齋藤薫の美しい歳の重ね方
健康寿命を延ばす、メイクとヘアはやっぱり命のものさしだった!
アザや衰えを隠すリハビリメイクに、心と体の機能を高める不思議な力があるのはよく知られている。でも、自分の家族が実際メイクに生命力をもらうのを目の当たりにすると、やっぱり感動せずにはいられない。特に介護施設などでは"メイクが認知症の周辺症状を緩和する"と言われるなか、高齢の母が久しぶりにメイクをし、よそ行きの服を着た日、まるで別人のように覚醒したのには本当に驚いた。いわゆるデイサービスで家族以外の人々と関わるようになったこともあり、何の症状もなかった頃のように喋(しゃべ)り出したのだ。以前よりも陽気に明るく冗談さえ言うまでに。
さらに驚くのは、その後も入退院を繰り返し、入院時はまた表情も口数も少なくなっていたのに、髪を美容室で久しぶりにマダム風に仕上げてもらった途端、やはりたちまち覚醒、声のトーンもしゃべる言葉も、上品かつ溌剌(はつらつ)とした印象になったこと。いや、枯れかかった花が一瞬で蘇(よみがえ)るような劇的な変化に、唖然(あぜん)としたほどだった。個人差もあるのだろうが、心が前向きになり、脳が活性化、唾液(だえき)も増えて会話がスムーズになり、ある意味で人としての尊厳をも高めてくれるメイクとヘアの力に改めて感服した。人から見られているという意識は自信をもたらすどころではない、それこそ生命力を一気に高め、命を輝かせる力があることを思い知った。メイクとヘアで人は何度でも覚醒し、健康寿命は延びる。目下の、わが家におけるイキイキ生きるものさしである。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイスト。多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。