~今、顔立ちより「顔つき」を育てよう~
松本千登世さんの提案するサステイナブル・ビューティー
(撮影:目黒智子/ヘアメイク:RYO〈 OFFICE KOBAYASHI Inc〉/文:松本千登世/構成:ボンマルシェ編集部)
これからの顔は、自分でつくる!
「大人はもう、生まれつきの顔じゃないのよね」。ある友人の言葉です。親に与えられた顔が、年齢を重ね、感じるたび、考えるたび、心のあり方によってどんどん変わっていく。だから、生まれつきの顔に甘えることも、一方で、生まれつきの顔を憂うことも、意味がない……。私もずっと感じていました。大人になるほどに「顔つき」が「顔立ち」を超えていく。知らず知らずのうちに、顔立ち=顔の形や作り、目鼻立ちが、顔つき=気持ちを表す顔の様子、表情にとって代わられている、と。そう考えると、今の顔は、何を感じ、どう生きているかがそのまま刻まれた結果、すなわち、自分でつくり上げたものに違いない。つまり、これからの顔は、意志でつくることができると言っても過言ではないのです。そこで、顔つきをつくるための美容。私らしいと自信を持てる「顔つき」を目指して、生き生きとした自分を長持ちさせる、これぞサステイナブル・ビューティー!
提案してくださったのは……
松本 千登世 さん
フリーエディター・ライター

まつもと・ちとせ 1964年、鳥取県生まれ。大学卒業後、航空会社の客室乗務員、広告会社勤務、出版社勤務を経てフリーランスに。美容や人物インタビューを中心に活躍中。『もう一度 大人磨き 綺麗を開く毎日のレッスン76』ほか著書多数。今年、4月に発売された『顔は言葉でできている!』(講談社刊)が注目を集めている。
1 「疲れ顔」「不機嫌顔」を跳ね返す、毎日の「ハリ」づくり
「今日、疲れてる?」「昨日、寝てない?」と心配されることが増えました。まわりに話すと、皆、「私も!」。その原因は、印象としての「影」にあるのだと思います。潤い不足やくすみなどによる表面的な色調はもちろん、シワやたるみ、キメの粗さや毛穴の目立ちなどが絡み合った全体の暗さが、「疲れてる?」「不機嫌?」と映るのだと改めて。心がけたいのは、朝晩のスキンケアで瞬時の「ハリ」をつくること。ハリ用の美容液やクリームをプラスするのは、もちろん効果的。一方で、いつも使っている化粧水や乳液などのベーシックアイテムで、肌に潤いのクッションをつくるようにたっぷり、じっくりケアを。ぱんっと弾力のある肌で疲れた表情、不機嫌な表情を記憶させない!
千登世さんの美容tip
特に気になる日には湿らせたコットンに化粧水を含ませた化粧水パック、同様に乳液を含ませた乳液パック、ダブルでハリを手づくり。
2 相手を見て屈託なく笑える、表情を恐れない「目元」をつくる
吹き出物や肌荒れがあるだけで、生え際に白髪が見え隠れするだけで、できれば人に会いたくないと思ったり、無意識のうちに目をそらしたり……。誰しも経験があるはずです。見た目と心の関係がこんなにも密接だなんて! もし、日々相手を見て屈託なく笑える自分でいられたら? その顔がこれからの顔になったら? そのために始めたいのが、アイケアです。目周りの皮膚は、ほかの部位より薄いのに加え、瞬(まばた)きや表情など動きも激しく、疲れや加齢のサインが刻まれやすいところ。だからこそ、特別なケアが功を奏します。目元に自信があれば、瞳に輝きが宿り、引力を放つ……。いつ会っても、「生き生きしている人」という印象は、ここから生まれるはずです。
千登世さんの美容tip
温めたタオルで両目を覆うように載せて30秒。そのあと、アイケアをしてから、冷やしたタオルを同様に。眠る前もメイク前も効果的。
3 今日のマイナスを「休ませ」、明日のプラスを「養う」入浴を
