夢は100mで金メダル! 地道な土台づくりで着実に成長
大阪府のアスリート、陸上競技(短距離、砲丸投げ)のチディ江莉花選手(千早赤阪村立中学校3年)は、砲丸投げでの同年代トップの座をめざしています。そして100mや200mの短距離選手として世界で戦い、8年後の最高峰の舞台で金メダルをとるという明確な目標を掲げています。
自分のアイデンティティに誇りを持ち活躍できる世界
日本人の母とナイジェリア人の父の間に生まれたチディ選手は、幼い頃から自然いっぱいの地元である大阪府で唯一の村、千早赤坂村で遊び、体を動かすことが大好きでした。中学校に入るタイミングで陸上競技部に誘ってもらい、仮入部。体験してみるとすごく楽しくて、陸上をもっとやってみたいと思ったといいます。
まだまだ体ができあがっていない時期なので、さまざまな競技をやったほうがいいという顧問の田中洋平先生の方針もあり、砲丸投げ、走高跳、100mに取り組んでみたところ、2022年は走高跳で1m35を跳び、府の中学校総合体育大会で3位に入りました。砲丸投げのベストは10m72で、これは22年度、全国の中学1年の中でランキング4位でした。こうしたスポーツとの出合いが、チディ選手が大きな夢を抱くきっかけとなりました。
「2歳の頃から、周囲と自分の違いに悩んでいたところが彼女にはありました。しかしスポーツと出合ったことで、それこそが自分の強みなんだと気付いたんですね。自分のアイデンティティに誇りを持って活躍できるのがスポーツの世界だと。祖国ではサッカー選手でもあった彼女の父親も、そんな娘のことをうれしく思っています」と、母の志穂子さんは話します。
そして22年、オレゴン世界陸上100mで金メダルを取ったシェリーアン・フレイザープライス選手の走りを見たときに、彼女はゴールを定めたのです。「100mや200mの短距離の選手として世界で戦う選手となり、32年に予定される世界最高峰の舞台で金メダルをとる」と。
24年の目標は砲丸投げで一番になる
「(金メダルを取るためには)とにかく強い体と勝つことへの強い気持ちが必要です。いま砲丸投げに取り組むことで、瞬発力にスプリント力が鍛えられ、体幹もしっかりしてきました」
中学3年になったチディ選手は、8年後に短距離選手として栄冠を勝ち取るために、あえて砲丸投げに取り組んでいます。重い砲丸(中学女子は2.721㎏)を投げるためには、全身の力を前方に押し出す力が必要で、そのためには体幹のパワーと、瞬発力、そして集中力が重要です。
「(練習をすることで)記録がだんだん伸びていくので、やっている快感と勝つことを経験でき、100mの選手になるために必要な材料となっていると思います。記録が伸びてくると自分のメンタルや集中力も上がっている気がして続けられています」
週3回ほど砲丸投げに取り組み、それ以外は短距離やリレーの練習をしています。週2日は必ず休みがあり、成長しきっていない体に余計な負荷はかけず、まず体幹を鍛えるなどして正しい骨格、正しい体をつくることを最優先に考えています。
「短距離のタフなトレーニングに耐えられるようになるためには、まず体づくりが中学校から高校前半の時期には絶対に必要なので、そのあたりをすごく気にしていますね」と志穂子さん。「今、彼女も苦しいと思います。走りたくても走らない。でもそれもメンタルトレーニングなので」と成長を見守ります。志穂子さんも本などで調べたり、指導者の方に相談したり、娘と二人三脚で最善の策を考え、それを実行しています。
24年度は、8月の全国大会(全日本中学校陸上競技選手権大会)までは砲丸投げに集中して取り組むそうです。
「全国大会で優勝するのが目標になります。現在のベストは14m48。だんだん伸びているんですけど、優勝をねらうには15mは飛ばさないといけないので、いまも頑張っています」
地元の応援が力の源 千早赤阪村をもっと知ってほしい
チディ選手が3歳から暮らす千早赤阪村は奈良県との府県境にあり、山に囲まれた自然たっぷりの村です。総人口は5000人足らずで「コンビニやビルなどもないです」とチディ選手。人口が少ないがゆえに、みんなが知り合いのようなところがあり、地元のおじいちゃん、おばあちゃんはいつも声をかけてくれます。
明治安田「地元アスリート応援プログラム」には23年度から参加しています。「地元を知ってもらい、地元の方に応援してもらう」というプログラムの趣旨に共感して応募を決めました。「自分を選手として応援してもらうだけじゃなく、地元のことも知ってもらえるところがいいなと思いました」。自分が活躍し、大好きな地元のことをもっと知ってほしいという気持ちも持っています。
23年、愛媛県で開催された全国大会には校長先生や村長らが応援に来てくれました。また、23年度の「地元アスリート応援プログラム」の贈呈式に出席した際には、「夢に向かってエリカさんらしく挑戦していく姿を応援しています」という言葉をもらったそうです。
「“エリカさんらしく”という言葉がすごくうれしかった。自分の個性とか性格とか、見た目も含めて大切にしながらスポーツをしていくことがとても大事だと思うので」
大好きな地元の方々の応援が、チディ選手の力の源になっています。
高校では海外への短期留学も視野に
25年春には高校生になります。高校では短距離走によりフォーカスしていく予定です。
短距離で世界大会のメダリスト、朝原宣治氏が主宰する「NOBY T&F CLUB」に週1回通っています。その回数を増やして「専門的な練習も受けたい」と思っています。さらには「海外への短期留学」というビジョンもあるそうです。
24年5月の時点の100mベストタイムは13秒台。11秒台で走る同世代がいることを考えると、伸びしろは未知数です。
チディ江莉花の名前がメディアで大きく取り上げられるのはもう少し先のことかもしれませんが、そのときは必ず訪れるでしょう。そう信じられるたけの数々の魅力が備わっています。壮大な夢の実現に向け、着実にその歩みを進めるチディ選手が、将来大きく羽ばたく姿が見られるのが楽しみです。
(取材・制作:4years.)
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