富山が生んだ格闘技五刀流スーパーアスリート
富山県のアスリート、堀田みず希選手(高岡商業高校2年)は、前人未到の偉業にチャレンジしている高校2年です。幼少期から取り組んできた競技は空手をはじめ、レスリング、柔道、ボクシング、相撲のなんと“五刀流”。しかもどの競技でも全国レベルの実績を誇るスーパーアスリートなのです。
空手デビューは2歳半。小学3年で“五刀流”
堀田選手が最初に取り組んだのは空手でした。2歳半のときに母親が主宰する道場に連れて行ってもらったのがきっかけ。堀田選手本人は覚えていないといいますが、「練習後には哺乳瓶に入っていたミルクを一気に飲む」というエピソードも。真面目な取り組みに加えて、のみ込みも早かったのでしょう。幼い頃から大会に出場すれば、男子にまじって向かうところ敵なし。そんなトントン拍子に成長していく娘の様子を見ていた両親は、小学校の入学前から、将来を案じていたようです。
「このままでは目標を失ってしまうかもしれないと心配され、『もう一つ種目を増やしてみようか』と言われたのを覚えています」
そこで提案されたのがレスリングでした。当時、高岡市出身で4年に1度の世界大会で金メダルを獲得した登坂絵莉選手に憧れていた堀田選手は、すぐに才能を発揮します。レスリングをはじめてわずか半年で男女混合の全国少年少女選手権に出場し、3位入賞。ここまでくると“二刀流”ではもの足りなくなります。小学1年の夏に柔道、そしてボクシング、さらに小3時には相撲にまで手を伸ばすことに。「気が付けば、5競技になっていました」と静かに笑います。
地元の高岡市立南星中学校に進むと、“五刀流”にさらに磨きをかけます。極真空手の全国大会で2年連続準優勝と優勝を飾り、レスリングは全国ベスト8、柔道は北信越大会で3位入賞。ボクシングでは3年連続で全国優勝を果たし、相撲も全国3位に。限られた時間で5競技に取り組んでいますが、苦労を苦労と感じていません。
「それぞれを楽しみながら精いっぱい打ち込んでいます。勝ち負けのために戦っているわけではなく、気持ちの鍛錬だと思っています。つらいときもあきらめないこと。両親から武道家の精神を大事にするようにいわれてきました。技術だけではなく、心構え、礼儀も学んでいます。5競技を通じて知り合った仲間も財産です」
異例のインターハイ2種目出場、W入賞の衝撃
2024年には富山県立高岡商業高校に入学。県内外のスポーツ強豪校ではなく、あえて生まれ育った地元の高校を選びました。その理由は、存続の危機にあった部員1人のレスリング部の力になるためです。
「私が活躍すれば、同じ学校の生徒もレスリングをはじめてくれるかもしれないと思いました」
そうしてはじまった高校生活で、堀田選手はいきなり結果を出します。インターハイではボクシングとレスリングという異例の2競技で出場すると、ボクシングは3位、レスリングは5位とともに入賞するという離れ業を達成。こんな大偉業を成し遂げても堀田選手は「私はまだ1年生でノープレッシャーだったから、いい結果が出たと思います」と謙虚に勝因を語ってくれました。
さらにレスリングでは、全日本女子ジュニア選手権と全国選抜でともに優勝。最初にはじめた種目の空手(極真)では全国3位に入り、相撲でも女子相撲一般の部で全国3位。世界大会最終選考の全国大会に出場するなどそれぞれの種目で結果を残しました。これらの活躍が認められて、富山県の海外文化派遣事業に学生外交の代表としてシンガポール、マレーシア、ベトナムの東南アジア3ヵ国へ研修にも行きました。
「この研修では自分のテーマに沿って研究するのですが、私は『武道・格闘技の哲学比較』というテーマで日本とこの3ヵ国を比べる研究を行ないました。他にもマレーシアのホームステイ先では現地の格闘技、シラットをホストファミリーの方と体験するなど、いろいろな経験をさせていただきました」と、武道家としての見識を深めました。
そんな堀田選手の大好きな地元である高岡市には、多くの思い出が詰まっています。雨晴海岸は、お気に入りのスポットです。富山湾越しに見える立山連峰は目を見張るものがあります。
「晴れたときは青い山に真っ白な雪がかかって見えることもあり、本当にきれいで。最近は海外からの観光客も多いんですよ」
毎年、成人の日に空手の寒稽古を行なう場所でもあります。降り積もった雪の中に裸足で立つと、足の裏が冷たくて、痛さで気が遠くなるほどだそうです。
明治安田「地元アスリート応援プログラム」への応募も、愛着のある地元を活性化したいという思いからでした。
「小さい頃から富山県や高岡市にはお世話になってきました。自分が頑張ることで、地域の人たちにも、身近な周りの人にも元気を伝えたいと思っています。元気の源になるような存在になりたいです」
武道家としての成長を考える
高校2年としての目標は、種目によってさまざま。なかには日本一ではなく、世界一をめざす段階に入ったものもあります。そのなかでもボクシングは日本代表としてアジア大会に出場する予定だといいますが、開催日程はちょうどインターハイとほぼ同じ時期。それだけにどちらに出場するか現在、熟考していますが……堀田選手は「どちらが人間的に成長できるか」を重視して決めるといいます。
「武道家としての歩みを考え、競技で1番になるだけでなく人間としての本質のところで強くなれるのはどちらかを考えて決めたい」
“五刀流”継続のため、徹底して時間のマネジメントも行なっています。放課後、レスリング部で練習を積み、夜には別種目に取り組みます。ノルマは1日2種目。土日は主に試合になりますが、他競技の日程とかぶることも珍しくありません。大会の重要度で優先順位をつけつつ、やりくりしています。世界をめざすため将来は重点競技を選ぶことも考えていますが、「生涯武道」として5競技を続けていきたいといいます。
「他の人に比べると、1種目あたりの練習時間が少ない。だからこそ、一回一回の練習を大事にすることを心がけています。“五刀流”を続けられているのは、地元の皆さんの支えや周囲の方たちのおかげ。常に感謝の気持ちを持ち、すべての競技を頑張ることで恩返ししていきたいです」
将来の夢は5競技のいずれかで世界の頂点に立つこと。武道の精神を忘れず、日々精進していくつもりです。
(編集:4years.)
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