街の「緑」と共生する暮らし
松戸市の住宅街の歩道に一定の間隔をあけて置かれたプランター。6月上旬、子どもたちもメンバーの一員となり、幅広い年代の地域住民が協力して植え付けたプランターは順調に育ち、8月初旬、ひまわりやオクラは花が咲き、ハーブは緑濃く葉を茂らせ、ミニトマトやインゲン豆は実をつけていた。小さな苗で植えたシソもすくすく成長。
歩道のプランターで野菜やハーブを地域住民で育てるエディブルランドスケープ(食べられる植物の景観)が注目されています。収穫物を通して自然の恵みを感じながら、住民同士のコミュニティーづくりにも役立つ新しい景観づくりの方法です。千葉県松戸市のエディブルランドスケープには、私たちも取り組みやすいアイデアがありました。
(撮影:河内彩/取材・文:角田奈穂子/構成:ボンマルシェ編集部)
エディブルランドスケープで街とつながろう!
"食べられる植物の景観"で街と人の関係性が変わる
海外で始まったエディブルランドスケープを日本流にアレンジして、松戸市で取り組んでいるのが、千葉大学・江口亜維子さんが代表を務めるプロジェクト「エディブルウェイ」の活動です。食べられる植物の育成を通し、多世代の地域住民が日常的な交流を楽しみながら、「安心して暮らせるまち」を目指しています。
教えてくださったのは
江口 亜維子 さん
千葉大学予防医学研究センター特任研究員/ 博士(農学)・「エディブルウェイ」代表

えぐち・あいこ 千葉大学大学院園芸学研究科博士課程修了。2016年から、所属していた木下勇地域計画学研究室、地域住民との協働で「エディブルウェイ」プロジェクト開始。17年、グッドデザイン賞受賞。20年から松戸市市民活動として地域住民と運営を継続。
「食」の栽培で街の景観をつくる
松戸市の住宅街、店舗の前や歩道に置いたプランターに野菜やハーブを寄せ植えし、地域住民が連携して育て、収穫を楽しむ──。エディブルランドスケープの実現のために、松戸市で活動を展開するのが、江口さんが代表を務めるプロジェクト「エディブルウェイ」です。「エディブルウェイ」の名は、「食べられる景観」と「道、方法」の二つの意味をかけ合わせた造語。2016年の発足から昨年までは有志で活動していましたが、今年から松戸市も関わるようになり、歩道のプランターでの栽培が始まりました。
ボンマルシェ編集部が取材で伺ったのは6月上旬、プランターに苗を植え付ける日でした。参加者がチームに分かれ、11個の大型プランターに、野菜やハーブを植えます。ミニトマトとバジルを組み合わせたり、マリーゴールドと一緒に植えたりするのは、コンパニオンプランツの考えから。相性のよい植物の相互作用で、害虫を防いだり、成長を促したりするのです。
植え付け後は、水やりや育ち具合、害虫や病気の有無などを、それぞれが通ったときにチェック。様子はSNSで共有します。レポートからは「水やりをしました」「小さなスイカができていました」と、通りの変化を愛おしく感じている気持いとちが伝わってきます。7月下旬から少しずつ収穫が始まり、9月下旬には収穫祭も予定。それを終えたら、次のサイクルになる冬野菜の植え付けが始まります。


エディブルランドスケープとは、果樹や野菜、ハーブなどの食べられる植物を用いて、美しく計画された景観をつくること。「食べられる植物を育てて、収穫するだけではなく、その過程で、コミュニケーションが生まれ、顔の見える関係づくりにもつながります」と江口さん。
海外では、歩道の植え込みや運河沿いなど公共空間に食べられる植物を植えて、コミュニティーで管理し、収穫ができる取り組みが増えているそう。「エディブルウェイ」の活動も、今年から松戸市との連携が始まって活動の幅が広がっています。
「『エディブルウェイ』の活動は、もともと、日本に昔からある鉢植えを軒先や路地で育てる『地先園芸』の手法を使って、軒先から始めました。歩道にある『まちのプランター』での活動が始まったことで、より多くの方々に参加していただけるようになりました。これからも、地域のみなさんと活動を育てていきたいです」と、江口さんは話します。


今頃に、種をまくなら……
リーフレタスのミックスシードを!
エディブルランドスケープは1人から、通りに面した玄関先や庭先で始めることができます。これからの季節に初心者でも育てやすいリーフレタスのミックスシードの栽培を"寄せ植え菜園"のエキスパート、たなかやすこさんに教えていただきました。「リーフレタスは、数種類ミックスされたタイプの種が育てやすいので、ぜひチャレンジを!」(たなかさん)
(撮影:田中淳/取材・文:角田奈穂子)
教えてくださったのは
たなか やすこ さん
園芸家・イラストレーター

たなか・やすこ コンテナをメインにした家庭菜園歴30年の経験を生かし、大学の市民講座や各地のワークショップなどを多数開催。松戸市の「エディブルウェイ」プロジェクトでも講師を務める。『ベランダ寄せ植え菜園』(誠文堂新光社)他著書も多数。
Step 1
湿らせた土に、種をまく

保水力と通気性がよく、軽く扱いやすいココヤシベースの培養土にまず水をまき、結球しないレタス5~7種類混合の市販の種をまく。土を薄くかぶせる。
Step 2
5日ほどでかわいい芽が出る

土の表面が乾いたら優しく水やりを。種まきから5日ほどで芽が出てくる。リーフレタスは、苗を植えるより、種からのほうが育てやすい。
Step 3
間引きをして丈夫に育てる

双芽が出そろう10日目頃、葉が混みあっているところだけバランスよく間引くと、光の当たり方が均等になる。
Step 4
ベビーリーフで繰り返し収穫

葉が10cmくらいに育ったら1回目の収穫時。株元を2cmほど残して、はさみで切る。秋にまいて、来春まで、3クールは収穫できるはず。
Step 5
寄せ植えも楽しめる!

アブラナ科のミズナ、ルッコラのコンパニオンプランツとしてキク科のレタスを一緒に植えると、害虫の予防にも。ビオラを寄せ植えすると、美しい見た目に。