Beauty
2025.12.05

齋藤薫の美しい歳の重ね方
博士ちゃんたちに気付かされた
人間にとって最大の生きがいとは何か?

ボンボンのイラスト

(イラスト:ソリマチアキラ)

いつも激しく心を動かされるものに、「博士ちゃん」というTV番組がある。主に小中学生、時々高校生が、1つのことをまさに博士レベルで調べ上げ、研究し、それをプレゼンしてくれるという大変ユニークな番組だ。それは時々、涙ぐんでしまうほど感動的であり、大人の心を根底から揺さぶってくる。

研究テーマはもちろん一人一人異なるわけだが、ありがちな鉄道や昆虫といったものではない。日本の城や神社仏閣、エジプトのピラミッドから、生物の進化、天然木や天然石、宇宙食、世界の調味料、味噌、なぜか信号機やセロハンテープまで、本当に多岐にわたる。そもそもなぜそんなものに興味を持ったのか、それ自体が不思議なほど、博士ちゃんたちの興味は独特だ。でもだからこそ逆に、どんなものでも興味を持って調べるほどに、とてつもなく面白いということを教えられるのだ。そう、たとえ、信号機でも。

そして何よりその情熱。その道のスペシャリストもシタを巻くほどに詳細に調べ上げ、それを非常に滋味深く話してくれる。深掘りの仕方も超一流ならば、プレゼンも大人顔負け。まさに愛情と感性を持ってそのテーマと全身全霊で取り組んでいることがよくわかる。勉強ではなく、明らかに研究なのだ。

だから毎回思うのは、自分は何をやってきたんだろうということ。ずいぶんとさっぱりした人生を送ってきてしまったなということ。博士ちゃんたちのように子供の頃から何かに深い深い興味を持っていれば、人生は何倍も何十倍も彩り豊かな素晴らしいものになったのではないかと思うから。

いや、でもこれは、今で言うところの"推し活"とメカニズムは同じ。1つのもの、1人の人に、果てしない興味と愛情を持ってこだわり続ける、そういう意味では博士ちゃんも推し活も同じなのだ。ちなみに 、美空ひばりのことなら何もかも知っている博士ちゃんもいたりする。根っこにあるものは同じなのだ。

だからもちろん、推し活に夢中な人も心が暇になることは無いはずだし、常にある種の恋愛状態にあるわけで、それが幸福感を得る1つの大きなテクニックであることは紛れもない事実。推しに対して、時間とお金を惜しまない、軽い使命感というものも、なんとも心地よい心の充実につながるはずで、そこには何のネガティブもないはずなのだ。

ただそれでも博士ちゃんに引け目を感じてしまうのは一体なぜなのだろう。大人が叶わないと思うものは何なのか?

これはズバリ好奇心。大人になるにつれ減っていく宿命にあるもの。子供の頃は知っても知ってもまだ知りたい、それをスポンジのように吸収するから、さらにもっと知りたくなる……そういう風に、無限の好奇心が泉のように湧き出して、だからこそ博士ちゃんたちのような天才的な子供研究者が生まれるのだろう。

とすれば、私たち大人が叶わないのは、ある意味当然。単純に何倍も長く生きているのだから。でも、待って。ひょっとすると、私たちは、多く知った気になってしまっているだけではないか。知らない事はあんまりないと思ってしまっているだけではないか。
ハッキリ言って、知っているつもりになってしまうことって、じつはとてももったいない。何かをもっと知りたいと思った時、それだけで今までにない力が湧いてくるというのに。

私自身、長い間,好奇心なんてゼロだったかもしれないのに、人生の折り返し地点まで来た時、あと半分しかないと思った途端に、急に知りたいことが増えた。逆に言えば知らないことだらけだということに気づいたのだ。このままではまずいと、ある種の焦りのようなものも感じて、突然いろいろ知りたくなったのだ。

じつはこの時、同時に気づいたのは、好奇心があるって素晴らしいこと、まさしく生きがいにも通じるものだということだった。私たち大人が、博士ちゃんを心から羨ましく思うのは、その生きがいにも等しい好奇心に対してのものだったのだ。

そこで今、自分が1番何に興味を持っているのか改めて自分に聞いてみた。それが、人間の体の神秘性。持てる潜在能力の凄さについてだった。よく言われるのは、「人間は潜在能力の90%以上を使っていない」ということ。そもそもそれって一体どういうことなのか?と。

そうこうしているうちに、「ヒトの老化は宿命ではなく単なる病気だから治療ができる」という新しい説が盛んに語られるようになってきた。医学がようやくアンチエイジングに本気になったことで、こういう全く新しい概念が生まれてきたのだ。でもそれって、人における最も大きな潜在能力なのではないか?

じゃあ、老化が病気だというなら、そして治療ができるなら、人は一体何歳まで生きるのか? 何をどのようすれば、それが可能になるのか? そのことがもっと知りたくて知りたくて知りたくて……。今はそれを日々、紐解いてみている。それがもう楽しくて楽しくて。

かくして、好奇心ってこんなにも元気が出て、前向きになれて、生きるためのエネルギーにもなることなんだと初めて気付かされたのだ。

あなたの知りたい事はなんだろう。その"知りたい"が、きっと生き方を変えると思う。それは、子供から大人まで皆同じ。好奇心ほど人に力を与えるものはないといえるくらい。

齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる  多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。