「KAIGO LEADERS SCHOOL」は介護・福祉の領域で活躍するプレイヤーが仲間と共に学び・成長することを目的としたスクールです。スクール開校初のプログラムでは、「介護の仕事の魅力発信」に焦点を当てた3つの講座をスタート。介護の仕事の魅力を自らのSNSや社内外のメディアで主体的に発信するスキルや地域の人と新たな関係性を築く「場づくり」の企画・運営スキルの習得を目指します。
地域包括ケアシステムにおいて、施設は地域の社会資源として開かれ、住む人や多様な主体と関係性を築くハブとしての役割が期待されています。高齢者の社会的孤立が進む中、施設が地域と接続する「場」を持つことは、利用者の社会参加や生活の質の向上につながります。
「場づくり」はそれ自体が目的ではなく、地域を巻き込みながら関係性を育むための手段です。利用者との共創的な関わりを生み出すことで、地域の人々が介護・福祉の仕事に触れる機会が生まれ、その魅力や価値への理解が深まります。こうした取り組みは、介護・福祉の仕事への親しみや関心を高め、新たな担い手の創出や地域における価値の再発見にもつながっていきます。
今回「KAIGO LEADERS SCHOOL」で学べる「SNS」「ライティング」「場づくり」の3つの講座の中から「場づくり」講座を受講した方々の取り組みの中から、朝日新聞が選出した3人の事例を紹介します。
取り組み紹介①
ケアホーム船橋
水野健太郎さん
●企画名「engawa」
「縁側」というワードが持つ「内と外をつなぐ」「誰もが立ち寄れる」「くつろぎ」といったイメージ
●目的
「関わる人たちの楽しみと安心、役割を増やす」
●長期目標
「ケアホーム船橋」という場を、”高齢者と職員が過ごす場”から、”関わる全ての人が自然と集まる場所”に変えたい
●短期目標
①定期的にマルシェを開催する
②利用者家族、ケアマネ、地域住民などに「ケアホーム船橋は入っても良い施設」という 認知をしてもらう
呼び込み対象者
①園児から学童を中心とした子供
②親世代(30代~40代)
●内容
①「engawa」・・・ケアホーム船橋の1Fスペース(デイも含む)の空間づくり
※日常的に人が来て過ごせる空間づくり
②「engawaマルシェ」・・・定期開催
場所:地域交流スペース、駐車場スペースなど
出店:ワークショップ、飲食系など
※基本的には外部からの出店。希望があれば、施設側からの出店もOK。
コメント
当施設は、施設開設後2年でコロナ渦に突入し、その後も地域と関わる機会が少ないままという状況でした。
ひとまず、この状況を変えたいとだけ思い、KAIGO LEADERSの研修に参加させていただきました。始めは「場づくり」=「施設を地域に開く」ということと考え、これに対して少しでも学べたらいいなという感じで受講しました。しかし、研修を通して「”場づくり”とは何か」ということを掘り下げて考えていくうちに、「場所や機会、環境」がもたらす「人の反応」、もっと言えば「感動」といったことに結びつくものが「場づくり」であると考え始めました。
今、「ケアホーム船橋」という場は、家族様の関りはあるものの”高齢者と職員が過ごす場”という雰囲気です。ただ、ここに「家族」や「ケアマネジャー」、「地域の方々」など“施設に関わる全ての人が自然と集まる場所”に変わったら、今以上に「利用者や職員たちの楽しみや安心、役割を増やすことができるのではないかと考えています。
企画名の「engawa」は、今はあまり見なくなりましたが「縁側」でご近所さんとのんびりお茶を飲みながら話をしているというようなイメージからつけました。「内と外をつなぐ」「誰もが立ち寄れる」「くつろぎ」といったことができる・得られる場所に施設がなっていったら良いなという想いです。
この第一歩として、地域の方々の協力を得ながら施設内でマルシェの開催を企画しています。このマルシェ開催をきっかけに、施設は「入っても良い所なんだ」という認識を近隣の方々に少しでも持っていただき、ゆくゆくは近所の子供たちやその親の方々、高齢者の方々などが何かをきっかけに集まってくる場所に出来たら良いなと考えています。もちろん、日常的に集まるためにもきっかけは必要だと思いますので、そのあたりも考えていかないといけないんですが。グループ内の事業所では、駄菓子屋さんをきっかけに子供たちが入ってきている所もあるので、真似してみるのも良いかなとも思っていますが、まだ未定です。
