Beauty
2026.05.28

齋藤薫の美しい歳の重ね方
無類の運動嫌いを、60代を過ぎてから運動好きにした意外な方法

ボンボンのイラスト

(イラスト:ソリマチアキラ)

私自身、運動が大嫌いだった。人生50年以上、ずっと運動不足を負い目として生きてきた。ところが今は、ちょっとしたスポーツウーマンを気取っている。今や体を動かすのが苦ではないどころか、むしろ好きになってしまっているのだ。周囲の人間はそんな私の変化に驚き、先日も遺跡を回るような旅行に出かけ、1日中歩いているのに弱音を吐かない私に家族は「昔の10倍くらい早く、50倍くらいたくさん歩けるようになった」と感動。それも、若い頃から歩くのが苦手でちょっとした距離でもタクシーに乗るタイプだったから。ヒールを履いている日が多かったからということもあるけれど、今はスニーカーでタッタと歩いている。いや信じられないほどの激変ぶり。一体なぜこんなに変わったのか。

前回もこのコラムで、筋肉が今いかに重要かを語ったけれど、そうした背景もあって、ともかく人生100年を全うするには筋肉が絶対不可欠と思い知ったから。それこそ人生100年と言われ始めた10年ほど前から、運動を本格的に始めた。といっても、自分を大きく変えたのは毎日のちょこちょこ運動。何も、頑張ってジムなどに通わなくても筋肉は作れるという専門家の提唱もあって、それならばやってみようと始めたのが日常生活の中に小さな運動をちょこちょこ組み込むことだった。

歯を磨いている間、片足立ちやかかと上げ。お茶を入れるためのお湯を沸かしている間にスクワットを10回。これは、昨今話題になっている方法だけれど、毎日欠かさない絶対の習慣に、なかなか習慣にならないことを乗っけるやり方。イヤイヤだったことまでいつの間にか習慣化できてしまうのだ。

そういう家での小さな運動を続けているうちに、だんだん運動が嫌でなくなり、いつの間にか朝起きるとちょっと腰が痛いからと、ストレッチをするようになった。そのうち短いプランクなどの小さな筋トレをそこに加えるようになった。というふうに、積み立て貯金を増やしていくように運動量を増やしていったのだ。

トレーニングウェアもトレーニングシューズもいらない、家でのちょこちょこ運動。いや、ちょこちょこだから続いたといってもいい。それこそお湯を沸かす間は手持ち無沙汰だからこそ、スクワット10回がちょうど良い。でもその繰り返しがじつは意外にも大きな動機をもたらした。つまり、筋肉そのものよりもズバリ"やる気"。筋肉をつけるとどんどん意欲が湧いてきて、もっと体を動かしたいという気持ちになるのである。それも筋肉から分泌されるホルモンの効果だといわれるが、それがやがてピラティスを始めたり、ジムにも入ったりというモチベーションにもつながったのだ。

つまり最初の筋肉はどんなに小さくてもいい。それをきっかけに、やる気を積み重ねて行ったことで、結果的に筋肉が増えていったのだ。

しかもこの歳になっても、筋肉はどんどん増えていくことを身をもって体験した。だから強くお勧めしたいのだ。小さな筋肉からコツコツと、大きなやる気を生みだす方法。

何しろ、筋肉は内臓から脳までの機能を高め、肌や髪の美しさにも関わるとされ、おまけに幸福感までもたらしてくれる、総合エイジングケアの大きな鍵になってくるのだから。良いことずくめの筋肉は、つけなければ損。少なくとも人生100年どころか120年までの可能性が出てきている今、私たちの未来に不可欠であること、いや最優先すべきであるのだけは間違いないのだから。

齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト/エッセイスト

さいとう・かおる  多数の連載エッセーを持つ他、美容記事の企画、化粧品開発・アドバイザーなど幅広く活躍中。『“一生美人”力セカンドステージ──63の気づき』(朝日新聞出版)ほか著書多数。