1階論理では標準モデルと区別できない超準モデル

自然数論には、自然数全体からなる標準構造がある。この構造で成り立つ1階論理式の全体を真の1階算術TAと呼ぶTAには標準構造以外のモデル(超準モデル)も存在する。超準モデルには、すべての自然数より大きな無限大の要素が存在する。同様なことは、実数論についても言える。無限大の要素 c が存在すると、実数論のモデルでは1/c も存在して、これはどの標準正実数より小さい無限小の要素ε になる。微積分の計算の際に非公式に使われるΔxが要素として存在しているから、微積分の議論が容易に展開できるようになる。

TAは完全であるが、TAの公理を具体的に規定する手段が与えられていないので、通常の意味では形式体系とは言えない。

いま、1n 個足し合わせた式 1+1+ ・・・ +1n* で表し、新しい定数 c を用意する。そして、すべての自然数 n に対し、命題 n* < cTA に加えて TA' とする。 TA' の任意有限部分に対しては、標準構造上で c を十分大きい自然数に取るとモデルになる。よって、コンパクト性定理から TA'全体もモデルを持つ。しかし、c はどの自然数よりも大きな無限大の要素だから、そのモデルは標準構造と同型でない。超準モデル上では n* < c < c +n* < c +c < cc などが成り立つ。同様なことは、実数論についても言える。無限大の要素 c が存在すると、実数論では割り算も使えるので、1/c が存在して、これは任意の標準正実数 r より小さい無限小の要素 ε になる。例えば、0 < ε・ε < ε < ε + ε = < r などが成り立つ。