私は、介護という仕事は「正解がないから魅力的」と感じています。今まではそれを具体的な言葉にできていませんでいたが、振り返ってみると自分の行動を通して利用者さんの様々な反応(感情の変化)を引き出すような「場づくり」を直接体験することができるからかなと今は思います。
今後、もっともっと介護の現場が魅力的にしていけるよう頑張っていきたいと思います。
取り組み紹介②
結城市南部地域包括支援センター青嵐荘:社会福祉士
織原 大さん
●企画名「ラブ・ハザマーProject」
「制度の狭間(はざま)で困る人」を生まない地域づくりを目指す小さな実践
※地域には、「元気な人」と「介護保険サービスが必要な人」の間にいる“制度の狭間”の人たちが存在する。行政や地域包括支援センターだけでは、介護保険の利用が必要な人を把握・支援することは難しい。家族や地域のつながりが希薄化していることや本人が「困っている」自覚がないことも多い。
これらの理由で支援が届かず、状態の悪化を招くケースもある。この“狭間の人”を「狭間er(ハザマー)」と呼ぶ。
●目的
福祉の現場で働く中で、制度の対象にならない、あるいは支援を拒否しているなどの理由から、公的支援につながらずに困りごとを抱えている方々を見てきた。その影響はご本人だけではなくご家族にも及ぶことがあり、家族関係の維持にも影響が出てしまうことがある。本プロジェクトは、そうした“見えにくい困りごと”を地域住民と発見・共有するため、2025年11月に企画し、同年12月初旬から26年1月中旬まで実践した。
●長期目標
人と人のつながりの中で「小さな気づきや共有」を行い、「ハザマーを生まない地域」を実現する。
▼対象者
「ハザマー」「ハザマーになった人」
・大型店舗の閉店により生活動線が変化し、孤立の危機にある人
・福祉職から見れば支援につながった方が良いが、本人が拒否している人
・任意団体を退団後、心身状態が低下し、地域での見守りが必要と感じられた人
・同居家族がいるが日中は独居状態となり、移動が困難な人
・移動の困りごとを近隣住民が行政へ相談し、バス停の位置が変更された事例
※ケアマネジャーなどの専門職からは、ハザマーやハザマーになる可能性が高い人は一定数いて、今後のケアマネジャー業務に不安を感じているとの声も聞かれました。
●内容
地域の集会やイベントに参加し、参加者に「身近な大切な3人」を思い浮かべてもらう。(この時に、楽しみながら大切な人への思いを語ってもらい、身近に「ハザマー」がいるか、ハザマーとはどのような方々であるのかなどを話題にした)
その後、その3人をプレートに記入し、今後も引き続き大切な人を大切にしながら、少しでも「ハザマー」のために何かアクションをしていきましょう!と思いを込めて、写真撮影を行った。
写真は個人情報保護などに注意しながら管理し、その写真を“バトン”として次の住民へつなぐことで、関心の波及を促した。
コメント
場づくり講座での学びを通じて、私は「場」とは人が集まる物理的空間だけではなく、人と人がやりとりする瞬間そのものも場になると学びました。小さな問いかけや対話の積み重ねが、つながりを生みます。そして、一度生まれたつながりも、対話を重ね、共に困難に向き合う中で「次のストーリー」が生まれます。その繰り返しの場づくり(つながりづくり)の中で、ハザマーへの認識やアクションが少しでも実りあるものにブラッシュアップされ、やがて大きな安心できる場「ハザマーを生まない地域」になるのではないかと感じています。
今後もできる限りにはなりますが、「ハザマーを生まない地域」の実現に向けて取り組んでまいります。
取り組み紹介③
林田 堯之さん
●企画名「人を紡ぐ人と「紡ぎ」時々ときほぐしながら、よりあわせる」
「人を紡ぐ人を紡ぐ」とは必ずしも自分たち自身が常に中心にいることだけがビジョンではないことを意味している。でも僕らの意図しない「紡ぎ」は時に結び目ができたりしてしまう。そこを解きほぐしたり、新しい糸を作り直したり一緒にしていく「意図(いと)」を込めた。
●目的
