ボンマルシェ インタビュー
齋藤 薫さん(美容ジャーナリスト・エッセイスト)
私たち“ポストメノポーズウーマン”一人一人が、それぞれの“奇跡の〇〇歳”を目指しましょう!
「長い間、閉経(ポストメノポーズ)という言葉は伏字の如く、ほとんど語られなかった言葉です。“女性を終えた”というニュアンスがあったからです。私自身もそうでした。でも、そんなマイナスの意識をプラスに変えたら、まったく違う世界が見えてきたんです」と語る齋藤薫さん。
ご自身の閉経にまつわるリアルな体験に基づいて書かれた著書『年齢革命 閉経からが人生だ!』(文藝春秋刊)のリリースから半年。「閉経を隠さず、女性の体の自然な摂理として受け止める文化が根付いてほしいし、普段の会話の中で自然に話せる社会でなければ」という思いを、今、より強くしているという齋藤さんに5つの質問。
(取材・文:岡本くみ子)
Q 「閉経」をテーマにしようと思われた動機は?
数年前、私が担当しているある連載で、自分の体験をベースに閉経について書こうとしたのですが、「閉経にはネガティブなイメージがあり、不快に思う人もいるので」という理由でNGになったことがありました。閉経は月経や生理と同じく生理現象の呼称で、差別的なニュアンスは何もないのに、「それでも言葉としては避けてほしい」と。
確かに私自身もかつては閉経について人一倍、ネガティブな意識を持っていました。いわゆる“上がる”という表現が象徴するように、女でなくなるのが怖かったし、閉経したことを認めたくないという心理が働いて、健康診断の問診票の「閉経していますか?」に、ためらいながらも「いいえ」と答えたこともあります。
でも、私は気になったことは徹底的にリサーチしないと気が済まない質でもあって、閉経後の女性の体や脳に関する多くの文献を読み、取材をするなかで、閉経は女性の体の宿命なのにどうして恥じるのか、私自身、その認識を変えなければ、と思い至りました。
“上がり”は上がりでも双六の上がりではなく、生物学や脳科学や心理学、さまざまな見地から、女性として一段高みに上がることが閉経なんだからと。
今や、日本の女性人口の半分は閉経世代。日本女性の閉経に対する意識も確実に変わってきています。雑誌『CREA』のSNS上でのアンケート(年齢・性別不問)では約6割の人が閉経にネガティブなイメージを持っていない、と答えていました。「私、一足お先に上がっちゃうね。お先にぃ」と軽やかに言える文化が根付いてほしいと思います。
閉経は終わりの始まりではなく肉体的にも精神的にも、もう一つの輝かしい人生の始まりということに気づいてほしいと今、強く感じています。
Q 『年齢革命 閉経からが人生だ!』のタイトルには、齋藤さんご自身の覚悟のようなものも感じられますが?
閉経は女性全員が体験する人生の転換期。たとえば1950年代頃の日本女性の平均寿命は60歳くらいでしたから、それこそ閉経後に残された人生は短く、まさに余生でした。でも、今や人生100年時代。もう1回分の人生を生きるような後半生があるんです。
今の時代、私の周りを見ても、閉経を迎えても何ら変わらずキラキラと輝いている女性がたくさんいます。閉経することと女でなくなることは何ら関連がありません。まるで、この先は崖になっているとビクビクしていたこともありましたが、なんてことはなくて、大地はずっとつながっていたんです。肩透かしをくった気分です。
女でなくなるなんてウソじゃない。そう思うと元気が出て、私の人生いっそこれからのほうが明るいかもとさえ思えたほど。閉経の事実は変わらないけれど、そのタイミングで一気に枯れるか、逆にこれから開花するかはすべて自分しだいなんだと。
だから、自分のなかに持っているネガティブな年齢感をポジティブに変えなければ!そして、日常のなかにある小さなことから自分らしい“年齢革命”を起こすこと!世の中の変化を待つのではなくて、自分自身が“奇跡の〇〇歳”を目指していこうと思い至りました。
でも、私も、50代を前にした49歳で強い不幸感を持っていましたよ。毎日、不眠症をはじめ重い更年期障害の症状があって、年齢を重ねていく怖さもあった。
後で知ったのですが、私が感じたこの不幸感は、世界規模の幸福度調査(アメリカ・ダ ートマス大学デービット・フラワー教授の論文「人生の幸福度と年齢の関係」)によると、奇しくも、47歳から49歳くらいの間で感じる人が世界的にみても多いのだそうです。
人それぞれ事情は千差万別なのに不幸感を持つ時期がある年齢に集中するのはどうやら更年期が影響しているらしい。だから、更年期を過ぎてみると目の前がさーと開けたような爽快感が持てて、60代に入った頃には、心地よささえ感じられました。今、更年期にさしかかっている人や、真っただ中にいる人にかけたい言葉は、「いつかは必ずスーッと抜けられるときが来るから、それまでの数年間がんばって」ということです。
Q 「閉経」にネガティブなイメージがあるのなら「メノポーズ」と言い換えよう、と提案をなさっていますが?
