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世界に羽ばたく
高校生サイエンティストを
応援

花王は理科・科学分野の教育を支援し、次世代の研究者育成に貢献するため、科学技術コンテスト「JSEC」に2005年から協賛しており、優れた研究に賞を贈ってきた。JSEC上位入賞者は、アメリカで開催される世界大会「ISEF」にも参加。4月には花王賞と花王奨励賞を受賞した高校生が花王の研究現場を訪れ、研究発表とスタディツアーを行った。

花王賞を受賞した静岡理工科大学静岡北高等学校。左下写真の省エネクーラーを額に装着して発表を行った

研究発表発表を通して深まる
自らの研究への洞察

JSEC2024において花王賞・花王奨励賞を受賞した高校生の研究成果とその取り組みをたたえ、その副賞としてスタディツアーを開催し、研究発表の場には、会場参加に加えオンラインでも多くの社員が参加した。

今年は偶然にも静岡北高等学校が花王賞・花王奨励賞を受賞。花王賞のチームは、一方のペルチェ素子の廃熱を別のペルチェ素子で電力に変換すると加熱面の温度上昇が抑制され、冷却効率が促進されることを発見。産業界で利活用が急務の低温廃熱を用いた省エネペルチェクーラーの開発を目指し、研究を続けている。今回の発表には、昨年の12月のプレゼン時に研究者からリクエストのあった装置を持参し、装着して発表を行った。

花王奨励賞のチームは、現在の主な二酸化炭素回収法であるアミン法には資源の不足と120度の熱を要することを課題に挙げ、安価な海塩から得られる炭酸ナトリウムを用いた二酸化炭素の回収を模索する。世界的課題に取り組む姿勢には大きな拍手が湧いた。

早稲田大学 高等学院は、飼育する爬虫(はちゅう)類の餌であるミルワームが発泡スチロールを食べているのを見たことをきっかけに、プラスチックを自然に返す循環システムに貢献できないかと考え、実験と観察を開始。ミルワームを用いたプラスチックごみ問題の解決を目指している。

スタディツアー生活をより豊かにする
研究の現場を体験

すみだ事業場の「花王ミュージアム」では、清浄文化の移り変わりや時代に合わせて革新を続ける花王のものづくりについて様々な展示物を通して学んだ。若手研究者との交流では、ヒューマンヘルスケア研究所の山本真也さんが現在の仕事やこれまでの進路の選び方についてプレゼンし、生徒たちは、年齢の近い研究者に「なぜ今の研究を選んだのか」「進路のターニングポイントは」など次々に質問を投げかけた。さらに、研究・戦略企画部の永長まゆみさんは、進路や働き方について「その時の好きに素直になって考えて決断してきた」と話し、生徒らは深くうなずいていた。

研究所の見学では、最初に感覚科学研究所を訪問。匂いの化合物は約40万種類あること、そのうち人間が分類できるのは1万種類ほどだということなどを学び、実際に調香が行われる研究室を見学した。次に訪れたのはヘアケア研究所。シャンプーの泡と、泡タイプのヘアカラーを実際に触り比べ、商品によってその性質や感触を変えていることを肌で体感した。

2日間の体験は、生徒らの好奇心を刺激し、自らの研究にさらに打ち込もうという気持ちも後押ししたはずだ。花王はこれからも若い人たちの科学への興味・関心を広げ、純粋な探究心を後押しするために様々な機会を創出し、貢献し続けていく。