人間、どんな人でも何かとつながっているというのを図解した軒下マップを作りながらケアを考える視点は大切だと思う。その各自が紡いだ「糸」がどうなっているのかを目で見て、紡ぎなおすのが「場づくり」やひいては「地域に開く」ことにつながると考えている。対象者それぞれがつながる「もの」「ひと」を分解しながら再構築することで、最小限の資源で最大の効果を発揮できたらいいと思う。(近道しようという意味ではなくリソースの量が無限ではないことを意味する)
●目標
①「みんなの図書館をつくる」、②「みんなの食堂をつくる」、③「認知症カフェをつくる」の安定的な活動と④「自己開示する広報力の継続」、⑤「職員を地域のインフォーマルサービス内に貸し出す」の継続力を確保していくこと。職員が変わってもできるシステムを作りたいし、それを理解できるような職員の採用窓口のシステムをさらに高めたい。
▼対象者
地域に住まう人0(地域に住み介護保険を受ける高齢世代) _
地域に住まう人1(10年後介護保険を使う老後が視野に入る世代) _
地域に住まう人2(利用者家族、支援するだけでなく巻き込んでいく対象者にもなる)
地域に住まう人3(新規流入世代、宅地造成してから世代交代した働く世代)
地域に住まう人4(地域に住みながら働く職員)
地域に住まう人5(行政職員/包括支援センター等含む)
●内容
①みんなの図書館をつくる[中から外へ]
本屋がなく、区の図書館から月に1度移動図書館がくるエリアにある。「本」を媒介の一つとし、ふらっと立ち寄れるスペースにしたい。
2025年10月からすでに職員向けに「自分のおすすめ文庫」を開催している。他界した祖母の文庫本も施設に用意してある。始めるのはできるが「周知」に時間がかかるので、イベントチラシ配布とSNS発信などで実行していこうと考えている。紙媒体は近隣へ、SNSは少し遠方でも共感者を増やすという意図。
*みんなの図書館は媒介の一つに過ぎない。
②みんなの食堂をつくる[外から中へ]
「高齢者の個食を防ぐ」という意味を含めたいと考えてはいる。
手始めに11月24日からやっちゃおう!という発信を地域にしたら1件予約が入った。あとは職員の子どもを連れてきたり、利用者さんも家族を呼んだりしたら楽しいかなぁと。子どもを呼ぶにはフリーWi-Fiにして一緒にゲームをするかなぁ?とかまずは楽しく行いたい。予算は初年度持ち出しになる可能性大。
③認知症カフェをつくる[外から中へ]
毎月外部の人も自由に参加できるイベントを7回程度開催しているが、うち2回程度の講師を職員が担っている。その際に地域の方と施設利用者が同席でお茶をすることで、交流を深められるような場、認知症などへの理解を深められる場にしていきたい。11月から実験的にスタート。
④自己開示する広報力の継続[中から外へ] _
職員はどんな思いで介護をしているのか、施設がどんな思いで介護職に働いてもらっているかを隠さずオープンにすることが、地域に住む人たちに自分のことを知ってもらうきっかけづくり。きっと地域のことを知るにはまず自己開示をしないと不審がられる。施設フリーペーパー「キになるジャン」やSNSのnote、インスタグラムや地域の回覧板、施設のチラシポストなど様々な場所や媒体で伝え続けたい。
⑤職員を地域のインフォーマルサービス内に貸し出す[来期以降に継続]
施設でイベントを行う職員が「施設外」にいってイベント講師をしながら施設でもイベントを行うことで、「職員の顔」を「地域の顔」の一つにしてしまおうという企画。地域で「介護保険のこと・小規模のことを話す」のも行っていきたい。こちらは年度計画があるようなので来年度からになる可能性が高い。
すでに川崎の事業所でも行っていたので、現在の事業所でも地域特性に合わせて行っていきたい。職員が地域でボランティア活動をしながらすでに来期の活動場所の話をつけているので、さらに違う場所でもできるように声掛けをしていきたい。
コメント
多くの事業所や職員は「目の前の人(利用対象者)」を見ており、視野が狭くなりがちです。支援対象者、利益に直結する利用者、明確な支援を求めている人の場合はわかりやすく、地域という「人を」指さない言葉は会社や職員には響きにくいものです。職員にいかに紡ぐことを役割とするか職員や私自身がいかに地域に対して「ともに」人を紡いでいけるかが課題だと感じています。そこで上記①〜⑤のような企画を考え、実践しています。これらの継続的な運用を続けつつ、職員の採用などについてもその方法や窓口についてさらに検討していく予定です。