10年ほど前、入浴の専門家に取材でお目にかかったとき、どきりとさせられたひと言があります。「入浴を『休息』で終わらせている人がいかに多いことか! 本来は、休息の先の『休養』であるべきなんです」。休養とは「休ませ」「養う」こと。今日のマイナスをゼロに戻すのみならず、明日のためにゼロからプラスにする入浴を。休養はおろか、休息さえもできていない自分を反省しました。以来、続けている入浴習慣。時間は、眠る1時間半~2時間前。シャワーで済ませず、夏で39度、冬で40度を目安に少しぬるめのお湯をバスタブに張って20分程度。意識して血流を巡らせれば、睡眠の質も高まります。朝の顔は夜から、明日の顔は今日から始まっているのです。
千登世さんの美容tip
私はあえて、香りのない重炭酸入浴剤を使用し、お気に入りの香りを肌に纏(まと)ってからバスタブへ。呼吸が深まり、リラックス効果あり。
4 自然の一部として、地球の一部として、「自分」も「肌」も強く
刻一刻と変化する環境、ストレスフルな毎日、年齢も性別もライフスタイルも問わず、健やかに生きるのが難しい今という時代。私たちが欲しているのは、自然の一部、地球の一部として「調和」や「循環」が生まれる美容であり、自分自身なのだと思います。つまり、トラブルが起きてから後追いして美しさを繕うよりも、トラブルが起きる前に先回りして健やかさを築くこと。そのためには原料からパッケージまで、自然の恩恵から生まれた地球思いのものを、意志を持って選ぶこと。そして、「揺らぎ」に翻弄(ほんろう)されないしなやかな強さを育むこと。シワやシミを気にする顔から、シワやシミが気にならない顔へ。
美容への向き合い方が変わるだけで、顔は変わるはずです。
千登世さんの美容tip
化粧品を選ぶときは、効果や心地よさに加えて、「透明性」も指針に。また、スキンケアのみならず、インナーケアや習慣にも目を向けて。
5 食事も会話も、未来をときめかせるために見直すオーラルケア
マスク生活がもたらした「弊害」に、口元に意識がいかなくなったことが挙げられると、よく話題に上ります。その間にたるんだ、下がった……、それはもちろん問題。でも、それ以上に気にしなくてはならないのは、だらしがなくなり、締まりがなくなったことなのかもしれません。食事するときも会話するときも「見せないから」「見られないから」と積み重ねてきた心のあり方が、口元のみならず、全身にゆるみをもたらした気がするのです。そこで、もう一度凛(りん)とした顔を取り戻すために、正しいオーラルケアを。プロに任せるメンテナンスはもちろん、日々のケアに使う歯ブラシや歯磨き粉をもう一度見直すことから。食事も会話も、堂々と清々(すがすが)しく。顔つきはすぐに、変わります。
千登世さんの美容tip
大人になったら、定期的に歯科健診を。私は、磨き残しをチェックできる歯垢(しこう)染色剤を使って、ときどき、歯磨きの癖を自覚するように。
6 靴、腕時計、ソファ、器……、時が価値を育てるものを傍らに
例えば、ひとめ惚(ぼ)れして買った黒のダービーシューズ。例えば、思い切り背伸びをして手に入れた自動巻きの腕時計。レザーのソファも真鍮(しんちゅう)の器も。新しいときよりも古くなるほどに、どんどん味わいが増しています。肌もそうならいいのに。私もそうならいいのに。ふと思いました。ただ古くなるだけでは味わいは生まれない。使うたびにこまめに手入れをしたり、ときどきプロに任せてメンテナンスをしたり、「長持ち」をさせる心がけを重ねて初めて、古さが新しさを超えるのだって。「時が価値を育てる」ものを日々、傍らに置いておくと、自分への見方も変わるはずです。それらに対して「いい顔になった」と言えたら、自分に対して「いい顔をつくりたい」と思えるはずだから。
千登世さんの美容tip
肌を長持ちさせるためには? ごしごし擦ったり、ぱんぱん叩(たた)いたり、ぐいぐい動かしたりしないこと。触れ方を見直すことも、大事。