齋藤薫の美しい歳の重ね方
人間のクオリティーを上げるほど、生きていく上で最も重要なもの、実は筋肉だって知っていた?
(イラスト:ソリマチアキラ)
この連載でも、これまで何度か取り上げてきた筋肉の話。その度に、筋肉がいかに重要かを語ってきたけれど、その重要性が今ますます、何だか加速度をつけて高まっていることをまず知って欲しいのだ。
そして結論から言うなら、筋肉は今、生きていく上で最も重要と言っても良いほど、優先順位が上がってきている。それも、足腰が丈夫だとQOL(クオリティーオブライフ)が高まるというような単純な話ではない。大袈裟ではなく、筋肉が人間の質を高める……と言ってもいいほどに、あちこちの機能を一斉に高めてくれる様な効果が得られるのだ。というのも、筋肉から自然にもたらされるホルモン様物質が、ちょっと信じられないほど素晴らしい働きをすることが、わかってきたのである。
もちろんこれまでも、筋肉をつけると基礎代謝が高まって、太りにくくなるといったことはよく知られていた。当然のこととして、長生きの必需品としても深く認識されてもいた。でもそんなレベルじゃない。実は筋肉をつけるとマイオカインという物質が分泌され、それだけで内臓機能も脳機能も高まって、心も安定、幸福感まで得られる可能性が既に明らかになっている。おまけに肌まで美しくなるということで、かなり全方位的な抗老化につながることがわかってきた。解明されたのが2003年というから、まだ最近のこと。さらなる新しい研究もあって、にわかに大きな話題となってきている、ということなのだ。
ちなみに筋肉は、全体重の40%を占める最大の臓器と言っても良く、狩猟生活が長かった人類の歴史を考えると、筋肉にそこまでの力があっても不思議ではないという見方もあるほど。
ともかく、運動すると健康にいい……散々そう言われてきたにもかかわらず、それが一体なぜなのか? 何か漠然としていたその関係性。実際に謎の部分も多かったと言われるけれど、マイオカインの働きが明らかになることで、一気に研究が進んでの結果なのだ。
だから大切なのはここ、筋肉はいくつになっても増えるという事実。女性は更年期を過ぎると、どういうわけか色々なことを根拠なく諦めてしまいがち。特に筋肉に関して、運動は苦手ということを言い訳に、今さら筋肉をつけるなんて所詮ムリと、最初から諦めていたりする。でもはっきり言って、筋肉をつけるのに年齢制限はない。それこそ70代、80代になっても、90代になっても、運動さえすれば筋肉がつくことが既に証明されているのだ。
でも一方に、どうせ始めるなら早いほうがいいとの説もある。なぜなら運動によって筋肉をつけることが、本当の意味のアンチエイジングになるから。40代半ばで肉体には明快な衰えがやってくるといわれるけれど、まずそれが根底から防げるとの見方もあり、いよいよ運動の時代、筋肉至上主義の時代がやってくるとも言えるのだ。
ここまで言ってもなお、運動は続かない、何から始めていいのかわからない、というのが多くの人の悩みの種なのだろう。だから1つだけ。じゃあ、お茶を入れるたびに、つまりお湯が沸くの待つたびにスクワットを10回ずつやる、それだけで良いのだ。そんなことだけでも実は充分であるということを知って欲しいのだ。だから難しく考えないで。
齋藤 薫
さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる 多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。