恒真な命題と証明可能な命題の一致ゲーデルの完全性定理

不完全性定理に先立ち、ゲーデルは 1階論理1階論理】1階述語論理ともいう。「すべての𝑥 」といった量化の範囲が個体の領域のみにとどまる。2階論理の場合には、その範囲が個体の集合にも及ぶ。 の完全性定理を証明した。当時の主流だった ラッセルの型理論【ラッセルの型理論】イギリスの哲学者・論理学者ラッセルがホワイトヘッドと共同で構築した数理論理の体系。パラドックスを避けるために階層構造を導入している。 に対して、ヒルベルトは数学的構造を一つ固定して、その要素だけに「すべての𝑥 について(∀𝑥 )」や「ある𝑥 が存在して(∃𝑥 )」という量化表現を用いる1階論理を定式化し、すべての構造で成り立つ(恒真な)1階論理式は論理の形式体系で証明できると予想し、公に問うた。それを直ちに解いたのが学生のゲーデルで、1階論理の 恒真性【恒真命題】命題論理においては各原子命題の真偽にかかわらず常に真となる命題のことで、トートロジーとも呼ばれる。階論理においては、任意の数学的構造において成り立つ命題のこと。 と証明可能性が一致すること、ないし任意の体系Sに関する次の主張を完全性定理と呼ぶ。「Sで命題Aが証明できる⇔Sのすべての モデル【モデル】ある形式体系(公理系)に対しその公理をすべて真にするような数学的構造のこと。Aが成立する」。さらに、ゲーデルはこれを応用して、「Sのすべての有限部分がモデルをもつならば、S全体もモデルをもつ」というコンパクト性定理も導いた。その後、ヒルベルトと ベルナイス【ベルナイス】1920年代、ヒルベルトの数学基礎論の研究を全面的に支えた。ユダヤ系のため1930年代にはナチスを逃れてスイスに移りながらも、ヒルベルトと共著で第二不完全性定理の証明を完成させた。 は、これらの定理が算術体系内で形式的に表現し証明できることを示した(算術化された完全性定理)。