人生100年時代の言葉に込められた意味は?
檀 第1部でご講演いただいたお二人と共に、パネルディスカッションを進めていきたいと思います。このシンポジウムでもテーマになっている「人生100年時代」という言葉は、小泉大臣が使い始めたそうですね。
小泉 私はずっと社会保障の問題に取り組んできました。それまで「人生80年」でいろいろ考えていましたが、もう世の中の形と合わなくなってきた。すでに女性の平均寿命は87歳を超えましたし、100歳以上の人口も約7万人に達し、すでに私の地元の選挙区の三浦市の人口を超えました。国として考えるべきは、人生80年型を維持することではなく、100年生きても大丈夫という政策ではないかと。人生100年時代という言葉を思いついたきっかけの一つは、テレビCMです。100人乗っても大丈夫、100年生きても大丈夫、これだと(笑)。
檀 確かに100歳以上の人は増えていますね。人間の寿命はどこまで延びるのでしょう。
横倉 生物学的には115~120歳と言われています。平均寿命の延びには医学・医療の進歩が大きく貢献しています。しかし、いくら長生きしても元気でいなければ充実した人生を過ごすことはできません。平均寿命と健康寿命の差をどう縮めていくかが大きな課題です。
どんな死に方をしたいか日頃から考えておこう
檀 人生100年時代ということでは、どう自分の人生の終焉(しゅうえん)を迎えるかという課題もありますね。お父様の純一郎さんはお元気ですか。
小泉 元気すぎて困るぐらいです(笑)。私が父に感謝していることの一つは、どう死にたいかを子どものときから常に話してくれたことです。私と兄の孝太郎に「自分の口で食べられなくなったときは終わりだと思っているので延命はするな」と常々言っています。実際、親父(おやじ)は尊厳死協会に入っています。自分の親がどういう死に方を望んでいるかを、私も兄もわかっているので、それはすごくありがたいです。
横倉 ただ、親がちゃんと伝えても、子どもは迷うのですよ。
檀 私も、誤嚥(ごえん)性肺炎に腸閉塞(へいそく)を起こして、入院先で体中チューブだらけになった母を見て悩みました。母は「家に帰して」と懇願するけど、お医者様は「いまは家に帰すときではない」とおっしゃる。どちらを優先していいのか本当に辛かった。結局、兄妹と相談して家で看取りましたけど。
横倉 どんなに長生きしたとしても、いずれ私たちは死にます。そこで、国では終末期医療のあり方としてアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を推奨しています(下記解説欄参照)。
医師は命を助けることが一番の使命ですから、なにも意思表示していないと全力を尽くします。自分の終末期は鼻からチューブを入れてほしくない、胃に穴を空けてまで栄養を補給するのは嫌だということを書いておけば、医師はそれを尊重します。尊厳ある死を迎えるためにも家族やかかりつけ医等も交えてぜひ話し合いをし、その結果を何らかの形で残しておいてもらいたいと思います。
ACP(人生会議)とは
ACP(Advance Care Planning)とは、将来の意思決定能力の低下に備えて、患者、家族、医療・ケア提供者等とケア全体の目標や具体的な治療・療養について話し合うプロセスのことをいいます。厚生労働省はその愛称を「人生会議」と定めました。
がんの終末期のように命が差し迫った状態になると、多くの場合、こう死にたい、こうした治療・ケアを受けたいなどといった自身の希望を人に伝えることが難しくなります。人生の最終段階まで自らが望む医療・ケアを受けるためには、前もって家族や医療・ケア提供者などと話し合い、その考えを共有しておくことが大切です。ぜひ、元気なうちに「人生会議」を開いて、自身の生き方や終末期の迎え方などを話し合っておくとよいでしょう。
終末期医療 ACPから考える
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●患者さんの意思を尊重した医療及びケアを提供し、尊厳ある生き方を実現することがACPの目的です。
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●医療及びケアの提供は、患者さんの意思が一番大事です。それを確認するために、ACPの実践が必要です。
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●患者さんが意思を明らかにできるときから繰り返し話し合いを行い、その意思を共有することが重要です。
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●患者さんの意思が確認できなくなったときにも、それまでのACPをもとに患者さんの意思を推測することができます。
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●かかりつけ医を中心に多職種が協働し、地域で支えるという視点が重要です。
※横倉会長スライドより
人生100年時代を元気に過ごすためには
檀 人生100年時代は、健康寿命が短ければデメリットも出てきますね。
横倉 やはり健康で100歳が理想です。女性は膝(ひざ)を痛めたりして歩きにくくなる。すると歩かなくなり、徐々に体力が落ちてきて健康寿命が短くなります。ですから、できるだけ筋力を強めるような運動を毎日続けることが大事です。ラジオ体操や散歩がお勧めです。
檀 小泉大臣の健康法は?
小泉 健康の秘訣(ひけつ)の一つは、ストレスをどう管理するかにあると思っています。政治の世界にいること自体がストレスのようなものですからね。大事なのは、自分がこの世界を選んだという自己決定です。人が一番ストレスを感じるのは、自分がやりたくないことをやっているときではないでしょうか。あとは、ストレスを感じるようにと意識しています。感じないのが一番怖いですから。
そして、ストレスを感じたら「今日はたまっている仕事を全部やめて寝よう」と。仕事の準備は切りがないですよね。いくら準備を重ねても、睡眠不足で翌日のパフォーマンスがよくいかなければ意味がない。そこは結構割り切るタイプです。
檀 個人的には、ぼけないようにもしたいです。
横倉 認知症の原因の一つは孤立です。1日誰とも話さないという日はないですか? そういう日をできるだけ少なくすることも必要なことだと思います。
小泉 認知症になることを完全に防ぐことはできないと思います。大事なことは、認知症になっても生きやすい社会環境をどうやったらつくれるか。いま東京の町田市が頑張っていて、視察に行きました。認知症でも働き場所があったり、誰でも参加できる認知症カフェのような場所があったりする。そこでは、認知症の人だけでなく、面倒を見ている家族も悩みを打ち明けられる。そういった環境を、各地でもっと広げていきたいと思っています。
檀 どんなに年を取っても、世の中に関わっていきたい、役に立ちたいという気持ちがあって、それが人を輝かせる気がします。私の母も晩年の10年近く認知症でしたが、裁縫が得意だったので「刺し子でふきんをつくりたい」と、最後まで指を動かしたがっていました。何かの役に立つ場をつくる、その場でみんなとコミュニケーションがとれるというのは、すごくよいことかもしれませんね。本日はどうもありがとうございました。