体操を楽しむことが原点 「いつか自分も」世界の舞台へ
体操 女子の次代を担う選手の一人として、注目されている高校生がいます。2024年9月の全日本シニア体操競技選手権 では世界大会で実績を残す杉原愛子選手と並んで種目別の跳馬で優勝を果たし、個人総合は4位入賞。神奈川県のアスリート、 馬場紗里選手(バディ塚原体操クラブ所属)は「すごく自信になりました」と胸を張ります。ただ、少し悔しさも残ったようです。「4位まできたので、もう少しこうしていればって……」。今後は持ち味の力強さに加え、課題の表現力にも磨きをかけていくつもりです。幼少期から自分のできないことに挑戦し、成功体験を重ねてきました。
はじめてのバク転成功でのめり込む
生まれ育った神奈川県川崎市内で体操をはじめたのは3歳の頃。保育園のうんていで、後ろ向きに進んでいるところを見た園長先生から「運動神経が他の子とは違うから何かやれば絶対に伸びる!」と言われたことがきっかけでした。「最初はできないことばかりでしたけど、それができるようになるのが楽しくて」。ここまで打ち込めるものを見つけるきっかけをくださった園長先生には本当に感謝しているそうです。
小学校1年のときにはじめて成功させた“バク転”は、今でも覚えています。「他の技ももっとやってみたいと思うようになりました」。小学校低学年で出場した東日本ジュニア体操競技選手権 は、深く記憶に残る大会です。大きな会場に胸を躍らせ、応援に駆けつけてくれた両親の前で精いっぱいの力を出せたと言います。すべての種目をやり遂げたことに喜びを覚え、心から体操を楽しみました。初の大舞台での心持ちは、競技生活の原点になっています。
競技レベルが上がるにつれ、全国各地に遠征するようになりました。年齢を重ねると、現実的なことも見えてきます。両親への経済的な負担を少しでも減らしたい――。その思いが明治安田「地元アスリート応援プログラム」 に応募するきっかけの一つでした。地元アスリート応援プログラムを活用している体操選手がいることを知り、自らホームページをチェックしました。支援してもらうだけではなく、自ら地域貢献をするという趣旨に共感を覚えました。
思い返すと、体操の面白さを最初に教えてくれたのは川崎市内の体操教室。「年上のお姉さん、お兄さんにいろいろ教えてもらい、『うまくなったね』と声をかけてもらったこともありました」。次は自分が地元に恩返しする番だと、ひしひしと感じています。
地元でのさつま芋掘りは良い思い出
川崎への愛着は昔も今も変わりません。畑が残る原風景を頭に浮かべると、ふと笑みが漏れます。「川崎市の麻生区などにはまだ多くの自然が残っています。小学生の頃に農家さんの畑でさつま芋掘り、落花生掘りをしたのは良い思い出。今でも行くんですよ。そこで掘って食べると、すごく美味しくて」。体操選手は体重を厳しく管理しているイメージがありますが、馬場選手は少し違うようです。「私は食べたいものを食べながら気をつけています」。麻生区で採れるさつま芋と落花生には、いつになっても目がありません。
土とたわむれる無邪気な一面を残す馬場選手も、25年の春で高校3年。日本のトップレベルで活躍するまでには多くの壁を乗り越えてきました。
同年のはじめにはスランプに陥ったと言います。3月に開催された全国高校体操競技選抜大会の1ヵ月前でした。ある日、急に段違い平行棒の技ができなくなったのです。原因は不明。いったい何が悪いのか。自問自答してひとり焦っていると、小学生の頃から苦楽をともにしてきた体操仲間、昔からよく知る指導者も親身に寄り添ってくれました。
「大丈夫だよ」という言葉も励みになりましたが、もう一歩踏み込んで助言をくれたと言います。「いま自分はどうしたいのか。成績を取りたいのか、それとも楽しみたいのか。それを考えて練習していけば、絶対に元に戻る」と。この言葉を聞いてからは、前向きに取り組めるようになったようです。
「あらためて、たくさんの人に支えられているんだ、と気付くことができました」。いざ本番では基本動作がおぼつかなかった段違い平行棒も最後までトライできました 。際立った成績を残せなかったかもしれませんが 、本人は納得しています。
「ミスをしても最後までやり切るという目標は達成できたと思っています」。きっぱりした口調には、充実感がにじんでいました。
小さな目標を一つひとつクリアしていく
困難に打ち克つたびに強くなる馬場選手は足元を見つめて、前に進んでいくことを誓っています。全国大会に出場を決めれば、成績を意識することなく、自らが納得のいく演技をすること。小さな目標を一つひとつクリアしていけば、その先に大きなものが見えてくると言います。
中学生の頃、テレビに釘付けになった世界最高峰の大会は脳裏に焼き付いています。4年に1度の大舞台で堂々と演技する村上茉愛選手に憧れ、「いつか自分も」と思いをはせた日のことを忘れていません。近い将来、川崎出身の体操選手として、世界に名前をとどろかせることを夢見ています。
(編集:4years.)
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貢献したい地元:神奈川県川崎市
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