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PR : 学校法人KTC学園 屋久島おおぞら高等学校・おおぞら高等学院

――はじめに、屋久島おおぞら高等学校の校長に就任されての思いを。
時代が変わり、教育のあり方も変わってきています。個性、創造性やコミュニケーションといった点で新しい学び方が模索される時代です。当校のような通信制高校は、学力をちゃんとつけつつ、自分の個性を生かして能力を発揮していく上で、一つの機会となり、なりたい自分を実現する道にもなるでしょう。
世界がよりよい場所になるためにも、次世代を育むことはとても大事なこと。脳科学でそういう研究をしており、関心があります。屋久島おおぞら高等学校とは、校歌を一緒に作るなどいろんなご縁があり、私にできることがあるならやらせていただきたいと思いました。
――校長として、どんな教育をめざしますか?
言葉で自分を表現できるスキルを身に付けてほしい。今の時代に一番必要なことだと思います。人工知能の発達で、学力の意味付けも変わってくると思います。単純な記憶力は要らないかもしれないし、計算力もそんなに必要ないかもしれない。コンピューターがやってくれるから。でも、自分を自分の言葉で表現するというのは人工知能はやってくれないんです。
例えば作文を読む人は、書いた子のことを知りませんが、「こういう子なんだ」と伝わるスキルを持つことは大事です。時間や場所を合わせなくても伝わる「非同期コミュニケーション」が今の時代、重要です。
いわゆる普通の、毎日学校へ通う学び方も素晴らしいことですが、いろんな学び方があり得て、これからの時代、本当にいろんな働き方、生き方が出てくる。この学び方が自分に合うと思って入学した生徒にとって、充実した学びがあり、幸せになれる学校にしたい。自分が行ってみたかったと思えるような。
勉強ができる、足が速い、絵がうまい、とかいろんな個性があります。東大をめざす人はめざせばいい。漫画やアニメをやりたい人はやればいい。アメリカの大学へ行きたい人は行けばいい。
社会ではいろいろな個性の人が協力し合って仕事をすることですごい力がでます。現在は、ネット上で発表した絵に抜きんでた個性があれば、プロからいきなり発注がくる時代。そういう生徒が出てきてほしい。
――どうすれば個性を見つけ、伸ばせるでしょうか?
まず自分を見つめ、長所と短所を知ること。一つのことに集中しきれない人はいろんなことに興味を持って結びつけられることもあります。長所と短所は表裏一体。もう一つは、自分が何に喜びを感じるか。私は子どもの頃から好奇心で何かを発見することに一番の喜びを感じていました。喜びを感じるものは個性の伸ばしどころだと思います。

――茂木校長の考える「なりたい大人」とは? 中学生の頃を振り返るとどうでしたか?
中学生の頃の夢は多くの場合、変わっていきます。私もその頃から脳科学者になるという夢を抱いていたわけではなく、アインシュタインのように物理学をやりたいと思っていました。中学生の時に考える具体的な職業や進路は一つの仮定で 、後の出会いなどで変わるかもしれない。一方で、「三つ子の魂百まで」と言いますけど、自分らしさは変わらなかったりするんです。
私の場合、中学生の頃から思っていたのは「世界で通用するようなことをしたい」ということ。きっかけは、世界の国への好奇心だったと思います。英語で論文を書いて学会で発表し、国を超えて価値ある情報を共有する科学は、まさにそうでした。
今もし自分が中学生だったら、外国の人とメールでやりとりしていたでしょう。当時も海外の学者に手紙を送ったり、南アフリカの子と文通したりと、できることをやっていました。その時代でやれることを一生懸命やってほしいと思います。
みなさんの中には、人の役に立ちたい、きれいなものを作りたい、スポーツや音楽に関わりたいなど、漠然とした思いがあるのではないでしょうか。中学生はそういうものが一番芽生えてくる時期です。その頃の夢は漠然としているからこそ大きいんです。
――でも、大人は「確実な将来を考えなさい」と言いがちです。
親の世代が思う職業の多くはおそらく人工知能などが出てきてなくなっていきます。片やユーチューバーなどの新しい職業が生まれています。子どもの方が親よりも未来を知っているのではないでしょうか。未来は自分たちのものですから。
私はこのコンクールから学ばせてほしいと考えています。大人が頭に描く模範解答ではなく、今の中学生はこんなことを考え、こんな世界を見ているのかと、知らなかったことが書かれているのではと、楽しみにしています。
――文章で表現する意義は何でしょうか?
中学生の頃の脳は、チョウが幼虫から成虫になる途中のさなぎの状態。脳の発達は前頭葉が一番遅く、思春期には前頭葉を中心に、社会性の、つまり他人と向き合い、協力し合い、コミュニケーションするための回路が、劇的に変わっていくことがわかってきました。
中学生は、自分の得意なことや苦手なことがだんだんわかってきます。その時期にこうした作文を書くことは脳の成長を促し、とてもよい学びになると思います。
長い文章より書くのに時間がかかることもありますが、若い世代はSNSで、短い文章で表現するリテラシー(活用能力)が上がってきています。ひょっとしたら、すごい才能の書き手が出てくるかもしれません。
――全国の中学生、また、指導される先生方へメッセージを。
中学生のみなさんに、このコンクールで自分と出会ってほしい。自分と出会うというのは、自分がこんな人で、こんなことが好きで、こういう夢を持っていたということがわかること。この機会にチャレンジしてください。
自分を知っている子は勉強も、何事も頑張れます。先生方には、学習や生活全般で生徒とよりよい向き合い方、取り組みができるきっかけになると思います。指導のビタミン剤になるのではないでしょうか。
作文を書く機会が少ないのは日本の教育の課題の一つと言われています。しかし、大学入試でも最近は小論文が重視され、アメリカの大学の入試は、ここで何を学んでどういう人になりたいかを書く、このコンクールそのものが行われています。個性をいかに表現するかという、教育の根幹に関わるものです。
はっとさせられるのは、整った文章よりも、子どもらしい発想や個性があるものです。ぜひそういう文章に、キラッと光る原石に会いたいと思います。


中学生は、自分のことを知り、将来やりたいことにつなげていく大切な時期です。それは自分と出会うことであり、そのためにも「なりたい大人」について考え、文章を書くのはとてもいいことです。脳の前頭葉が自分はこういう人だと認識するプロセスを、書くことが助けてくれます。みなさんの夢を大きく膨らませるためにも、そして、自分というかけがえのない存在をよく知り、自分と出会うためにも、ぜひコンクールに参加してください。
●プロフィール/もぎ・けんいちろう
1962年東京生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了、理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア(意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感)」をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。2021年4月、学校法人KTC学園 屋久島おおぞら高等学校の校長に就任。