\ 高校生・高専生科学技術
チャレンジ(JSEC)の受賞校 /

花王賞
低温蓄熱とペルチェ素子を
組み合わせた省エネクーラーの開発
静岡県 静岡理工科大学 静岡北高等学校 
竹下香穂さん、古井咲良さん、佐藤茉愛沙さん
ペルチェ素子に電力を供給すると、片面の温度が下がり、別の面の温度が上昇する。冷却に利用するには、素子に供給する以上の電力を用い、冷却ファンなどで別の面を冷やす必要があるため、別の面で発生した熱を蓄熱材にためた後、別のペルチェ素子で電力に変換した。その結果、液体と固体の状態変化によって蓄熱する蓄熱材を用いると、融解温度付近で、冷却と電力変換が促進されることを発見した。
研究への思い
境界を広くして実験を繰り返した結果、市販のぺルチェクーラーより素子が冷却に要する電力、素子を冷却する電力、装置の体積を減少できる可能性を得たため、小型化かつ省エネ化が期待できました。今後は、蓄熱材が運ぶ熱量と別の素子による熱電変換のバランスを整え、冷却の持続性を高めていきたいと考えています。
非常に面白く、かつ世界中での温暖化が進む中で意義のある研究だと感じました。昨年の発表の際に「実際のものを見てみたい」とリクエストしたら、本日の発表に持ってきてくれてとても感動しています。世界には、同じような研究がいくつもあると思いますが、今後は類似の研究から自分たちの研究に新しさを見いだしてほしいと思います。
花王株式会社 研究開発部門 生物化学研究所
目黒真一さん
花王奨励賞
炭酸ナトリウムを用いた
二酸化炭素回収の検討
静岡県 静岡理工科大学 静岡北高等学校 
萩原健登さん、山下颯斗さん
本研究では、豊富で安価な海塩から得られる炭酸ナトリウムを用いた低温でのCO2回収法を検討。固体の炭酸水素ナトリウムは120度で熱分解するが、水溶液に界面活性剤を添加することによって、夏季の40度の気温で、電力を消費せずCO2脱離が可能であることが確認された。また、中性洗剤によって活性化エネルギーを大幅に低減させ、個体の炭酸水素ナトリウムの熱分解が促進される触媒的な作用が示された。
研究への思い
個体の炭酸水素ナトリウムを利用したこの研究では、電力消費の抑制と資源の持続可能性の両面において優れており、特に夏季の自然エネルギーを活用したCO2回収の実用性が示唆されました。私たちの住む静岡県でも夏に40度を超える日が観測され、有効なCO2回収方法を実用化させ、地球環境に貢献できればと思っています。
CO2を吸収するだけではなく、最近は農業などで農作物の成長を促すのに役立てるというような試みもあります。この研究が例えば小型で導入できたりすれば個別の農家でCO2を吸収し、地産地消するという可能性も考えられるなと思って聞いていました。研究の先に新たな可能性を模索しながら、これからも続けてほしいと思います。
花王株式会社 研究開発部門 研究戦略・企画部
三宅登志夫さん
花王奨励賞
腸内細菌叢の観点から見た
ミルワームの特異的な
食性と消化について
〜新しい発泡スチロールの
処理方法の確立に向けて〜
東京都 早稲田大学 高等学院 
石田那央さん
本研究では、ミルワームを発泡スチロール、人工餌、何も与えない班に分け、体重の変化を測定。次に、抗生物質を与えたミルワームに発泡スチロールを与え、捕食行動と消化を観察した。その後、発泡スチロールまたはパン粉を与える二つのグループに分け、糞(ふん)を採集して腸内細菌叢(そう)を解析。実験の結果、ミルワームは発泡スチロールをエネルギー源として利用できることが確認された。
研究への思い
研究によってミルワームの腸内細菌叢が発泡スチロールの消化に関与していることが明らかになりました。今後、全ゲノム解析を通じて消化に関与する酵素の特定が期待され、この知見はプラスチックごみ問題解決に向けた新たな手法として、ミルワームの新たな利用可能性を示していると考えています。
ミルワームが発泡スチロールを消化できる腸内細菌叢を持っており、その菌が培養できるという大変興味深い結果でした。発表の最後の展望の部分、ミルワームを餌としている爬虫類などに移植する可能性を探ったり、発泡スチロール以外のプラスチックを消化できるのかを実験したりするなど、まだまだ可能性に満ちている研究だと思いました。
花王株式会社 研究開発部門 ヘアケア研究所
長瀬忍さん

〈世界大会 ISEF〉
高校生らの国際科学大会ISEF
花王賞の3人も日本代表として参加

「国際学生科学技術フェア(ISEF)」が5月10日から7日間、米コロンバスで開催され、花王賞の静岡北高等学校の3名も大会に挑んだ。60を超える国と地域から参加の高校生は約1,700人。 JSECからは12研究で19人が参加し、横浜市立南高等学校出身の西田優美奈さんが環境工学部門、筑波大学附属駒場高等学校出身の田中喜大さんが物理学・天文学部門で優秀賞に選ばれた。 ISEFに出場した日本代表には、文部科学省から文部科学大臣表彰や文部科学大臣特別賞の受賞が発表された。

2021年花王賞受賞 松井了子さん

課題研究が紡ぐ
人とのつながり

私は高校生のころ、「熟成梅酒が琥珀色になる理由」という研究で花王賞をいただき、JSECを経てISEFにも参加しました。当時はオンライン参加でしたが、国を超え研究を通して交流・共有したことは、大きな刺激になりました。現在は筑波大学で超分子に関する研究をしており、研究対象にフェノールフタレインを選んでアイデアを膨らませています。皆さんにも研究はもちろん、研究を通して出会えたつながりを大切にしてほしいと思います。

【ISEFとは】 「International Science and Engineering Fair」の略で、「国際学生科学技術フェア」などと和訳されている。世界60以上の国と地域の約1,600人の生徒が自分たちの研究を披露する科学研究コンテスト。約70年続いている伝統あるフェアで、毎年5月にアメリカの都市で開催される。運営主体はワシントンにある非営利団体のサイエンスサービス「Society for Science」。

未来を創る若き探究者を応援し、
共に持続可能な社会を目指して

久保英明さん
(花王株式会社常務執行役員 研究開発部門統括)

JSECは、若い世代が自由な発想と純粋な探究心で科学に挑む、かけがえのない舞台です。花王は、JSECを通じて、自ら問いを立て、答えを導き出す力を育む経験が、やがて社会や地球課題の解決につながっていくと信じています。私たちもまた、異なる分野との対話や連携を通じて新しい価値創造に取り組んでおり、次世代の皆さんと共に、より良い未来を築いていけることを願っています。

集合写真

高校生、引率の教員と花王社員との記念撮影