても他者の存在を意識しながらも眠ることができるのだとされるし、一方に日本人は寝る間も惜しんで仕事をする働き方をするから昼間眠いのだとの説も。実際に睡眠時間が世界一短いのも日本人というデータがあり、まずそこから正さなければ。眠るべき時にちゃんと眠らなければ。だってこれが海外なら会議中に眠るなど言語道断、給料泥棒と位置付けられるのに、日本では国会中の居眠りさえある……。これ自体本当に由々しきこと。
だからもっとメンタルの面から改めて考えてみた。日本人はなぜ会議中に居眠りをするのか? 一つの答えは、他人事だから。もしいきなり指名され、意見を求められる会議なら、眠るはずがない。発言のチャンスがなくても常に自分ならこう言おうと、話が切り替わるたびに考えをまとめていたら眠る暇などないはずだ。またいつもそういう訓練をしていたら、会議のたびにスキルが身についていく。つまりは、自分のために会議を利用するくらいの攻めの姿勢を持つべきなのだ。でないと、それこそ時間の無駄だと。確かに、コンサートで眠るのは、チケット代をドブに捨てるようなもの。感動しなきゃもったいないと思わないと。海外では5時間も続くようなオペラでも、ほぼ誰も寝ていない。80代のマダムだって背筋をピンとさせたまま没頭している。すべてを体感し吸収しなければ人生レベルで損をすると言わんばかりに。オペラ鑑賞さえ受け手ではなく、自分ゴト、自分が主役だから感じまくり、終演後は同伴者と食事をしながら自分の意見を主張しまくる。そこまでが彼らにとってオペラなのだ。すべて自分のための時間と考えれば不思議なエネルギーが湧くはずだから。
でも日本人の気質を踏まえるとこう言った方が納得がいくのかも。オペラ演者のために本気で観(み)て聴いてあげるのが観客の使命であり役割。会議の発言者の意見を100%本気で受け止めるのが同席者の使命であり役割。人は毎日役割を果たしてこそ生きている実感があるはず。居眠りは役割も果たせぬどころか、発信者への侮辱に見える。日々どんな場面でも自分の役割を果たす生き方を、改めて意識すべきなのだ。そうだからこそ、休むべき時間にちゃんと休み、眠るべき時間にちゃんと眠らないと。会議中に眠れる日本が、世界中から揶揄(やゆ)される前に。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。最新刊『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。