いくら頭では閉経を恥じることはない、と思っても、ネガティブなイメージをなかなか払拭できないのも人の心理。ならば、別の言葉に言い換えてみては、という提案です。
そこで思い当たったのが、今、じわじわと世の中に浸透しつつある、英語で閉経や更年期を意味するメノポーズという言葉です。閉経後を特定的に意味するポストメノポーズと言う言葉もあります。女性の生理に関わることをフェムテックやフェムケアという言葉で語ると会話しやすいのと同じで、言葉のチカラは不思議なものですね。
ポストメノポーズの人生は楽しく、輝かしくありたい!
Q 齋藤さんご自身、閉経後に取り組んでいらっしゃる体作りがあるとか?
更年期以前は、とにかく自分の体や健康について真剣に向き合ったことが無かったかもしれません。でも、50代になって取りくみ始めたのが“骨作り”で、骨密度を多少なりとも増やすこと。ずっと気づかずにいたらどうなっていたかしら、と想像すると恐ろしい。
今は、老いと戦うのではなく、改めて新しい体を作るという発想でやっています。骨を作り、筋肉を作り、体幹を作るっていうイメージです。コツコツと丁寧に重ねるのが、私なりの“奇跡の〇〇歳”につながるんだと信じて続けています。気力は体力と言われますが、さらにいえば、気力は筋肉であり体幹であると思っています。
Q 50年に及ぶ美容ジャーナリスト、齋藤さんが思う、人生100年時代、ポストメノポーズ世代が大切にしたい美容は?
日本には最近まで閉経後の美容についての情報がほとんどありませんでした。これは驚くべきこと。そこで思ったのは、応用のきかない世間の情報に委ねるよりは、自分で考え、自由にチャレンジしてみようということ。自分のことは自分がいちばんよく知っていると信じて。
意識したいことは、閉経後に起こる肌の非薄化です。肌が育たず、ターンオーバーが遅くなるために表皮細胞の数が減って、肌が薄くなる現象です。薄くなった肌を日々ふっくら見せるお手入れを心がけています。私が特に意識しているのは、“つける”とか“塗る”よりも体の中から“飲む”ケアです。
ともあれ、閉経によって美しさのすべてのものが失われると思い込まないでほしいです。こころがけるべきは清潔感だと私は思っています。
齋藤 薫 さん
美容ジャーナリスト・エッセイスト

さいとう・かおる 美容ジャーナリスト。エッセイスト。女性誌編集者を経て独立。多数の女性誌やウェブメディアに連載を持つ。朝日新聞「ボンマルシェ」では2010年の創刊年から現在に至るまで連載エッセイ「美しい歳の重ね方」を継続中。この連載エッセイをベースにした『“一生美人”力』シリーズ(朝日新聞出版)、『大人の女よ!清潔感を纏いなさい』(集英社文庫)など著書多数。
『年齢革命 閉経からが人生だ!』
(文藝春秋刊)定価1,500円+税
およそ50年にわたり日本の美容業界を見つめてきた美容ジャーナリスト・齋藤薫さんが贈る、人生100年時代の美容&ライフスタイル教典。日本人口の半分以上が50代以上の今、人生のピークは後半にシフト。閉経など、体に起こる大きな変化を乗り越えたあと、なお続く人生をより豊かに生きるためのヒントが詰まった一冊です。
「〝49歳がいちばん不幸〟説の真実」「50代を過ぎて、何この心地よさ?」「60代から60代前半に語彙力がピークに」など、年齢観をアップデートするエッセイに加えて、「清潔感が増す引き算メイク」といった具体的なメソッドや、コスメ・グッズの情報や、約50年の盟友・藤原美智子さんとの対談も掲載。