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既知と未知の境界を踏まえ正解のない問いに向き合う

日本大学医学部准教授
日本大学医学部附属板橋病院
外来医長 不整脈センター長 永嶋孝一さん

 生命に関して人類が解明できていないことはたくさんある。むしろ、わからないことの方が多い。その謎や問いを見つけ出し、向き合い、一つひとつ解決の糸口を探っていくことが医学の魅力であり、奥深さだと永嶋孝一さんは言う。不整脈を専門とし、治療・教育を行う現在に至るまで、何を思い、どのような道を歩んできたのかを聞いた。

一つひとつの問いを根本理解する重要性

 高校2年生の時、永嶋さんは週に何度も日本大学医学部附属板橋病院へ通っていた。当時中学生だった弟が入院していたからだ。「弟は脳腫瘍(しゅよう)を患い、2年足らずの闘病で亡くなったんです。弟の方が医師になりたいという目標を明確に持ち、勉強もしていました。その弟が亡くなったことで、自分の中の医師になりたいという思いが『なんとなく』から『本気』へと切り替わりました」

 受験では「得意を伸ばす」選択をし、問題を根本から理解することを徹底した。「現在の研究においてもそうですが、受験勉強でも仕組みをしっかりと理解しないと応用がきかず、先へ進めません。一つひとつの問いに対して原理を理解すること、わかった気にならないことは、医師になってからも常に意識しなければいけないと思っています」

 また、当事者であった時にはわからなかったが、受験勉強のような詰め込み型の勉強も「既知と未知の境目を、はっきりさせるために欠かせない学びであり、無駄なことは一つもない」と話す。「きちんと勉強し、目の前の問いに対して機序を理解しようとする習慣を持っていれば、人類にとってどこまでが既知で、どこからが未知なのかがはっきりと見えてきます。そうすれば、未知に対してどのように目標を立て、それを解き明かしていくためにはどうしたらよいかという道筋も見えてくるはずです」

一冊の本に導かれ不整脈の世界へ

 医学部6年生のオリエンテーションの際、授業開始のギリギリに教室に駆け込み、最前列しか空席がなかったため、そこに座った永嶋さん。「当時、暗黙の了解で最初の授業で座った席にその先も座らなければならないという教室でした。授業の際に毎回当てられるので、真面目に勉強しないとまずいと思い、苦手だった分野を理解するために購入したのが山下武志先生の『心筋細胞の電気生理学』という本でした」

 一冊の本との幸運な出会いによって理解が深まり、心電図の仕組みを理解することができた」と言う永嶋さん。大学院は山下さんのもとで学び、米ハーバード大学への留学などを経て「日本大学の医学部循環器内科の部長でもある奥村恭男先生とともに不整脈を極めたい」という思いでカテーテルアブレーションによる不整脈の治療と学生への指導にあたる。

 「医学の研究では、正解のない問いに向き合い、世界が納得できる解にたどり着けるかが問われます。これから医学の道に進む人には、正解のない問いに向き合う力を身につけてほしいですね。不整脈の世界もわからないことだらけですが、患者さんの治療にあたりながら、生きているうちに『こうすればこの不整脈は完全に治る』という治療方法を見つけたいと考えています」

ながしま・こういち/2005年日本大学医学部卒業。米ハーバード大学留学などを経て、日本大学医学部准教授、日本大学医学部附属板橋病院不整脈センター長。現在、大学・病院を超えてEP大学(不整脈治療の勉強の場)を運営する。

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